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ぶらりドリブルの旅

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DAZN観戦 2023年J3リーグ第13節 Y.S.C.C.横浜vs愛媛FC

2023-06-12 16:00:10 | サッカー視聴記(2023年その他)

<両軍スタメン>

J2復帰が至上命令、という意気込みでリーグに臨んでいるクラブも当然ながら存在し。
それは今季のJ3クラブの中で、最もJ2経験が豊富な愛媛がまずそれに当たるでしょうか。
前年も同じような気持ちでJ3を戦ったと思われますが、常に昇格争いから一歩遅れた立ち位置での苦闘を余儀なくされ。
結局今季もJ3に籍を置く事となりました。

同じ降格組の北九州や相模原が、現状昇格どころでは無いという位置にまで低迷している状況では、JFL降格の危機に苛まれていない分マシと言うべきか。
それともこの混戦のなか抜け出せずにいる辺り、「負けられない戦い」への覚悟がチームを堅くしてしまっていると見るべきか。
上位に居ながら得失点差はわずか+1、勝利(6勝)は全て1点差でのものと、評価の難しい成績ながら何とか昇格争いの輪の中に居る今季の愛媛。

この日の相手は、目覚しい得点力の上昇により勢い盛んなYS横浜。
その最大要因は、過去5試合で6得点という荒稼ぎを見せている福田であり、その脅威が早速猛威を振るう事となり。

前半2分、愛媛が最終ラインから繋がんとしたところ縦パスが中里にカットされ、敵陣で始まるYS横浜の攻撃。
左ワイドで拾った道本がハーフレーンに向かうドリブルで、そのままポケットを突いて中央へと横パス。
そこに居たのは当然ながらゴールゲッターの福田で、小川を剥がして放たれたシュートはあっさりゴールネットを揺らし。
愛媛の入りを綺麗に突いた格好で先制点を挙げたYS横浜。

早々に得点をゲットした福田、尚も4分にクリアボールを拾った道本のスルーパスを受け、エリア内を突く決定機を迎え。
ここはGK辻にシュートをセーブされるも、この試合で感じた印象の通り、リアルストライカーの本性を早速露わにします。

その野生の牙に脅かされる愛媛も、5~6分には立て続けにYS横浜のパスワークを敵陣でカット。(そのうちの一つから森脇のミドルシュートが放たれるも枠外)
相手のビルドアップを阻む事がゴールへの近道、とは自身の失点で表した通りであり。
攻撃陣がその姿勢を示した事で、改めてファイティングポーズを取り直しました。

愛媛のビルドアップに対し、果敢に2度追いを辞さずの姿勢でチェイシングする福田。
攻撃のみならず守備でもその目線は相手ゴールへ一直線という、その意識を軸としたプレッシングで主導権を渡さないYS横浜。
それに手を焼く愛媛は、9分に最終ラインへ戻して作り直しにかかると、森下・小川のセンターバックが2人とも左ワイドに寄っての繋ぎ。
パスワークを展開するなか矢田が前に出てスルーパスを受ける役回りとなり、さらにダイレクトでのスルーパスに佐藤諒が走り込み。(その後山口がクロスもブロック)
サイドに人数を掛け、相手を寄せたうえでの繋ぎの片鱗を見せ。
17分に同じく左サイドから山口が縦パス、松田が受けて逆サイドへスルーパスというポストワークを挟み、受けた茂木がカットインを経て中央からシュート。(藤原がブロック)
密集からの展開という攻撃パターンを見つけたものの、攻勢に入るにはしばらく後となり。

ビルドアップ勝負となる中で、YS横浜の繋ぎに一日の長があるという展開に。
花房が上がって2CBの状態からの繋ぎで、ワイドには花房か古賀のどちらが張るかという二択。
そこから序盤の好機のように、いかに道本に良い形で受けさせるかが肝という左サイドアタックがメインとなりました。
反面その形の通りに、右からの攻撃は非常にお粗末で、何度か試みた前進は全て愛媛に遮断されて実らず仕舞い。
そのためもっぱら左サイドでの攻撃に偏重する事となり。

リードされている以上、そのYS横浜のビルドアップを阻みたい愛媛。
しかしダンカンの動きが今一つであり、GK児玉を含めての最終ラインの繋ぎに対し翻弄されるシーンが目立ちます。
23分児玉と藤原が左サイドでパス交換をする中、ダンカンの寄せが甘くなった隙を突いて藤原が一気にロングパス。
これを福田が収めてまたも好機が生まれかかったYS横浜ですが、エリア内への佐藤大への縦パスがカットされて実らず。

ここまでは得点への道筋がハッキリしているYS横浜が有利に見えましたが、25分にそれをひっくり返す得点が生まれます。
愛媛陣内での空中戦で、ボールが森下の下へ収まるとすかさず裏へとロングパス。
これが一気にエリア内にダンカンが走り込むボールとなり、GK児玉が跳び出しを躊躇った隙を突いてシュートを放ち、ネットを揺らすダンカン。
ロングボール一本で同点と、ペースを握っていたが故の油断を突かれた形だったでしょうか。

スコアがタイになり、その最初の攻撃でYS横浜が、藤原がGK児玉のパスを巧みなトラップでダンカンを剥がしてのロングパスを福田に通すという攻めを見せ。(シュートには繋がらず)
この藤原の姿勢を基本軸としてYS横浜がペースを握るかと思われましたが、予想に反して愛媛が一転攻勢となり。

31分に、先程と同様に左サイドでの密集から右へと展開という攻撃で、茂木のクロスに辿り着いてコーナーキックを得た愛媛。
ここはダンカンのヘディングシュートがゴールネットを揺らすものの、反則を取られてぬか喜びに。
しかしこれを切欠としてペースを握る愛媛(このCK以降、サイドハーフ同士を入れ替えて茂木=左・佐藤諒=右に)、両サイドをくまなく使う攻撃でYS横浜ディフェンスを揺さぶり。

劣勢になったYS横浜、何とか攻撃機会を確保せんとするも墓穴を掘る形で尚も押し込まれ。
38分の愛媛は自陣での矢田のパスカットからカウンターに持ち込み、素早く松田へと運んでエリア内を抉り、戻しを経て茂木がシュート。
藤原のブロックに阻まれるも尚も繋ぎ、左サイドから山口のクロスが上がると、GK児玉がパンチングした所を疋田がミドルシュート。
この児玉の横を抜いたと思われたシュートも二階堂にブロックされ(さらに拾った森脇のシュートもブロック)、惜しい所でモノに出来ず。

決定機に辿り着き、さらにYS横浜のビルドアップを機能させない状態を維持する愛媛。
左サイド一辺倒という攻撃の流れでは、それが途切れた時にはやはりキツくなるもの、といった所でしょうか。
それでも1-1のまま推移して前半が終わり。

巻き返したい状況となったYS横浜、ハーフタイムで動き佐藤大→ピーダーセン世穏へと交代。
しかし愛媛のキックオフとなった後半開始、そのキックオフでロングボールを使わずに前進する選択肢を採った愛媛。
戻したボールを再度センターサークルで受けた矢田から左へ展開、山口のミドルパスで裏に佐藤諒が走り込んでクロス。
クリアされたボールを逆サイドから上げられた疋田のクロスがさらに流れ、エリア内左でフリーの佐藤諒がダイレクトでシュート。(枠外)
意表を突かれてフィニッシュへの道筋を許すと、後半3分にはパスミスをダンカンに拾われてそのままドリブル、鹿沼がそれを反則で止めてしまい愛媛の直接フリーキックに。
ゴール中央という好位置から、キッカー茂木が直接狙いましたがゴール上へと大きく外れて命拾い。

