※前回の水戸の記事はこちら(2節・山形戦、1-0)
<水戸スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 知念は仙台からのレンタル選手なため出場不可。
- 3節(愛媛戦、1-1)で負傷交代した久保の詳細が発表され、3/6に手術実施したとの事で治癒期間は未発表。
<仙台スタメン>
- GK堀田の負傷が発表され、1/28に発生して全治約10週間との事。
- ユース所属のGK笛田・GK渡邊航聖の2名が2種登録選手となり、2節(徳島戦、0-1)から登録される。
これが今季5戦目という事で、そろそろチーム内の序列も固まってくる頃であり。
水戸は3節を境に、久保の負傷という事象も考慮してか一気に入れ替え。
両センターバックを牛澤・板倉→知念・飯泉と総替えしたのが象徴的であり、他にも山本→齋藤・川上→長尾・草野→多田とほぼ半数を代えて前節(大分戦、0-0)に臨み。
内容は伴っているものの1勝のみという現状に活を入れつつ戦っている、そんな節が伺えます。
しかし今節、知念が規定により出場不可のため、すぐさまの入れ替えが必須な一戦となり。
その相手の仙台、こちらも2節終了後に大きく入れ替え。
奥山→石尾・工藤→武田・宮崎→エロンと3人を代えましたが、こちらは敗戦直後かつ小規模の動きと、微調整的な采配。
その他、その2節で有田を荒木に代えて起用した他はほぼ固定で、微調整を重ねながらいかに前年あと少しで届かなかった昇格に辿り着くか。
そんな風景を見つめながらの戦い、といった所でしょうか。
この日のケーズデンキスタジアム水戸は、傍らから観ても強風に晒される事が一目瞭然な環境下となり。
ロングボールの使い方がカギとなるのは一目瞭然で、思い出させるのが前年の森直樹監督就任直後の試合。(14節・熊本戦、2-0)
向かい風となった後半に2点先取してそのまま逃げきり勝ちと、追い風に頼るのみがサッカーでは無い。
そんな内容を、その追い風が逆に足枷となった熊本とともに憚らずも証明する一戦となりました。
この日も当時と同様、コートチェンジはせず前半追い風の下で試合に臨み。
戦略としては、右肩上がりの布陣でビルドアップをする仙台に対する対策が採られ。
即ち高めに位置取る真瀬の裏を突くべく、推進力のある&サイドでターゲットと成り得る津久井を、普段とは逆の左に配置。
そんな意図が伺える策が、狙い通り嵌まるかどうか。
立ち上がりはお互い慎重に……というよりは、仙台が水戸の出方を伺う意識が強かったか。
相手がどれだけ風を利用する立ち回りに舵を振るかを冷静に見ていた感があり。
前半6分にそのロングパスを石尾が跳ね返し、前線の荒木が確保ののち敵陣でポゼッションを繰り広げるも、結局戻して作り直しを選択。
対する水戸は、前回観た通り立ち上がりから主導権を狙いにいく意識が強く。
仙台が構える意識が強いと見るや、9分に中盤でボール確保すると最終ラインへと戻し、プレスを誘発させたのち飯泉が右ワイドへのミドルパスで脱出。
そのまま右ワイドで飯田がアタッキングサードまで運び、コーナーキックに繋げるという具合に前向き思考を強め。
この右CKから、ショートコーナーを経て上げられたクロスから牛澤がヘディングシュート(ゴール上へ外れる)と、その意識を示すようなファーストシュート。
しかし10分を過ぎると、分析を終えたのか仙台が押し始める展開に。
向かい風ながら逆にそれも利用した、果敢な水戸のハイプレスを呼び込んでのロングパスで、良い具合に戻される事により最終ラインと二列目の間を突く立ち回りが良く嵌ります。
