鳥海山近郷夜話

最近、ちっとも登らなくなった鳥海山。そこでの出来事、出会った人々について書き残しておこうと思います。

鳥海山山頂付近で滑落事故

2023年08月28日 | 鳥海山

 秋田魁新報によれば、


27日午後2時35分ごろ、鳥海山(2236メートル)山頂付近の山形県側で、秋田市の登山グループの男性が滑落したと、同行者が119番通報した。男性は約3時間後、心肺停止の状態で山形県の防災ヘリ「もがみ」で病院へ搬送された。

 山形県警酒田署は28日、心肺停止の状態で救助された男性について、死亡を確認したと発表した。同署によると、死亡したのは秋田市川尻総社町の男性(76)。死因は捜査中。

 男性は27日午前6時ごろ、グループの仲間14人と共に、にかほ市象潟町の鉾立口から入山。由利本荘市矢島町の矢島口に向けて下山途中の午後2時半ごろ、登山道から滑落した。男性は列の最後尾にいたという。

 現場は山頂から北東に約600メートル。山形県の防災ヘリが男性を救助し、病院に搬送した。


 最初は外輪を下山中に滑落したのかと思いましたが事情に詳しい人によれば、舎利坂での事故ということです。舎利坂は浮き石だらけで滑りますからね。魁新報の記事によれば鉾立口から入山、矢島口に向けて下山とありますのでやはり舎利坂を下山していたのですね。

 でもなんで山形県のニュースになり、山形県警のヘリが出動したかと言えば、鳥海山は山頂周辺を含め、ほとんどが山形県に属するからです。これは江戸時代の境界争いの結果が今に至るまで続いているからです。


 国土地理院25000図より

 矢島口も七ツ釜より上は山形県、稲倉岳も頂上は山形県、象潟口の鉾立から三十分も歩けば山形県といった状況です。でも山形県はスノーモービルに関しては何の手も打ちませんねえ。秋田県は注意喚起しているのに。

 山頂は吹浦になっているのです。これは蕨岡にしたら面白くないでしょうね。山頂の本殿は何百年と蕨岡のものだったのが明治の神仏分離、修験廃止と続き、そこをうまく潜り抜けた吹浦にすべてを奪われたのですから。今でも蕨岡大物忌神社を吹浦の出張所と思っている人は多いのではないでしょうか。吹浦大物忌神社は拝殿のすぐ後ろに本殿があります。昔は吹浦は勧請の地とされていました。それに対し、蕨岡は拝殿と呼ばれるものの奥に本殿はありません。山頂が本殿だからです。(拝殿と呼ばれるものは明治の神仏分離時に神社は拝殿を設けなければいけないとされたため拝殿と呼ばれるものを置くようになりました。)

 鳥海山の表口はかつては蕨岡口、裏口は矢島口だったのです。修験道の順峰(じゅんぶ)とされたのが蕨岡口、逆峰(ぎゃくぶ)が矢島口でした。ついでながら鳥海山は醍醐三宝院の系列で本来なら逆峰なのです。この順峰、逆峰、実入りが天と地ほど違ったそうです。その辺は力関係でしょうね。詳細は山岳信仰の先生にお任せします。

 蕨岡に行っていろいろ話を聞けば様々なことがわかりますがここには書きません。

 蕨岡に行ったとき、この額を指して「この鳥海山大権現という額は吹浦にはないんだ。」と誇らしげに話されたのは印象的です。

 事故の話からどうもずれてしまいましたが、遭難された方は御年76とか。やはり高齢者は無理しない方が良いですね。いくら昔何百回山に登った経験があったとしても。トレーニングしても体力が戻ることはありません。衰えの速度が僅かゆっくりになるくらい。個人差があるのは当然ですが、実際歩いてみれば何でもないところで足がもつれたり、自分では普通に歩いているつもりでも全くついていけなくなるなど、あ、これは自分の事か。お年を召したら無理しないことですね。事故は個人責任ではありません。自分だけではなく家族、行政、何でもかんでも巻き込みます。事故が起きたおかげで幸せになったなんて聞いたことあります? 私は遭難したおかげで今の彼と知り合ったの、という人も稀にいるかもしれませんが。山で死にたくはないでしょう。


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