肝を冷やしたYS横浜サイド、何とか自身のターンへと落ち着かせると、後半は右サイドからの攻撃を多くする微調整を披露。
といっても左サイドから前進の体勢を取り、フリーの柳へサイドチェンジのパスを送るという具合に、純粋な右サイドアタックとは言えないものでしたが。
それでも2分のように、ワイドからエリア内へ走り込む柳へロングパスを送り、跳ね返りを拾ったピーダーセンがエリア内を突く(シュートは撃てず)など一定の効果は見られました。

再び攻撃権を得たYS横浜、11分には逆に右から左へのサイドチェンジを送り、パスワークを経て道本が左奥を突いてクロス。
これをファーサイドで柳が合わせにいくも、ヘディングはミートせず流れてしまい。
続く12分には左→右へのサイドチェンジから、柳と二階堂の2人が軸となって繋ぎ、萱沼が奥からクロスに辿り着き。
ブロックされ、エリア内への浮き球を柳が拾う好機を迎えるも撃てずと、惜しいだらけの展開。(14分にCKから、道本がミドルシュートもGK辻がキャッチ)
中々シュートチャンスが来ない福田もあくまでゴールへの意識は旺盛でしたが、15分にそれが空回り。
前線でボールを森下に奪われると、体勢を崩しながらも追いすがった結果腕で森下を倒してしまい、反則・警告を受けてしまい。
これで4枚目で次節出場停止と、チームにとって痛手な結果に。

一方、HTを挟んだ事でSHの位置をスタート時に戻した愛媛。(右が茂木・左が佐藤諒に)
しかしそれによって(原因は一概に言えないが)劣勢になったのを受け、16分過ぎから再び茂木が左・佐藤諒が右へと移り変わり。

時間経過でYS横浜のプレッシングも甘くなるなか、20分に小川が最終ラインからドリブルで持ち運び、左サイドを前進していき。(茂木がクロスに辿り着くもブロック)
いかにも受けに回るという姿勢を見せてしまったYS横浜により、主導権は再び反転します。
その後も小川の持ち運びを交えながら押し込んでいく愛媛。
ベンチも先に動き、25分に大ベテランの森脇を真っ先に交代(谷本を投入)と体力面の補填を行います。

そして交代直後の26分、愛媛は左サイド深めででのスローインからの攻撃。
YS横浜ディフェンスの寄せを受けるなかパスワークを重ねた末に左ポケットを取り、受けた矢田に対してチェックが一瞬甘くなった結果クロスが上がると、中央で松田が合わせヘディングシュート。
ゴール右へと突き刺さり、逆転に成功した愛媛。
YS横浜に福田が居るならば、こちらには松田が居るとばかりに今季6点目を挙げました。

受けに回ったツケが大きく出る事となったYS横浜。
基本に立ち返るように、28分に藤原縦パス→花房スルーで道本が受けてドリブルと、道本に良い形で渡すという攻撃。
これが疋田の反則を呼んで左ワイドからのFKとなり、キッカー中里のクロスをニアサイドで花房がヘディングシュート。(GK辻キャッチ)
一本フィニッシュに辿り着き、ベンチも士気を高めるべく30分に2枚替え。
中里・古賀→冨士田・松井へと交代し、左ウイングバックには道本が回りました。

意気上がるYS横浜、31分に愛媛がダンカンの単騎突撃によるカウンターを二階堂がスライディングで止め、反転し攻撃。
道本が一気に遠目からエリア内へロングパスを送ると、ファーサイドで柳が折り返し、そして萱沼がヘディングシュート。
ループの軌道となるもGK辻が抑えると、詰めにいった福田が勢い余って辻をチャージ。
いかにゴールしか狙っていないとはいえ、これには愛媛サイドも怒らざるを得ずにヒートアップ。(尚スライディングを受けたダンカンはこの間ずっと倒れ込み、一旦ピッチ外→復帰)
福田は尚も41分、反則を受けた際に相手選手に対し手を出すなど、既に警告付きである事を忘れたかのような振る舞いにヒヤリとさせ。

リードしている愛媛、36分に再度ベンチが動き、ダンカン・佐藤諒→大城・曽根田へと2枚替え。
早くもDFを多くして5バックシステム(3-4-2-1)の体勢に入るという具合に、この日も最少得点差での勝利を狙いにいった石丸清隆監督。

愛媛のカウンターの恐怖と戦いながら、ひたすら攻撃権を支配する中で同点を狙うYS横浜。(39分に萱沼→カルロス・アローヨに交代)
左サイドの道本にボールを預けるのを基本とする攻撃と、それに対応する愛媛の守備という図式。
故にそのシーンからの逸脱が起こった時が却って期待度の高いシーンとなり、35分にGK辻のフィードを直接二階堂が収めると、そのまま右サイドで松井が素早く裏へ送り。
そして福田が超スピードで裏に抜けましたが、GK辻が前に出てクリア。
42分にもクリアボールが直接愛媛最終ラインの裏に出た所を、福田が抜け出して拾いエリア内を突き。(ディフェンスに遭いCKに)
福田のマンパワーも活かしながら……という攻めは出来たものの、報われないままとうとう時間はアディショナルタイムとなります。
その直前に愛媛は最後の交代を使い、茂木・松田→忽那・吉永へと2枚替え。

そしてボールを確保し、左サイド奥まで運んでボールキープに徹する愛媛。
大宮時代はサイドバックだった吉永も、この日は本来のFWでその仕事に加わり逃げきりに貢献せんとします。
その姿に勝利は目前……と思い込むにはやや早かったか。

何とか攻撃権を奪回したYS横浜ですが、時間は無く最早放り込みに全てを賭ける体制に。
それでもAT4分台、スローインから右サイドで繋ぎの姿勢を見せたのが奏功したでしょうか、アローヨのポストプレイを経て冨士田の右手前からのクロスを中央でピーダーセンがトラップ。
ディフェンスに遭い撃てずにこぼれるも、これで愛媛サイドは一瞬足を止めてしまい、クリアに入った山口が柳を蹴ってしまう格好に。
この派手なチャージの絵図が主審の反則を告げる笛を生み、土壇場でYS横浜がPKを獲得します。
決められなければ地獄というキックを務め、靴紐を結び直し精神集中するキッカー福田。
そして冷静にGKの逆を突いてゴール左上へと決め、とうとう追い付きます。

これで地獄から脱したYS横浜でしたが、その先には天国が待ち受けており。
試合絵図はラフな蹴り合いへと移行するなか、松井が落としたボールを冨士田が裏へと送ると、待ってましたとばかりに抜け出したのはやはりこの男。
福田に他ならず、エリア内でワントラップから放ったシュートで、前に出たGK辻の脇を抜いてゴールへと転がるボール。
まさかのATでの連続得点で、大逆転劇を完成させました。

そしてゴールの直後に鳴らされる、試合終了を告げるホイッスル。
福田はハットトリックを完成させ、一気に2ケタ得点に乗せる八面六臂の活躍ぶりとなり。
まさにリアルストライカーという他無いですが、今後上のレベルに行くには、道中露呈しかけた精神力との勝負をコントロールできるかがカギでしょうか。

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DAZN観戦 2023年J3リーグ第12節 ガイナーレ鳥取vsFC岐阜

2023-06-09 18:33:40 | サッカー視聴記(2023年その他)

<両軍スタメン>

前年あれだけ大補強を敢行したにも拘らず、チーム成績は全く上がる気配を見せなかった岐阜。
人件費でナンバーワンだったのは松本でしたが、その松本が昇格を逃したのも重なり、J3からの脱出は金を掛ける事とイコールでは無いというのがはばからずも証明されてしまい。

大金を叩いたにも拘らず結果が出ない。
一昔前のJ1・神戸の状況が近く、ネタクラブ扱いされかねない成績である近年の岐阜。
その神戸は一足早くその状態から脱却し、現有戦力を活かしきる覚悟に実を据えた今季はJ1首位と結果に繋げています。反面イニエスタを有効活用できず終えるという総評が下されたのは何とも皮肉ですが
今季の岐阜も、稼働率の低いかつての名選手をなで斬りにし、新卒選手の獲得を広げるという具合に方針転換に舵を切った風であり。
名より実を取るかの如きこの政策、果たして結果に繋げて悪循環を断ち切る鉄槌と出来るかどうか。

