「本日も読書」

読書と映画の感想。ジャンル無関係、コミック多いけどたまに活字も。

それがぼくには楽しかったから

2005年08月14日 | パソコン関連
最近ダイエットをずっと続けているんですね。
まあ運動するだけですが。
ヒマに任せて4時間ぐらい歩いたり、先ほども
本牧のシンボルタワーまで自転車で走ってきました。
ふひー、日焼けしちまったい。

体重?計ってないんですよね。
いや、腰周りの贅肉を落としたかったので。
見事、すっきりしてきました。
だけど油断するとアカンのよね。

それでは本日は
「それがぼくには楽しかったから」
リーナス・トーバルズ/デビッド・ダイヤモンド
訳・風見潤
小学館プロダクション

いやー訳者があの「銀河ヒッチハイクガイド」の
風見潤先生だったんですねえ。
読んでる途中で「ダグラス・アダムス」の名前が
出てきて「え?銀河ヒッチハイクガイドの?」
って思ったら訳者が同じという・・・

不思議な縁があるものだ。
リナックス開発者リーナスさんがなんで
リナックスというオープンソースソフトのOSを
開発したんでしょうかってことが書かれています。

まあタイトル通りっちゃーそうなんだが、
結構日本とは違った珍しく面白い家庭環境とか
リーナスさん自身が自分はなぜこうなっているのか
ってことを分析もしている。

フリーソフトなんかはよくお世話になっていますし、
大学でもビル・ゲイツ嫌いの先生のおかげで
リナックスの素晴らしさを聞いてきた私ですが
やっぱりウィンドウズを使っているのは初心者の
辛さでしょうか。

ちょっと考えればわかることだけど、ビル・ゲイツと
リーナスはまったく同じ土俵にはいない。
一部重なっているくらいで。
それはリーナス自身がウィンドウズとリナックスを
対立させている構図にちょっと違うんじゃないの、と
まあ多分通じているのかな、と。

ようはリーナスは商売をしているわけじゃないんですね。
ビル・ゲイツは商売なんです。
考え方に基本的なズレがある。

ビル・ゲイツは別にプログラマーの天才ってわけじゃない
って話はよく聞きますわな。
マイクソフトの強さは法律ぎりぎりのところで勝負してるって
ところなんですよね。
もちろんウィンドウズという誰でも使えるように見える、使いたくなる
OSを作ったわけだけど、それじゃあウィンドウズが本当に
全てのOSと比べて使いやすいのか、
そもそも我々は使いこなしていないじゃないか、という話が出てくるわけで。

そうなると結局、シェアをたっぷりと獲得し、まあ小売店やら
他メーカーへのなんだか危ない様々な行為はMSを強くしていくわけだわな。

リーナスは言わばプログラマー?それが楽しかった、とまさしく
文字通り。それで作った、と。
ビル・ゲイツは最初はどうだったか知らんが、少なくとも今は
企業の人間であり、コンピューターを広めるには商売って考え方
なわけだ。それが悪いとかではなくね。

全く考え方が違ったわけだ。
ビル・ゲイツはOSを広めようとしたし、リーナスは別に広めよう
ってわけじゃなかったんだもんな。

例えばこんな文 249ページ
「アメリカの政治ゲームではまず敵味方の線引きをする。
すべては一方の線引き能力にかかっている。
ヨーロッパの政治家は、お互い協力関係を築くことができるんじゃありませんか
、と示すことによって、結局はゲームに勝つ」

アメリカ的な強力な市場・資本主義、だがそれは完全市場とはあまりにも
縁遠いわけだが(完全市場だったらマイクロソフトみたいな影響力のある企業は
おらんわけだ・・・)、まあそれと、ヨーロッパ的な共同体主義?まあ
言い方は悪いがどっちかつーと共産主義や社会主義の名残みたいなものかもしれんが、しかし話し合いや「皆で使おう」精神っていうのとの対比のような。

共産主義の最悪なところは皆を平等にするために、その富などの配分者、つまり権力者が無茶苦茶強力な力を持ってしまうことにあった、と私は思うんだけど、
インターネットやらコンピューターの世界になるとこれは全然通用せんもんな。
フリーソフトなんか、だれでも使えるわけだし。
もちろんコンピューターに詳しいやつは力を持つかもしれんが、それが誰かは
なかなか分からない。しかも一人とは限らんし、さらには全く正反対の行動を
とるかもしれんし。

んで、まあ難しいことはどーでもよくて、もっと人間らしい
素朴な人柄が見れるのは例えば株式公開の話(もっともリーナスが
社長とかではない)、259ページで彼は言う。
「リーナスの懐には何百万ドルなんてないんだ。
 それはほんとに素敵なことだ」

そしてこうも言う。262ページ
「50万ドルが100万ドルに増えていたのだ。
 マスコミに描かれたイメージはどこへやら、清貧を誓った
 無視無欲の庶民の英雄は率直なところを言えば、有頂天に
 なってしまった。
 よーし、正直に言ったぞ」

彼の資産は1億!この時、彼は普通の、そしてそれでも「いい奴」
だったのである。
お金が嫌いなわけじゃないんだよって。
当たり前の感覚である。
自分は共産主義者じゃない、理想家の仙人じゃないんだって。

実はこの後、株価は下がる。
毎日のように下がる株価を思いながら彼は思う。
それでも、やっぱり自分は幸せな奴だなあ、と。

彼の話はコンピューターのことがほとんど分からなくても
読んで見る価値がある。
僕たちはこれからどんな生き方をしようか?
それで迷った時、彼は言うのだ「楽しいことをしよう」
だが、それだけではない。他人がそれでどう思うか、
それは誇りを持てるのか、とも聞く。

だがこのたった三つでそれなりに幸せな生き方は
可能かも知れんよ、と言うのだ。

例えばビル・ゲイツをマイクロソフトを超えたいという
ライブドアの堀江さんは間違いなく、ビル・ゲイツが何者か
分かっている。
つまり法律に「違反」するな、と。
逆に法律をフルに使え、と。
それが例の買収合戦だったのだ。

だが、何かの番組で見たビル・ゲイツに憧れる若いプログラマー
は純粋すぎた。彼はビル・ゲイツの輝き、ウィンドウズや
マイクロソフトの強さ、素晴らしさを商売の視点から全く
見ていなかった。それではビル・ゲイツにはなれないのだ。
商売を、法律を知らねばならないのである。
それはもしかしたらプログラムの知識よりも重要だったかもしれない。

もし、ビル・ゲイツが商売下手だったら?
アホな弁護士を雇っていたら?
民主党がアメリカの政権をとっていたら?
全ては違ったかもしれないのだ。

だがリーナスはどうだろう?
彼は・・・たぶん商売も、政治も、法律も・・・
無関係だった。
彼は家に閉じこもって好きなことをしていた。
そして歴史に名を残すだろう。
彼はもし歴史がどこかで変化したとしても、リナックスを
生んでいたかもしれない。

面白い、と思う。
本自体も面白い。文章はユーモアたっぷりだ。
さすが銀河ヒッチハイクガイドを好きなだけはある。

だけど内容だけにとどまらないのだ。
いろんなことを考えてしまう。
政治家なら政治に何か通じるものを。
企業人なら企業に何か通じるものを。
若者なら・・・
老人なら・・・
女性なら・・・
日本人なら・・・
アメリカ人なら・・・

きっとそれぞれ「うむ・・・」と何か考えてしまう。
そんな魅力的な示唆に富むのである。

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