和室、あるいは畳の部屋

2013-03-18 23:49:37 | Weblog
 人は、畳の部屋に入ったら自然に畳の上に座り込んでしまったり、ついゴロリと横になったりしたくなるはずです。

 理由はふたつあります。
 ひとつは、畳の素材の藁(わら)と藺草(いぐさ)という稲科の植物でできていることです。

 長い間、お米を主食としてきた日本人は、稲に対して、文字通り身体の染み付いた特別な感情(愛情といっても良いでしょう)を抱いているにちがいなく、その稲から生まれた藁と、稲科の植物の茎でできて畳に直接触れることで、母親に抱かれているような大きな安堵感に包まれるのです。

 もうひとつは、藺草の感触とその匂いの効果です。このふたつは、日本人、というより人類が知らず知らずのうちに抱いている「草原に座りたい願望」「野原に大の字に寝ころびたい願望」という潜在的な願望にヒタヒタと働きかけます。

   Come on‐a my house すまいの風景―Environments for living
           中村好文著より