後方に控える庄司・宇賀神のベテランの存在もあり、入りは大人びた立ち回りを展開する印象のある岐阜。
対する鳥取は積極的に攻め上がり、前半1分に早くも右スローインを直接エリア内へと投げ入れ、跳ね返りを繋いでの好機。
左からのクロスがクリアされるもさらに繋ぎ、窪田が中央からミドルシュート(枠外)とフィニッシュに繋げました。

かくして鳥取攻勢の幕が開き、4分には左コーナーキックから重松がヘディングシュート。(ゴール右へ外れる)
8分には右からのクロスが流れ、逆サイドで拾った富樫がそのままワイドの位置からシュート(GK茂木セーブ)と、ホーム(Axisバードスタジアム)の立場もあり果敢に先制点を狙い。
鳥取も、ボランチの位置にベテラン・長谷川アーリアを加入させ、一定の経験をチーム力に還元させる意思は岐阜と類似しており。
しかし長谷川アーリアはランコ・ポポヴィッチ氏の「息子」らしく、ダイレクトパスを好むスタイルであり、その影響か攻め急ぎが目立つ事となります。
得たCK(10分までに3本)もその全てがショートコーナーで早いリスタートと、せわしなくゴールを襲うものの、その反動が怖いと感じました。
放送席でも、金鍾成(キンジョンソン)監督のコメントらしい「内容よりも結果が重要」「縦に素早く運び、最短距離でゴールに迫る」という事が語られており、長谷川アーリアはその最後のピースという位置付けのような存在だったでしょうか。

そして不安が現実化したのが12分でした。
ここも増谷のロングパスを受けた富樫が左奥からカットインと、手数を掛けずに攻める鳥取。
しかし松本歩と対峙しキープする富樫が反則気味のディフェンスで奪われると、一気に岐阜のカウンターが展開され、自陣で受ける藤岡に対して喰い付いた増谷がスライディングするも奪いきれず。
そしてスルーパスがンドカに通ってGKと一対一が完成してしまうという、前掛かりな姿勢が完全に裏目に出る形となります。
そしてエリア目前という位置でGK糸原の左へシュートを放ったンドカ、難なくネットを揺らして先制点に辿り着いた岐阜。

その後の岐阜は、攻め急ぐ鳥取と対極に位置するかのように、試合を落ち着かせる立ち回りを展開。
ビルドアップは宇賀神が最終ラインに残っての3枚の形を取り、リスク管理を徹底したうえで庄司の縦パスを打ち込むというスタイル。
ディフェンスも自陣で4-4-2ブロックを敷いて構える時間が長くなり、鳥取のパス出しに対し下手な喰い付きを見せずと、得たリードを最大限生かさんとします。

20分に宇賀神の飛距離の長いスローインを起点とし、窪田が右ポケットを突いてCKを獲得した岐阜。
この右CKでキッカー生地はライナーでファーサイド・エリア手前へクロスとサインプレー、これを宇賀神がワントラップからシュートと狙い通りのフィニッシュが放たれましたが、右ゴールポストを直撃と惜しくも決まりません。
しかしベテラン宇賀神の、浦和時代らしい「バランサーを務めつつ、勝負所で一撃を放つ」プレーが光ったここまでの流れ。

そんな大人びた集団と化したような岐阜でしたが、例外は村田だったでしょうか。
27分に左サイドから攻め上がり、一旦は途切れるも相手のクリアをブロックしてさらに攻めんとする村田。
しかし田中恵にボールを確保され、奪わんとデュエル勝負を仕掛けるも反則を取られると、その田中恵を突き飛ばすという暴挙に出てしまいます。
当然これで警告を受けてしまった村田。
その後も35分に岐阜が敵陣でサッカーを展開する中、裏に抜けようとした所を田中恵と交錯してしまい痛んで倒れ込み。
止む無く岐阜はプレーを切るも、起き上がった村田は激しく不満を露わにするなど、冷静さを欠いていたのは明らかでした。

その隙を突きたい鳥取、28分に右サイド深めでスローインを得ると、またも直接エリア内へ投げ込み(ただしロングスロー体制では無い)大久保がフリックでエリア手前中央へ流し。
そこに普光院が走り込んでシュートを放ちましたが、ゴール上へと外れ。
続く29分には普光院の左→右へのサイドチェンジを受けた田中恵、奥へ切り込みクロスと見せかけてここもワイドからシュートを狙いにいきましたが、GK茂木がセーブ。
フィニッシュは放てていたものの、岐阜のゾーンディフェンスを完全に崩すには物足りず、遠目からのシュートに傾倒します。

岐阜は前述の村田の乱れを受け、前半の終盤は宇賀神が前に出るようになり攻撃をカバー。
40分には最終ラインでの繋ぎを経て、左サイドで宇賀神がスルーパス、これを受けた村田が左ポケットを突いてマイナスのクロス(誰にも合わず)という具合に一定の効果が見られ。
これで攻撃権を握った岐阜ですが、ボール支配率を高めて相手に攻撃機会を渡さない事を重視したでしょうか。
それを受けて焦る鳥取、前からの圧力を強めにいくも、45分には勢い余って重松がGK茂木にアフターチャージを敢行してしまい反則・警告。
最後に笑ったのは岐阜、という流れを描いて前半が終了します。

ハーフタイムでの交代は無く、後半に向けてメンバーは不変ながらも立ち回りの微調整は不可欠といった鳥取の状況。
と言っても、縦に速い攻撃は状況次第であり、岐阜が前に出て来ない以上何とかそれを主体的に崩しにかかるぐらいの事でしょうか。

後半5分に長谷川アーリアミドルパス→富樫落としと若干変化を付けた末に、重松が右サイド奥を突く攻撃。
ここから普光院のクロスが上がり、ファーサイドで大久保が合わせましたが枠を捉えられず。

岐阜はリードを守れば良いという立場ながら、そのリードはまだ1点であり、攻め続けられればプレッシャーは相当なものであり。
そんな雰囲気を感じていたのか、7分の自陣でのフリーキックの際には、キッカー庄司が中々蹴り出せずに遅延行為で警告を受けてしまう始末。
直後に左スローインを獲得すると宇賀神がロングスローを入れ、中央へ流れた(GK糸原が跳び出してゴールは空)所を窪田がシュートするも枠を捉えられず。
追加点の好機も、その立ち回りに若干の焦りが見られる事となりました。

左サイドバック・普光院の動きに合わせるように、彼がワイドに張る時は左サイドアタック、ハーフレーンに絞る時は中央で前進といったスタイルを取るようになる鳥取。
10分には普光院はワイドに位置するも鈴木が中央から縦パスを通し、その後の展開でワイドの普光院に渡してクロスが入り、跳ね返りを世瀬がヘッドで繋ぎ。
そのまま大久保・重松とのパス交換で前進していく世瀬、シュートまで辿り着きましたがゴール右へと外れ。
盤石では無いながらも意図的な揺さぶりの色が強まってきた鳥取、11分に大久保→小澤へと交代(富樫がFWへシフト)してベンチも勢いを付けんとします。

しかし岐阜サイドも動き、14分に松本歩・ンドカ→柏木・田中順也へと2枚替え。
生地が右SBに回り、ベテラン2名をここで投入といかにも流れを落ち着かせるべくのベンチワーク。

その最初の好機でした。
16分、左サイドで柏木が裏へロングパスを送ると、走り込む田中順の前でGK糸原が前に出てボールを確保。
しかしダイレクトで出されたボールを受けに入った田中恵、村田のプレッシャーを受ける中でバックパスを直接田中順へと渡してしまい。(村田が触ったようにも見えたが、オフサイドポジションに居た田中順がオフサイドにならなかったためそういう事なのだろう)
そして左ポケットを突いた田中順、前に出たまま防ぎにいったGK糸原の左を抜くシュートを放ち、ブロックも及ばずボールはゴール内へ。
ミスを誘発した岐阜、大人らしく労力を掛けずの追加点を挙げました。

