2010年
「国を強化するな」より抜粋
この20年の間に日本人は次々に拠り所を失ってきた。
家族が壊れ、会社が崩れ、経済が低迷し、世間がとても冷たくなった。
だから最後の拠り所とばかり国家論が流行る。それもみな、国を強化しようという論議だ。
その種の論者によれば、これから、自衛隊は軍隊になって世界で活躍し、皇室は永遠に栄え、国民はこぞって国に奉仕し、経済は躍進する。教育はこのような国家を支える人材を作り出す。
人のための国ではなく、国のための人。
ー中略ー
ヨーロッパ史で言えば、これは半世紀前に完全に放棄された道だ。なぜならば国家の強化は危険だということを痛い経験で学んだから。
日本だって、昭和十年代にやってみて失敗したではないか。
だから国のほうは今くらいにしておいて、失った家族や会社の回復を図ったほうがよい。
気持ちのいい世間を取り戻したほうがいい。
努力を投入すべき対象は国家ではなくそちらのほうだと思う。 2006年 広告批評 一月号
「ぼくの憲法論」 より抜粋
「今の日本は行き詰まり感に包まれている。 ー中略ー
しかしそれは憲法のせいではない。憲法を変えたからといって日本が立派な国になるとは思えない」
「立派な国というのは、まず国民が安心して暮らせるところであり、不平等感のない社会であり、よその国から敬愛される国のことだ。
今の日本がこの条件を満たしているとは思えない。
この憲法があるから満たせないのではなく、この憲法にもかかわらず満たせないのだ」
「憲法を変えることを考える前に政治を変えよう」 2005年 東京新聞 5月1日
虹の彼方には青い空があるけれど、ぼくたちの周囲には強風が吹き荒れている。その風に翻弄されながら、自分の考え、という杭に何とかしがみついて書いたのがこれらのコラムである。 著者まえがき より
Against the wind
I'm still runnnin' agaist the wind
I'm older now but still running
Against the wind
Well I'm older now but still running
Against the wind