14分には真瀬が裏へロングパスを狙ったはずが、風で戻されバウンドしたボールをエロンが合わせて好機に繋げる(その後自ら拾いにいった所を飯泉に倒されるも笛は鳴らず)という具合に、運に左右されがちなそのボールの行方でしたが「水戸のスペースを突く」姿勢は裏切らず。
19分には荒木のミドルシュートを牛澤がブロック、そのままラインアウトかと思いきや風の影響であわやゴールになる(GK松原がセーブしCKに)など、逆に水戸の守備対応の方が困惑されがちに映りました。
後は、両サイドのFWの差というべきか。
仙台はロングボールを収めてくれるエロンの存在が大きいものの、水戸は経験の浅い多田に多くは期待出来ず、思いきってのロングボール主体に舵を振れない背景が感じられ。
21分には地上ながら、相良がラフに送ったスルーパスに走り込んだエロンが牛澤を跳ね飛ばして確保と、そのフィジカルを活かしたプレーは(J2では)一級品。
そしてそのまま左ポケット奥からグラウンダーでクロス、ファーで郷家がスライディングでシュート(枠外)と、優勢に立った仙台がフィニッシュを重ねる流れに。
それでもスコアは動かせず、逆に水戸が23分に得た右CKでゴール間近で混戦となり、シュートせんとした飯泉にGK林が詰めて防ぐなどあわやという場面も。
そんな紛れの要素を減らすべく(推測)、ここからボール保持重視へと切り替える仙台。
真瀬が高目に位置取るのは不変で、石尾が内に絞った3枚の最終ラインから、武田を中心に匠に繋いで水戸に隙を与えない立ち回りへと変貌します。
32分には右スローインから、逆から張り出した相良がこれを受けた事で水戸ディフェンスの外で回す体制に入り、左から石尾がクロスと見せかけてのサイドチェンジで右奥を突き。
そしてトライアングルでのパスワークを経て奥へ切り込んだ郷家が満を持してクロス、ニアでバウンドしたボールをエロンが収め、いったんは奪われるもエリア外で再奪取ののちシュート。(ゴール上へ外れる)
水戸にとっては試合前の狙い所の余地が生まれる状況にもなりましたが、リトリートを余儀なくされる事で、攻撃機会を確保できないためとてもその真瀬の裏を突く余裕は無く。
そのまま終盤を迎えると、仙台はそろそろ相手が慣れ始めると踏んだか、ボランチが降りての3枚での繋ぎへと変化させる最終ライン。
多彩な可変により奪う余地が無いといった水戸は40分、自陣左サイドで確保する(ここで多田がようやく初めて浮き球を収めるシーンが)と、津久井が痺れを切らしたかドリブル開始。
もっと高い位置で始動したかったのでは……という刹那、山﨑を経由し右へ展開ののち、ダイアゴナルに走り込んで飯田のスルーパスを右奥で受けた津久井。
本来の右でプレーに絡むと、その攻めで取った右CKでは、キッカー大森のクロスを大外で折り返した津久井のボールがGKを越えてさらにファーサイドへ。
クリアが小さくなった所を長尾がシュート(枠外)と、不本意な流れを必死に変えに掛かり。
結局スコアレスのまま終了した前半。
ともにハーフタイムで交代は無く、風向きが逆となる後半の内容に注目が集まるのは当然であり。
追い風となった仙台は、既に前半に重厚かつ多彩な立ち回りを繰り広げていた事もあり、素直にそれを使う攻めへと移行。
後半3分、井上のラフなロングパスで右奥を突くと、受けた荒木の戻しを経て武田が右ハーフレーンで山﨑を剥がした末にミドルシュート。
惜しくも右サイドネット外に終わるも、一気呵成に仕留める意気込みを覚える強烈な一撃を放ち。
その後もCK攻勢に持ち込み郷家がヘディングシュートを放つ(ゴール上へ外れる)など、ゴールまで後一歩という状況に持ち込みます。
後れを取った水戸ですが、ここで焦らずに風を考慮し地上で繋ぐ意識を高め。