リードを広げられてしまった鳥取、もはや金監督の理想と思われる、縦に速く突く攻撃は期待できる状況では無く。
その後は岐阜のポゼッションが冴え渡り、時間と攻撃機会を奪われていくのを止められなくなります。
中盤の舵取りを務める柏木の下、鳥取の反撃意欲を削ぐようにボールを回していく岐阜。
何とか挽回するべく、24分に長谷川アーリア・富樫→丸山・高尾へと2枚替え。

すると岐阜と同様、こちらも交代直後に結果が出ます。
25分宇賀神の縦パスを、投入された丸山がカットして反転攻撃に入る鳥取、小澤が左ポケットを抉って中央へ横パス。
そして牛之濱が放ったシュートがゴールネットを揺らし、岐阜の守備陣形が整わないうちの攻撃を成功させました。
岐阜はこの場面ボールは握っていたものの、宇賀神がダイレクトで縦パスを通そうとした選択が結果的に裏目に出る事に。
もう少し保持に努めた方が良かったという印象でした。

これで相手に焦りが生まれているうちに、一気に追い付きたい鳥取。
27分には裏へのロングパスに走り込んだ高尾が藤谷に倒され、反則・警告となったのみならずエリアからすぐ手前という好位置でのFKを獲得します。
横位置は左ハーフレーンからと若干クロスかシュートか迷うなかで、選んだ手段は軽く蹴り出し→重松シュート。
ディフェンスの間を抜けたものの、ニアサイド下を狙ったボールはGK茂木がキャッチして同点ならず。

防いだ岐阜は落ち着きを取り戻し。(33分に村田→上野に交代)
鳥取が最後方からの攻めを余儀なくされるなか、それを突くように敵陣でのボールカットを敢行。
35分に庄司が前に出て奪ったのち裏への浮き球で窪田を右奥へと走らせ、入れられたグラウンダーのクロスを田中順が合わせシュート。
GK糸原がセーブし、跳ね返りをさらに藤岡が追撃しますが枠を捉えられず。
直後にも柏木が前に出てパスカットしてそのまま右ポケットを突くシーンを作り(シュートまではいけず)、この時間帯で積極性を増しにかかる岐阜。
しかもカットしたのはベテランのボランチと、いかに試合の流れを読むのに成功しているかを証明する事となりました。

反撃の流れを断ち切られた格好の鳥取。
追い打ちを掛けるように、37分に小澤が痛んでしまい続行不可能となり、インアウトを余儀なくされます。(文仁柱を投入)
攻撃機会を全く得られなくなる鳥取を尻目に、岐阜は41分に最後の交代カードを使い。
窪田・藤岡→田口・和田へと2枚替え、DFの和田を投入した事で5バックシステム(3-4-2-1)へとシフトします。

しかし岐阜もその直後(43分)、宇賀神が牛之濱との交錯で足を痛めてしまい、続行不可能並びに数的不利となる危惧に襲われてしまい。
和田は×サインを出すもGK茂木は○を出すという具合に、「もう交代枠は無いから残すしかない」というような思惑を強いられます。
何とか足を引きずりながら立ち上がった宇賀神、その後もプレーを続け。

それでも勢いがつかない鳥取の攻撃、5分が目安のアディショナルタイムもあっさりと進んでいき。
そして4分台となったところでようやく、中盤からのFKという絶好の放り込みの機会が訪れ、GK糸原が前線に上がり。
キッカー文のロビングをエリア内右で落とす糸原、しかし重松には繋がらず。
しかしここから放り込みでエリア内を突き続ける鳥取、混戦の中シュートチャンスが生まれたものの、ボレーシュートにいった牛之濱は空振りして撃てず。
結局見せ場を作れたのは最後だけ、というような攻勢となりました。

1-2で勝利に辿り着いた岐阜、これで3連勝。
ようやくその重い腰が上がったのか、水曜に行われた天皇杯でもJ2・清水を撃破(2-1)と結果を出し。
ベテランと若手の融合と、内容的にも好循環を感じるものであり、ここから勝算を立てる事が出来るでしょうか。

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DAZN観戦 2023年J3リーグ第12節 いわてグルージャ盛岡vsFC今治

2023-06-08 16:00:52 | サッカー視聴記(2023年その他)

<両軍スタメン>

前回の今治の試合(3節・琉球戦、2-2)の主たる印象として、「選手間の距離を近くしての、細かなパスによる前進」といった攻撃に異様に拘るのが残っており。
敵味方が混同する密集により、ボックス付近でカオスな状況が生まれ易くなりはしたものの、果たしてそれが流動性に繋がっていたかどうか疑問が残る試合絵図となっておりました。(まあビハインドだったからというのもあるが)

そのため前回のJ3で岩手の試合を観た際、「選手間の距離を広く取り、長いパスで相手ブロックを揺さぶる」岩手の攻撃が展開され。
あの時の今治とは対照的なアプローチで、かくしてこの2チームがぶつかり合うとどうなるか、非常に興味を持つ事となり。
そんな訳で今週はいの一番に、このカードの視聴を決定する事となりました。(完全な私事)

試合開始から、突破を仕掛ける近藤と、それを止めんとするチャンヒョンスの間で激しいデュエル。
それにより自然と「高まり」も発生してしまったのか、前半4分に今治のパスミスから素早く好機に持ち込む岩手、佐藤未のドリブルを反則で止めてしまった照山が早くも警告を貰い。
この中央から良い位置での直接フリーキックこそ、キッカー新保の直接シュートをGK伊藤が正面でキャッチしたものの、センターバックが早々に警告付きとなる苦しい状況となった今治。

序盤の今治は岩手のプレッシングを受け、それに対抗すべく最終ラインはしっかり幅を取ってパスを繋ぎます。
そこには密集を作ってショートパスで前進、という思想は影も形も見られませんが、改善したのかないしは相手次第の立ち回りなのか。
後者ならばパワーサッカー気味のスタイルで来る岩手に対し、強引な突破は無謀だと判断しての事でしょうか。

攻撃ではそんな思考が伺えたものの、守備ではその岩手のパワーを抑える事が出来ず。
岩手はGK丹野が足下で繋ぐのが主体なものの、基本は良い形でロングボールを送るためのビルドアップであり。
9分に丹野のパスを受けた新保がロングパス、これをオタボーが前方へ落とすという具合にしっかりと繋がれるロングボール。(その後拾った藤村から右へ展開して李がクロスもGK伊藤がキャッチ)
そのための2トップ、という布陣なのでしょう。(前節は4-2-3-1)
そして11分、ここもゴールキックを短く繋いで右サイドから田代がロングパス、佐藤未が合わせにいった所をクリアしきれない今治。
拾った藤村から繋ぐという先程と類似した流れでしたが、今度は戻しを選択して再び田代がロングパスを供給すると、裏を突かれた二見がクリア出来ずにエリア内で佐藤未が収めて絶好機が生まれます。
そして放たれたシュートがGK伊藤の股を抜いてゴールネットを揺らし、狙い通りの攻撃から早々に先制した岩手。

このロングボール攻勢を抑えられなければ、無残に敗れ去るのみといった雰囲気の今治。
その後その圧力に屈するというシーンは攻撃面でも見られ、16分にはビルドアップから前進を図った所、三門が李に寄せられて止む無く送った縦パスをカットされて岩手のカウンター。
右サイドでの南のドリブルを(松本が)反則で止めるしか無い状況となり、攻守ともに厳しい展開を強いられます。

