ニュー・ハンプシャーの辺鄙な林業の集落。そこの食堂で働くコックとその息子。息子が夜中、父親が熊に襲われていると思い、フライパンで撲殺したのはコックと愛人関係にあった女だった。
かくして親子の半世紀に渡る逃避行が始まる。ボストン、バーモント、アイオワ、カナダのトロントと移動する。その間に息子のダニーは若い父親となり、作家として有名になる。
この物語では禍々しい運命が最初から不吉な陰を落とし、コック親子はそれから逃げようとするが、結局は運命に追いつかれてしまう。
アーヴィングはこの物語を書き始めるまで20年近くも胸に暖めてきたという。ニュー・ハンプシャーの伐採作業場を舞台に、作者のおじやいとこが従事する林業を絡め、コックとその息子が逃亡する物語、と輪郭は描けていた2月の物語の終着点をまず決めてから、底へ向けてストーリーの詳細を作り上げていくという手法を鉄則としているアーヴィングは、その最後の一文をおもいつかないまま、他の小説を次々と書いていた。
2005年1月、車を走らせているときにかけていたボブ・ディランの古いCDから流れてきた”ブルーにこんがらがって"を聴いて突如閃いたのがその本作の最後の一文で、かくしてやっと物語が動き出し、2008年9月に編集者に渡す、、。 訳者あとがきより抜粋
おもしろい!でも長い、、。一つ一つの描写が緻密なので必然的に上・下の2巻になっているのですが、個人的にはそこまで細かく描かなくても、と時々飛ばし読みしてしまいました(アーヴィングを好きな人はそれらの描写をきっと堪能するのでしょうね、、)。
50年代から80年代の物語なので、アメリカに起きていたこと(9.11など)をあらためて考えさせられました。
作者は重要な登場人物の樵にこう言わせています。
「アホみたいなクソ愛国心のどこが悪いか教えてやろうか - あんなものは妄想なんだ!アメリカ人の勝ちたいという欲求を表しているにすぎん」
イラク戦争について
「アメリカ人の大多数は殆どが何も知らないから、この戦争がいわゆるテロとの戦いから目をそらせるためのものである - あの明言された戦争の推進ではなく - ということがわからないのだ」
ディランの「ブルーにこんがらがって」で、本作の最後の一文をが閃いた、ということですが、Tangled が twistedを想起させたのでしょうか?そう、物語の初めに出てくる少年がエンジェル、主人公のペンネームもエンジェル、というのはディランの「ユー・エンジェル・ユー」から、、ということは考えすぎですね?
1975
I was standing on the side of the road
Rain falling on my shoes
Heading out for the East Coast
Lord knows I've paid some dues getting through
Tangled up in blue