パサージュ(通り抜け通路)

2013-04-14 11:12:09 | Weblog
 この案のいちばん大きな特徴は、店舗、店裏、工房のゾーンと、窯場と窯のゾー ンのあいだにパサージュ(通り抜け通路)を設けたこと。前案を見て、神さんがふと漏らしたご「二つのゾーンが隣り合わせでなく、あいだに廊下のような緩衝地帯があったらいいですね……」という言葉をそのままブランに取り入れたもの。同様の希望は、ごく初期の手紙にも「工房と窯場は一体ですが、何かちょっとした気持ちの切り替えの間があったらいいなと思います」とあったものだが、うっかり失念していたもの。

 パサージュが通ったことで、プランは文字通り「風通し」よく、明快になったように思う。パサージュに変化をもたせるため途中をふくらませ、螺旋階段を設けてロフトへの動線としている。ロフトは将来カフェとして使用するアイデアを捨て、来客用の寝室として使用することに決定。

 パン屋の手紙 : 往復書簡でたどる設計依頼から建物完成まで
              中村好文著、神幸紀著 

 限られた敷地内に、欲しいものを詰め込もうとしていくと、どうしても廊下とか階段とか優先順位の低いものから徐々に削られていきます。そうして結局広いワンルーム、リビング階段等に落ち着くわけですが、それでは狭っ苦しいので、形だけの吹き抜けプランが取り入れられます。それぞれメリットもありますが、家の中にもやはり無駄ではないですが、息抜きみたいな、ちょっとだけ贅沢な空間が欲しいですよね。

 空間が抜けるとか、空間を区切るとか、家は一人で暮らすわけではないので、やはり緩衝空間のようなもの。私も、このパサージュ案、とても良いと思いました。