何とか巻き返さんと21分には左サイドから攻撃、例によって人数を掛けての前進、遮断されるもまた繋いだ末にヴィニシウスのスルーパスが左奥へ。
しかし受けた楠美が奪われ、チャンヒョンスのキープに対してゲーゲンプレスを掛けるも奪えずに逆サイドへ展開され、新保のクロスにまで繋がれるという具合に相手を上回れません。

この岩手ペースは次にスコアが動くまで続いたという感じで、今治は散発的に攻め込むもののフィニッシュに辿り着けず、逆にインパクトを残す岩手の攻撃に晒されるという流れに。
31分には再びGK丹野からの攻撃で、李が三門のプレッシャーをいなして今度はグラウンダーで縦パスを届け。
左からの新保のクロスはクリアされるも繋ぎ直し、チャンヒョンスのスルーパスで右ポケットを取った末に藤村がマイナスのクロス。
そしてクリアボールに対し李が反応しミドルシュートを放ちましたがゴール上へと外れ。
35分には今治が右サイドでショートパス攻勢を掛けにいくも、オタボーに遮断されて繋がれると、サイドチェンジで右スペースへと出されて一気に岩手の好機に。(南がクロスもブロック)
ショートパスモードに入ると、逆側のサイドハーフもボールサイドに寄る傾向を突かれる形となりました。

良い流れを作りたい今治、38分には岩手の自陣左でのスローインをカットすると、自然と出来ていた密集の中でショートパスを繋ぎ。
そして右ポケットを突いた三門が奥からシュートするも、ゴール左へ逸れてしまいタッチを割り。
何とか初めて有効打を放ったものの、以降も岩手の圧力に晒される時間は続き、40分にまたもGK丹野からの攻撃でグラウンダーでの縦パス攻勢。
これで左ポケットを突いて左コーナーキックを得た岩手、クロスの跳ね返りを南がダイレクトでミドルシュートを放つもGK伊藤がセーブ。(その後も繋いで藤村がエリア内からシュートもブロック)
脅かされるゴールと、早く追い付きたいという心理が交錯したのか、42分の岩手のビルドアップにプレッシングを掛けるもGK丹野の捌きでいなされ。
左サイドで(松原亘を経由して)持った斉藤に対し、その後方で4人も今治の選手が残る状況となってしまうなど、トランジションも巧くいかないという印象を残します。
ここからまた好機を作る岩手、オタボーのサイドを変えるミドルパスを受けたチャンヒョンスがミドルシュート。(二見がブロック)

今治の攻撃は、34分に近藤が再びチャンヒョンスにチャージを受けて痛んだシーンを境として、右サイド重視へ切り替わった感があり。
ひとしきり岩手の好機を凌いだのちの43分、ここも右サイドでパスを繋いだ(左サイドバックの松本もその輪に入っていた)末に、スルーパスに市原が走り込んだ事でCKに持ち込み。
キッカー三門のクロスは跳ね返されるも、繋いで再び三門の下に渡ると、クロスでは無くエリア手前への浮き球をヴィニシウスに届け。
そして収めたのち反転シュートを放つヴィニシウス、ブロックに遭うもこぼれ球を市原が拾いさらにシュート。
GK丹野がセーブして防ぐも、眼前にこぼれた所を市原が倒れながら横パスを送り、照山が走り込んでシュート。
3度目の正直でゴールネットを揺らし、「苦しい時のセットプレー」と言わんばかりの同点劇となりました。

喜びの束の間、直後の45分に再び岩手の攻撃に襲われ。
左からオタボーがクロスを入れると、チャンヒョンスの足での折り返しに対してオタボーが自らシュート。
照山がブロックした跳ね返りを尚も繋ぐオタボー、南のミドルシュートで追撃(ブロック)と、その圧力は追い付かれても尚も脅威であり。

1-1で前半を終え、ハーフタイムでの交代も無く迎えた後半。
休息を終えて選手達がピッチ上に戻るという段階で、岩手・佐藤未が主審に対して何やら話しているシーンが印象に残りました。
そのアクションを見ると、彼のポストワークに対し、相手の反則チャージを訴えているようなニュアンス。

それが奏功したかどうかは不明ですが、後半2分にスローインを入れ替わって受けにいった佐藤未に対し、松本がまさに先程の佐藤未の腕でのアピールのような形でのチャージ。(腕で後ろからネックハンキングのような形)
これに笛が吹かれて反則となり、右サイド奥からのFKを得た岩手。
ここで変化を付けて戻しから藤村の手前からのクロスを選択、跳ね返りを李がシュート(枠外)と、先制攻撃した岩手。

後半も岩手がそのパワーをふんだんに活かし攻め上がりますが、7分にオタボーのキープが奪われると今治のカウンターに。
ヴィニシウスの中央のドリブルを、李が後ろからスライディングと、反則で何とか止めた格好となり警告を受け。
これにより微調整を図ったのか、以降は前節のように、新保をデフォルトで高い位置へ置くスタイルへと傾倒します。
前半のようなロングボールに拘らず、相手のプレッシングを呼び込んだうえで、いかにフリーの新保に渡すかという立ち回り。

しかし14分にビルドアップの最中に、エリア内で持ったGK丹野のコントロールが乱れた所を、ヴィニシウスに奪われてしまう事態が発生。
これによりヴィニシウスが丹野の足に引っ掛かり倒れるも、すかさず起き上がり拾う事を選択したヴィニシウス、中央へ横パスを送って中川がシュート。
しかしゴール上へと外れてしまい、突然訪れた決定機はモノに出来ませんでした。

その後は膠着状態で、中盤でボールの奪い合いが長く続くというシーンもあり。
今治は前述の李の警告シーンのような、ヴィニシウスの仕掛けが目立ちますが、彼のサポートが足りずに結局奪われてしまい実りません。

そして流れを変えるべくの交代カードに、最初に手を付けたのは今治。
23分にヴィニシウス・中川→ドゥドゥ・武井へ2枚替え、しかも2トップをそっくり入れ替えに掛かりました。
物議を醸した8節(ゴールパフォーマンス・退場)然り、何かと騒がせる存在と化したような今季のドゥドゥ。
この日は、ロングボールに合わせにいった所を田代にパッティングの形でチャージされ、頭部を痛めてしまうというヒヤリとするシーンで始まりました。(24分・無事に起き上がる)

ヴィニシウスの突破が無くなった事で、前半のように右サイドで市原を前に押し出す攻撃へとシフトする今治。
25分、照山がその市原へとロングパスを届け、彼が入れた低いクロスをニアサイドで受けた近藤がシュート。(GK丹野セーブ)
その後もドゥドゥを裏へ走らせるなど、この日はやはり岩手の前への圧力を逆手に取る立ち回りとなっていたでしょうか。
こういう状況では、密集からのパスワークに頼る必要は殆ど無く。

一方の岩手も26分に佐藤未→宮市へと交代。
これで前節のような4-2-3-1へシフトかと思われましたが、そのままトップの位置に入る宮市。
(今治は28分に山田→安藤へと交代)

ターゲット役が変わったとはいえ、変わらずに新保を前に押し出す岩手と、市原を前に押し出す今治。
そして31分、その双方が交わるような展開でスコアは動きます。
またもGK丹野からのビルドアップで攻める岩手に対し、左へ展開した所にプレッシングを掛ける今治。
新保→藤村へのパスを市原が前に出て潰し、一度は奪ったかに見えましたが再び藤村が奪い、それにより左サイドに出来上がる広大なスペース。
そしてそれを当然のように新保が突き、ドリブルからクロスを上げると、ファーサイドで宮市が合わせヘディングシュート。
GK伊藤がセーブするもゴール前に力無くこぼれたのが運の尽きで、詰めてゴールネットを揺らしたのは松原亘。
美味しい所を持っていった形となりましたが、前節もチャンスと見るや最前線に上がる動きが目立っていた松原亘ならではのゴールともいえるでしょう。
ともかく勝ち越しに成功した岩手、キックオフの前にさらにカードを切り李・チャンヒョンス→弓削・桐へと2枚替え。