ゴールキックも短く繋いでリスタート、という姿勢で巻き返しを図り。
7分にそのゴールキックから、仙台のプレスを受けて飯泉が右へロングパスを送ると、飯田の落としたボールを石尾がクリアミス。
これを拾った山﨑がドリブルののちクロス、ファーで渡邉が折り返し(クリアされ撃てず)と、この姿勢が疑似カウンターに繋がり奏功。
潜在的に、不利な環境下でも仙台に対抗できる確信を得たでしょうか。
11分の仙台の攻撃は、武田の縦パスから右サイドで前進するも、郷家のアーリークロスが乱れて終了。
水戸のゴールキックになると再び短くリスタートし、仙台のプレスを受けながら津久井がミドルパスと、先程と類似する攻め手に。
しかし多田が菅田と競り合い、こぼれ球を渡邉が拾い繋がると2対2が出来上がる絶好の疑似カウンター(放送席ではアナウンサーがただの「カウンター」と言っていたが全然違うだろう)になります。
そして前進から右へスルーパスを送る渡邉、これに石尾がカットの姿勢を見せた事で、受けた飯田に対する障害は無くなりポケットへ進入の末にシュート。
勢いのまま放たれた強烈なシュートがネットに突き刺さり、歓喜の先制点に辿り着いた水戸。
正直石尾の守備対応がどうか(戻る事に専念できていればシュートは防げたかも)という場面ながら、劣勢をひっくり返す事に成功しました。
ダメージの残る展開を描いてしまった仙台、それを振り払うべく押し込み。
失点に関与してしまった石尾が、(井上の)サイドチェンジを受けてからの縦パスでアタッキングサードに持ち込み、クリアされたのちは自身でロングスローを放り込み。(14~15分)
しかしこれがまたも失点に繋がる事となり、クリアボールを収めた山﨑を経由して再び渡邉のドリブルと、純正のカウンター(今度は「ショートカウンター」と言う放送席……)に持ち込んだ水戸。
今度は左へ展開する渡邉、そのままボックス内へ走り込み、長尾のクロスに対し跳んだ津久井の後方で合わせヘディングシュート。
ゴールに突き刺し、見事に完遂させ追加点を齎しました。
焦って攻めたうえロングスローからのカウンターと、泣き所を突かれた仙台。
それでもキックオフでの再開の初手、井上のロングパスを収めた相良が左ポケットへ切り込んでシュート。
GK松原にセーブされるも、この目の覚めるようなフィニッシュによりノーチャンスでは無くなり。
その後もミドルレンジでシュートを放ち続ける相良(17分と24分、ともにGK松原キャッチ)により、反撃の機運を高め。
これを見せられると、2点リードの水戸サイドも「守りを固めるか、攻撃権確保か」という二択に頭を悩ませる展開となるのは避けられず。
そんな思惑故か先にベンチが動き、25分に齋藤→山本へと交代。
この直前に、齋藤がミドルシュートを放っており(ゴール右へ外れる)、結果的にお役御免となり。
しかしあくまで攻撃性を保ち、直後に真瀬のコントロールミスから敵陣で攻撃開始、右への展開を経てカットインシュートを放つ山本。(石尾がブロック)
それ故に、追い風かつエロンという強力なターゲットの存在を忘れてしまったか。
あるいはフィニッシュを量産していた相良への警戒心の方が強くなったか。
27分、ここも左サイドからの攻めで相良を意識させると、武田が中央寄りからアーリークロス気味に送るミドルパス。
これをファーサイドでしっかり収めたエロンを経由し、送られた横パスから郷家がボレーシュートを放ち、ゴールネットを揺らします。
フィニッシュ攻勢がついに実り、1点を返した仙台。
しかし水戸のキックオフでの初手、左サイドでのパスワークで仙台ディフェンスを前に寄せたうえで、長尾の裏へのミドルパスに多田が抜け出し。
