もとmoto元・甲斐の馬券神

2007年甲斐から笄に、2011年芝浦に拠点を移し、さらに2016年からは本拠札幌にて競馬三昧の日々を送る毎日。

使われなかった紙テープ

2006年07月10日 | Weblog
◆その野球チームは今年が最後の活動となることに決定していた。
企業チームとして永年活動してきたが、会社の方針として、これ以上
の活動は困難な状況となり、今まで利用してきたチーム専用の練習
グラウンドも市場で売却される予定であった。連取するグラウンドが
なければ、もう都市対抗で勝ち負けできるチームは維持できない。
今年こそが、チームにとっての最大のヤマ場だった。

 2006年7月。社会人野球最大のイベントである都市対抗野球。
そのチームは、最後の北海道地区予選に挑んだ。
 北海道ブロックの代表枠はただ一つ。その地区予選を勝ち抜けば、
東京ドームでまた仲間達とともに戦える。

 「一つでも多くの試合を仲間達と戦いたい。できるだけ、長い間
この仲間と一緒に時間を過ごしたい」
 それだけが、チーム全員の、願いだった。

 北海道の社会人野球は、長い間札幌円山球場で実施されてきた。
社会人野球に関係する者にとって「円山」という言葉は特別な響き
をもっている。「円山」は社会人野球の原点であり、聖地だった。

◆ここに、もう一つの集団がいた。

 活動開始以来、今年で39年になる。その集団は、チームを応援する
ために存在していた。企業から公認されていた「応援するための集団」
だった。

 その企業は、野球だけでなく、バドミントンやスキーについても企業
所有のスポーツサークルを持っていた。そして、応援団は、そのいずれ
ものスポーツサークルが、それぞれの分野で持てる力を最大限に発揮し
悔いのない戦いをするよう、応援というフィールドで手助けをしていた。 

 その企業が保有する野球部がなくなれば、自動的にそれを応援すること
を最大のミッションとしていた「応援団」もその存在意義を失う。

 「集団」は「チーム」とともにあった。
 「チーム」が解散する時は、すなわち「集団」が解散する時だった。

 「チーム」が最後の円山に挑むと同時に、「集団」も最後の円山に
臨むこととなった。

◆最後となる都市対抗北海道予選。「チーム」は快調に勝ち進んだ。
一次予選を他チームを寄せ付けない強さで圧倒し、4チームで戦う決勝
リーグに駒を進めた。

 ここで、3連勝したチームが北海道代表として東京ドームの都市対抗
野球本選を戦うのだ。

 「チーム」は、下馬評では唯一北海道に残る企業チーム「J」に続く
2番手としての評価。
 しかし、決勝リーグ最初の2試合は相手を圧倒し、順調に最終戦を迎
える。本命の「J」もそこまで2連勝とスキのない戦いをしてきている。

 そして、2006年7月9日。ついに運命の都市対応野球北海道予選
最終戦が始まった。

◆先攻は「J」。競った試合になれば一番勝負では後攻が有利な位置と
なる。

 試合は静かな展開となった、両チームとも投手の出来が良く、なかなか
チャンスを作ることができない。
 「チーム」のエースMは絶好調で、5回まで一人の走者も許していない。

 迎えた5回裏、「チーム」の攻撃。強い逆風が吹く中、3番N村が打った
打球は左翼ポール際にあがり、フェンスによじ登ったJの左翼手のグラ
ブのわずか先をかずめる先制ホームラン。「チーム」は1点を先制した。
 しかし、続く6回表にJはしぶいヒットを連ね、同点に。この回先頭
打者にこの試合初めてヒットを許したMの心の隙が痛い1点となって
しまった。
 さらに6回裏。「チーム」はそつのない攻撃により1点を追加し、
リードする。
 しかし、百戦錬磨のJは7回表にすかさず反撃。2死からしぶとく同点
に追いつく。

 こうして、後のない戦いは「2対2」の同点のまま延長戦へと突入した。

◆10回裏、2死2塁から「チーム」の牽引車F尾が目の覚めるような
左翼への流し打ち。しかしJの左翼手が乾坤一擲のダイブ。少しでも
タイミングがずれていれば、劇的なサヨナラだったが、打球は左翼手の
グラブの中に。さらに延長は続く。

 そして・・・運命の11回表。「チーム」のエースMは疲れきっていた。
先頭のJの3番に甘く入った球をレフトオーバーの2ベースヒット。
 この試合初めて迎える「リードされるかもしれない」というピンチ。
でも疲弊し切ったエースに、このピンチを乗り切れる力は残っていな
かった。
 続く4番打者にフェンス直撃の2塁打を浴び、エースはここで降板。
変わった投手が後続を断つも、「チーム」にとって重い1点がのしかかる。

 1点を追う11回裏。しかし、「チーム」にはすでに挽回する力は
残されていなかった。1人のランナーも出すことなく「チーム」の夏は
終わった。

 そして・・・「集団」の夏も幕を閉じた。

◆使用されることのなかった4本のテープ。

 10回裏のサヨナラのチャンスに事務局から配布された紙テープは
グラウンドに舞うことなく、その役目を終えた。

 これから何十年生きるか分からないけど、このテープを見るごとに、
あの円山の空と応援席の緑のベンチと応援団の最後の熱い夏を思い出
すんだろう、と思う。

 その一員として携わる時間をもらい、

 「ある意味、宝をもらったんだろうな」との感謝の思いで一杯です。


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1 コメント

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・・・ (鬼娘)
2006-07-10 20:30:09
あのさぁ、なにTV買ってるわけ??

あたしの部屋においてよね!!
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