再び追う立場となった今治、37分に楠美・松本→パクスビン・冨田へと2枚替え。
その後も距離を取ってのビルドアップから裏抜けを狙うのは変わらずと、この日の後半は最後までショートパス攻勢へと移行する姿勢は見られませんでした。

しかしそれはオフサイドを取る事に長けた今季の岩手ディフェンスの思う壺、といった風でもあり。
36分の(ドゥドゥが左奥を突いてのカットインからの)安藤のシュートを最後に、パタリとフィニッシュシーンは途絶えてしまいます。
無理矢理な攻撃を余儀なくされた結果、冨田のロングスローに頼らざるを得ない状況を強いられ。

こうなるとパワーで勝る岩手は、負ける要素が無いといった格好に。(41分に新保→加々美へと交代)
次々と今治の攻撃を切っていき、時間はとうとうアディショナルタイムへと突入します。

紛れを起こしたい今治、再び冨田のロングスローモードへ突入し、跳ね返りをさらに冨田がヘッドでエリア内へ送られるボール。
GK丹野が抑えにいくもこぼしてしまう紛れが発生するもシュートは撃てず。
再び冨田のスローインとなり、クリアボールを拾った近藤がミドルシュート(ブロック)と攻め立て。

時間も押し迫り、強引に断ち切らんとした岩手は焦ったか、右からのスローインを直接カットにいった松原亘がハンドを犯し。
これで右サイドからのFKとなり、GK伊藤が上がって最後の攻撃を敢行する今治。
しかしクリアされ、その後のスローインからの攻撃が途切れた事で試合終了の笛が鳴り。
2-1で勝利に辿り着いた岩手、やはりパワーサッカーは健在といった所でしょうか。

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DAZN観戦 2023年J3リーグ第11節 テゲバジャーロ宮崎vsいわてグルージャ盛岡

2023-06-02 18:28:24 | サッカー視聴記(2023年その他)

<両軍スタメン>

ともにホームの1stカラーが白メインというチーム同士の対戦。

宮崎のホーム・ユニリーバスタジアム新富。
非常に建築物が少なくスタンドを作ったのみという感じの外観なうえ、電光掲示板は無しと、下位カテゴリ(J2)が出来て日の浅い頃の地方(一部)を連想させる出来栄えであり。
上と下の格差を感じさせる景観ですが、逆に言えばそれだけ間の部分が詰まっているという事。
底辺から上層部へのし上がるという事は困難を極める現代のJリーグですが、その夢を失っては中層部へ這い上がる事すら難しい。
リーグの成績では過去2年申し分ない宮崎ですが、今後クラブ規模的にも浮上する事が出来るでしょうか。

試合が始まると、既に前年J2を経験した、先輩格である岩手が攻撃権を支配。
入りのロングボール中心の立ち回りが終わったのちも、最終ラインでの繋ぎを経てロングボールを組み立てに取り入れる攻撃。
その立ち位置は、前年まで相手の宮崎に居た新保が常時高めという、宮崎在籍時の性質そのままな位置取り。
これを軸として、広めの間隔でパスを繋ぎ、宮崎のコンパクトな4-4-2ブロックの攻略を図るという解り易い意図が見られました。

一方の宮崎も、守備の時も前掛かりで襲ってくる岩手サイドの裏を突くべくロングボール中心での攻撃。
しかしオフサイドを量産するなど不発に終わり。

岩手の長い距離のパスに次第に宮崎ディフェンスはスライドが間に合わず、サイドで2対1が出来る局面が多発してしまう展開に。
14分右サイドでミドルパスの跳ね返りを拾った李がすかさずサイドチェンジ、これで和田・新保と宮崎SB(青山)という2対1が生まれ。
和田が左奥を取ってシュート気味のクロスを入れるもGK植田がキャッチ。
こうした姿勢でサイドを踏襲していき、16分には右スローインからの繋ぎで、奥を突いたのちの戻しから松原亘がミドルシュート。
これがゴールバー上部を掠める際どいフィニッシュとなり、岩手の狙いは成功したかのような流れを描きます。

一方、かつての同僚(新保)の存在に脅かされるといった宮崎。
右サイド(岩手から見て左サイド)を押し込まれるのを避けるためか、20分辺りから高橋と北村の位置を入れ替え。
そして北村がトップ下のように振る舞う事で、守備時にどちらのサイドにも人数を掛けられるように備えたでしょうか。

また攻撃では、岩手の左サイド重視の姿勢に釣られるように、自身も永田の裏抜けを中心として左からの攻めを増やし。
24分にはその永田がスルーパスを受けて奥へ進入、カットインでエリア内を突くと角度の無い所からシュートを狙い、左ゴールポストを直撃。
反撃体制を整えたかに見えましたが、以降再び岩手の攻勢を受け、ブロック形成で凌ぐ状況となります。

27分以降、宮崎の攻撃機会が一度も訪れない(自分の集計、オフサイドの場面は除く)ぐらい押し込み続けた岩手。
それでも微調整した宮崎ディフェンスは、中を切る意識を強めてフィニッシュの場面を作らせず。
エリア内に縦パスを打ち込まれてもシュートさせなければ良いという、その姿勢に難儀する岩手。
こうなると主体的な攻撃よりは、相手を引き込む意識を高めて隙を作る事も求められる状況に。
35分に最終ラインでボールを回収した岩手に対し、宮崎は永田が前に出て奪回を狙い。
これを見て田代→南縦パスとその隙を突いて素早く運んだ岩手、佐藤未のシュートまで繋げます。(ブロック)

このいかにプレッシングを呼び起こし、相手の4-4-2ブロックが崩れた所を素早く運ぶかがカギとなる予感がしましたが、早々巧くはいかず。
その後は例によって、浮き球のロングパス・ミドルパスを送り、佐藤未や宮市のポストワークで揺さぶる体勢へと移行します。
それでも36分の李のミドルシュート(ブロック)以降はフィニッシュに辿り着けず。
サイドを突いてのクロスもブロックに防がれる事数多で、掻い潜ってもGK植田に抑えられるという具合に実りは少なく終わり。
結局前半はスコアレスで終わる事となりました。

ハーフタイムでの交代は双方とも無く、始まった後半。
早速の後半1分に宮崎のカウンターが生まれかかり、裏へのロングパスに永田が走り込むも繋がらず。
ともに立ち回りは大きく変えずも、宮崎に逆襲の意識が強くなったでしょうか。
6分には左サイドで受けた南野が果敢にロングシュートを狙う(GK丹野キャッチ)シーンもあり。

こうしてカウンターの恐怖を植え付けた宮崎、その後はマイボールの際はショートパスを繋ぐ意識を高め。
ボランチが1人降りて、3枚の最終ラインによる繋ぎをメインとして岩手のプレッシャーをかわし。
長崎時代もそうだったように、既にポールポゼッションの下地があるチームを受け継いだ松田浩監督、その能力を「相手の攻撃機会を減らす」という守備面で活かすのに躊躇は見られず。
自身の能力を落とし込みながら、それまで培ったチームの能力を引き継ぐという二面性は、宮崎の地でも発揮されているようでした。

そんな宮崎の立ち回りにより、前半程攻勢を掛けられない状況に陥った岩手。
流れを取り戻すべく18分に最初のカードを切り、宮市→オタボー・ケネスへと交代。
オタボーがトップ下に入り、藤村が右サイドハーフに回りました。
この後ショートパスを繋ぎ、同サイドに人数を掛けるという手法に切り替えるも、宮崎のブロックを中々破れず。

