納戸(片付け)

2008-03-10 00:00:25 | Weblog
 それにくらべ、ヨーロッパや中国はどうかというと、たとえばヨーロッパのどこの国でもいいから王様や貴族の家を見ればいいが、室内には飾り棚やら本棚やら食器棚やらの収納家具がこれ見よがしに置かれている。収納家具だけでなくイス、テーブルなどなどの家具、調度の類が充満し、それらがインテリアの決め手となっている。さまざまな物品、家具調度を室内に取り込み、それをいかに上手に美的かつ機能的に配列するかが室内構成の根本だった。生まれながらにそういう根本を学ぶのだから、当然のように収納感覚が見に付く。字を覚え、本を読むのと同じように、一つの教養として身に付けてゆく。だから、欧米においては室内に物品が散らかるというのは、無教養のしるしとしてとらえられる。身の回りの物品のコントロールもできないようなフシダラなヤツ。
 日本の室内には物品がない。本当はあるのだが、隠されていた。どこにか。納戸とか倉の戸の向こうの暗がりの中に。タンスや長持ちといった収納家具はあるのだが、それらは日と目に付かない暗がりに置かれた。収納家具も物品も、日陰の身だったのである。
 日陰の身でも、その総量が少ないうちは散乱状態は起きなかった。ところが、明治以降、というより一般の家庭では戦後の高度成長以降、長く続いてきた少量物品日陰の身システムは破綻を余儀なくされている。
 
 天下無双の建築学入門 ちくま新書 藤森照信著より

 今のモデルハウスなんか見に行くと、壁面収納やウォークインクローゼット、階段下収納は便利そうに作ってあるけど、他の収納場所はあまり見受けられません。どうやって生活するんだろう。何でも捨てちゃうのかなぁ?と感じていました。だって、家の中は捨てきらないガラクタで足の踏み場もないんですから