当初の狙いのように真瀬の裏を突いてとうとう迎えた決定機、そのまま単騎突撃で左ポケットからシュートを放った多田。
これをGK林がセーブと寸での所で防ぎ、正直決まっていれば水戸の勝利だったでしょう。(ファーサイドを狙えていれば……)
直後のCKからも、多田の折り返しを経て牛澤がヘディングシュートと、決定的なフィニッシュが生まれましたがGK林がライン際でキャッチ。
ビハインドながら、攻撃の形は作れていたという事で我慢を重ねた(推測)仙台ベンチ。
33分ついに動き、相良・エロン→名願・宮崎へと2枚替え。
奮戦した攻撃陣2人に代え、新たなターゲット・サイドアタッカーを補填する贅沢な采配が敢行されました。
それを受けて水戸は36分、多田・渡邉→安藤・板倉へと2枚替え。
FWに代えてDFを投入と、5バックシステム(3-4-2-1)を採るのは明らかでついに逃げきりを選択したか。
この交代は一定の効果を齎し、仙台は相手が隙を見せなければ決定機を作れない。
そんな状況に陥ります。(41分に水戸のパスミスから、縦に速く運ぶも宮崎のスルーパスはオフサイドに)
双方最後の交代は41分で、水戸が山﨑・津久井→前田・沖田。(山本が左に回る)
仙台は鎌田・荒木→松井・梅木。
時間が押し迫り、仙台は遠目からのFKでも、武田のキック精度を活かしての放り込みへと意識を振り。
逆に水戸は、サイド奥に運んでもクロスは上げずキープで時間稼ぎと、こういった展開での約束へと移る両チーム。
しかし最後は、やはり追い風がモノを言ったか。
アディショナルタイムに突入し、水戸の右コーナー前での時間稼ぎを切った仙台、スローインでのリスタートを経て石尾がラフなロングパス。
これが風によりターゲットの宮崎を越えた事で、拾った郷家のキープを経て武田が1点目と似た位置(やや近め)からアーリークロス。
これも先程と同様ファーサイドで跳んだのは宮崎で、今度は素直に放たれたヘディングシュート。
GK松原がセーブした跳ね返りを郷家が詰め、板倉がブロックして浮き上がったボールを再度ヘディングでねじ込んだ宮崎。
激しい応酬の末に、前田のブロックも及ばず左ポスト内側を叩いてのゴールゲット。
執念という他無い連撃で、土壇場で追い付いた仙台。
再び前に出なければいけなくなった水戸、それがドラマを齎し。
前田のボール奪取から素早く攻め、沖田がドリブルで右ポケットを突く絶好機に。
一度抜かれた松井が、後追いの形で後ろから倒してしまいますが、これに主審の笛が鳴らなかった(腕でのチャージだったので見えていなかった感あり)事で水戸サイドの一斉のヒートアップを招きます。
しかしVARが無いため中断期間が採られず、すぐさま仙台が(ゴールキックで)再開させた事で、水戸・森直樹監督の異議が飛び乱れるなかで仙台の攻撃に。
そして名願の左ポケットからのシュートにまで繋がる(板倉がブロックしてCKに)、これが決まって逆転負けなんて事になったら……という絵図を描くに至りました。
結局、尚も治まらない森監督に対し警告が突き出されて手打ちとなった事で試合は続き。
これにより勝利の機運は既に無いといった水戸。
仙台の猛攻を凌ぐのみとなり、その後も被決定機を迎えましたがGK松原の好守(右ポケットからの真瀬のシュートをセーブ)で3点目は許さず。
2-2で試合を終わらせ、辛うじてという引き分けになりました。
双方課題が垣間見えた試合も、終了間際の一騒動で全て掻き消される、といったような展開となり。
ゴール量産という清涼感も雲散霧消のようになりましたが、当事者も観ている側も「これもサッカー」と納得するしかないでしょう。