一方の宮崎も、24分に北村→橋本へと交代。
橋本・南野の2トップとし、スイッチを入れに掛かりました。

しかしその直後、スローインを受けにいった橋本は空中で田代のアフターチャージを頭部に受け、いきなり痛んでしまう事態となります。
当然反則で田代が警告を受けたものの、その後治療を経て復帰した橋本の顔には痛々しい瘤が膨れ上がり。
その姿に岩手サイドも申し訳無いという気持ちになったのか(ないしは2枚目の警告を避けるためか)、28分に田代を退かせる手段を採りました。(弓削と交代・同時に佐藤未→ドウグラス・オリヴェイラへと交代、李がセンターバックに回る)

前線にドウグラスを立てた事で、再びロングボール重視となる事が予想される岩手。
宮崎はその圧力を掻い潜り、29分に下澤が再びロングシュートを狙いましたが、ゴール左へ惜しくも外れ。
直後の30分には橋本がプレスバックしてボール奪取、そのままドリブルでカウンターの場面を作ったものの、その前方で南野が李のチャージを受けた事で反則に。
相手の攻撃を防ぎつつ、2トップの圧力で一発を狙う展開が出来つつありました。(36分に高橋→小川へと交代)

予想とは反して、その後も最終ラインでの繋ぎで何とかする姿勢を見せる岩手。
36分にはGK丹野から左サイドへ渡しての前進、スルーパスを受けて深さを取ったドウグラスからの戻しで人数を掛けての好機。
中央へ送られた後、オタボー縦パス→弓削スルーを経て受けた松原亘がシュート。(ブロック)
このフィニッシュを境に、松原亘が流れの中で前に出てチャンスエリアで受けるという攻撃が目立つようになります。

岩手の最後の交代は40分で、和田・南→チャンヒョンス・加々美。
謹慎処分(ビスマルクの飲酒運転に同乗していたという理由)・故障を経て、今季復帰後3試合目の加々美。
この押し迫った時間帯で違いを見せたかったものの、南と比べてあまり目立てず、やはり時間が少なすぎたでしょうか。

最後のカードがやや不発となった岩手を尻目に、再びボールポゼッションの時間を増やす宮崎。
永田を使って奥まで進入するも、戻して作り直すという具合に、あくまで失点しない事を重視していたでしょうか。
一見消極的ながら、その姿勢が最後に報われる事となった感があり。

一方人数を掛けて押し込む攻撃で、チャンスと見るやCBの李も前に出てのパスカットを見せ攻撃継続させる積極性は変わらない岩手。
この両機軸がどう転ぶか、というアディショナルタイム。

宮崎は最後の交代を使い、下澤・南野→江口・東出。(東出が左SHに入り、永田がFWへ)
そしてAT2分台、あくまで最終ラインで繋ぐ姿勢を取る宮崎、それに対して岩手がプレッシャーを掛けて来た所をGK植田が最終ライン裏へとロングフィード。
これがエリア手前左を突く嫌らしいボールとなり、加々美がクリアに入るも走り込んだ東出がブロック。
そしてエリア内中央へこぼれた所を、同じく走り込んでいた橋本がダイレクトでシュートを放ち。
ゴールネットが揺れ、この土壇場で先制点を挙げた宮崎。
最後まで冷静な立ち回りを貫いたご褒美と言うべきゴールとなりました。

リードされた岩手に既に残された時間は殆ど無く。
甲斐を前線に上げるパワープレイ(本当は李も上がりたかったように見えた)に全てを賭け、その甲斐から左からのクロスが上がり。
これを弓削が胸で落として乱戦が生まれかかるも、オタボーの手前でクリアされて実らず。
結局フィニッシュに辿り着けず、試合終了を告げる笛が鳴りました。

2試合連続でウノゼロの勝利と、松田氏が推し進める守備組織も大分洗練されてきた印象を残した宮崎。
前年までのボール保持と組み合わされば最強に見える……というのはまだ早いものの、理想のチームにまた一歩近づいた試合だったでしょうか。

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DAZN観戦 2023年J3リーグ第11節 カマタマーレ讃岐vs奈良クラブ

2023-05-29 16:00:30 | サッカー視聴記(2023年その他)

<両軍スタメン>

  • 当初は逆のコートでスタート予定も、コイントスでコートチェンジし結局ホームチームが(メインスタンドから見て)左側でスタート。

天皇杯1回戦が挟まったため、2週間ぶりの開催となったJ3リーグ。奈良は早速HondaFCの洗礼を浴びたようで
完全DAZN民である自分にとっては待ち遠しかったものの、来季からはそのDAZN中継も切り離されてしまう事が決定済み。
チェアマン・野々村芳和氏は「視聴手段は確保する」と約束したものの、秋春制への強行的な移行を唱える辺り弱者切り捨ての雰囲気が高まりつつある近年のJリーグ故、予断は許さない状況といえますが果たしてどうなってしまうか。

ネガティブな話はこれぐらいにして、今季からそのJリーグへと参入を果たした奈良。
FC大阪とともに関西勢が加わったのみならず、関西大都市圏の外であるクラブから初の参入という事で、歴史的快挙と言えるでしょう。
しかしその道のりは波乱を極め、新規参入を目指してJFLリーグを戦っている最中、度重なる入場者数の水増しが発覚。
そのためJリーグ百年構想クラブから失格処分を下される事態となり(のちに解除)、「闇雲に昇格を目指しても、待っているのは破滅」という思いに至ったでしょうか。

それでも前年の参入決定にあたっては、入場者数が最後の壁となり。
JFLでカズ人気驚異的な集客力を誇っていた鈴鹿ポイントゲッターズとの試合に何とか救われた格好で、駆け込みでクリア。
そしてJFL優勝を決め、とうとうJリーグの舞台に足を踏み入れる事となりました。

サッカー的には、スペイン出身のフリアン監督の下組織的なサッカーを繰り広げるという、欧州スタイルを積極的に取り入れているであろうクラブ。
早々に選手のキャリアを諦め15歳の時点で指導者への道を歩み始めるという、変わり種であるフリアン氏の執念が、今ハッキリとした形で表れる……とまでは言い過ぎか。
ともかくまだ序盤ながらも、1年目から上位争いを繰り広げている奈良。

そんな新星の存在で、Jリーグ経験は詰みあがっているものの相対的に下部への振るい落としに遭いつつある讃岐がこの日の相手。
先輩の意地を見せたい讃岐は、立ち上がりのトランジション勝負の時間帯で好機を作り。
前半2分右サイドで森勇がボール奪取してすかさず前線へスルーパス、受けて起点を作った赤星から中央へ展開。
そして長谷川縦パス→福井ポストプレイでエリア内を抉った末、川崎がダイレクトシュートを放ちましたがGKアルナウがセーブ。

いきなり決定機となりましたが、5分には逆に奈良がトランジションの連続を経て好機を作り。(左から嫁阪がクロスを入れるも撃てず)
続く6分にはネットを揺らされ(堀内のミドルパスを浅川がエリア内で受けてシュート)てしまいますが、オフサイドで何とか命拾いします。
直後のフリーキックでのロングフィードから(赤星のフリックで)またも決定機を迎える讃岐、森勇のグラウンダーのクロスから、福井がトラップで裏へ抜け出してシュート。
しかしまたもGKアルナウがセーブ、跳ね返りに詰めた赤星のシュートもアルナウが前に出てブロックと、最後の壁を破れず。
開始からともにゴールに極限まで近づく試合展開と、トランジションに頼るサッカーでは落ち着きを得られないのは確か。

その後試合を落ち着かせようとしたのは奈良の方で、GKを含めてのショートパスでのビルドアップにより、ポゼッションを増すお決まりの流れとなり。
しかしそれが本格化する前に、讃岐のプレッシングに引っ掛かります。
14分自陣右サイドでのスローインからの繋ぎで、寺村のダイレクトパスがあろう事か中央で奪われる事態に。
拾った福井が溜めを作ったのち長谷川→森勇と経由して右ポケットを取り、森勇から放たれたシュートがニアサイドを破ってゴールに突き刺さります。
これだけショートカウンターのお膳立てが揃えば決められない方が問題というような、先制点を挙げた讃岐。

このリードを最大限に活かす事が求められる讃岐。
しかしそれは果たせず、17分逆に自身のビルドアップのミスで失点してしまいます。
左サイドから中央、つまりGKへと戻されると、ワントラップを経てフィードを蹴りにいくGK高橋拓。
しかし猛烈に詰めた酒井のブロックに遭うと、そのままボールはゴールに突き刺さる事となり。
近年は足下の技術も求められるGKという職業、猛烈なプレッシャーを受けたこの場面での正解は切り返しで酒井を剥がす事だったでしょうか。(次点で右に開いたDFへのパス)
早まったか、相手のプレッシャーを過小評価していたか……といった同点劇となりました。

振り出しとなり、奈良のビルドアップを良く見てみる事に。
ポジション取りは普通のアンカースタイルに、インサイドハーフの降りを加えるというオーソドックスな形。
しかしそのパスワークに一ひねりといった感じで、形式的な段階的では無く、一つ飛ばしのパスを多用してプレッシャーに対抗するという意識が強く。
例を挙げると右センターバック→左CB→左サイドバックと渡し、詰まればまた左CB→右CBと戻すのが一般的ですが、この日の奈良は左SBが直接右CBまで届けるパスを送る事が目立ちました。
右CB→左SBへのパスという逆も然りで、またSBに届ける所を、ウイングが降りてきて受けるという具合に変化を付けるパスの受け手。

パスを回す中、周囲を良く見て空いた所を効果的に使う姿勢が伺えたものの、同時にそれは通常より難易度が高まるのも確か。
25分にはまたパスミスから好機を作られ、右サイドで森勇がボールを持つ場面となり。(森勇が相対したDFの股抜きを狙うもロスト)
その後も28分・32分に立て続けに自陣でボールを失って危機を招くなど、未だ発展途上といった所でしょうか。

一方の讃岐は、跳梁する右サイドハーフの森勇ですが、それ故周囲より一歩抜け出していた印象を受け。
これを見たベンチは25分過ぎ辺りから配置を弄り、攻撃時には森を右シャドー・臼井を右ウイングバックとしての3-4-2-1気味に移行する可変を採るようになります。
その際ベンチから「(森)勇人に伝えて」という指示が上がるという具合に、彼の人並外れた?前残りと攻撃能力をバランスを崩さずに何とか有用とするような思考からだったでしょうか。

試合の方は、立ち上がりの慌ただしさから一転し中々フィニッシュ数が膨らまずに推移。
やきもきする状況はボールポゼッションで上回る奈良の方、という展開ですが、終盤に来て流れを手繰り寄せ。
42分に左サイドでの嫁阪のドリブルが契機となり、パスワークを経て左奥を突いたのち、戻しを経て加藤の手前からのクロス。
これが大外奥での浅川の折り返しに繋がり、酒井がこれを足で合わせましたがGK高橋拓の眼前でのセーブに阻まれます。
この後そのボール保持力を活かし、(GK以外)全員敵陣に進入して攻めるシーンも作る奈良。
アディショナルタイムにはそれを逆手に取り、寺村のロングパスで一気にエリア内右を突くと、酒井が走り込んでダイレクトで浮かせたボールがGK高橋拓を越えて中央へ。
そこに後方から中島が走り込む際どい好機となったものの、クリアされて実らず。
奈良はシュートこそ2本止まりでしたが、攻めの形は示した格好となったでしょうか。

前半を1-1で折り返し、交代無く始まった後半戦。

前半は長短のカウンターによる攻撃シーンが目立った讃岐、後半1分には川崎の飛距離の長いスローインから、跳ね返りを拾ってからの好機。(シュートまではいけず)
これにより、ポゼッションを高める奈良に対してアバウトな攻撃の意識が高まったでしょうか。
7分にこぼれ球を回収したのち最終ラインからの攻めで左サイドを突き、福井のクロスをファーサイドで森勇が合わせるものの撃ちきれず。
繋ぎたい意識はあったでしょうが、後半奈良の動きが良くなった事で果たせなかった印象を受け。

前半に比べてIHが降りる頻度が増え、その分SBが前へ出るといった奈良の攻撃。
8分にはその寺村のドリブルで赤星の反則を誘い、右サイドからのFK。
キッカー可児ファーにクロス→嫁阪折り返しを経て、トラップした加藤のボレーシュートが放たれるも枠を捉えられず。

その後も高めに上がるSBを利用し、主に左サイドで推進していく奈良。
それによりCKも多く獲得と、押し込む流れを得た事で何処かで一本……という展開となります。

一方凌ぎを強いられる讃岐。
攻撃ではロングボールを前線へ送るも繋がらず、守備では押し込まれた事で時折5バックと化すシーンも見られるなど、厳しい状況に。
ベンチも最初に動いたものの、それは20分というやや遅めのタイミングと、必死に天秤にかけていた節があり。
2トップを揃って代え、赤星・福井→鳥飼・岩岸へと交代しました。

しかしその後最初に決定機を迎えたのは奈良。
24分に鈴木がドリブルで前進と、「スペースがある時はCBは持ち運ぶ」というビルドアップのセオリーを見せたのちに左へと縦パス。
受けた嫁阪は一旦奪われるも、自力で奪い返してクロスに辿り着き、これをニアサイドで受けた浅川はワントラップからのバイシクルシュートに持っていきます。
これを前に出て防ぎにいったGK高橋拓、至近距離で顔面でセーブという形となり、防いだものの倒れ込んでしまう高橋拓。
その絵図は2分近く続き、何とか立ち上がりプレーを続ける気合を見せましたが、その後も押し込まれる讃岐という絵図までは変えられません。

奈良のCKが2本続いた(2本目から鈴木がヘディングシュートもGK高橋拓がキャッチ)のち、一向に上向かない讃岐はポジションチェンジを敢行。
SB同士を入れ替え、臼井が左・奥田が左という配置になります。
一方奈良ベンチの采配は、28分に嫁阪→西田へと交代し、浅川が左WG・西田が右WGに。
さらに35分に2枚替え、可児・中島→山本・片岡と、IHをそっくり交代。

32分にまたも奈良のパスミスでショートカウンターになりかけた(エリア内で鳥飼が拾うも撃てず)所で、讃岐は対抗心を取り戻し。
奈良のビルドアップに対し、ボランチ以前の6人が敵陣で構える体勢を取って迎え撃ちます。
言わば「8対6」というビルドアップvsプレッシングのスタイルで、GKまで含める奈良に対し数的不利は否めないものの、その後は容易に運ばせず。
そして37分の讃岐の攻撃、右サイドで森勇がカットインと見せかけてスルーパスを出し、走り込んだ岩岸が奥からクロス。
これをニアサイドで鳥飼がヘディングシュートに持っていくと、対角線を突いたものの左ゴールポストを直撃と、際どいシーンが生まれます。

再び互角の様相となりつつある中、讃岐は38に川崎→武下へと交代。
奈良は40分に寺村・酒井→都並・森俊介へ交代(浅川がCFへ回る)と、共に最後のカードを切って最終局面に。
交代で入った武下は、ラフに左奥へと送られたボールに対し同じく交代で入った都並を追い越して拾う(42分)など、スピードを活かしそのカードの優位性を見せ付けんとします。

それでも判定の面で森勇・長谷川が警告を受ける等、やや苛立ちを目立たせていた讃岐。
アディショナルタイムにはその所為か再び奈良ペースへと移り、迎えた奈良のポゼッションによる攻撃。
ここも鈴木の持ち上がりからスタートし、既にそれを止める体力の無い讃岐を尻目に敵陣に入り込む奈良。
左→右への展開を経て、ワイドで持った西田が臼井の股抜きカットインを試みると、果たせずにエリア内へこぼれたボールがドラマを生み出します。
つまりは拾いにいった片岡が武下と交錯して倒れると、非常に際どいながらも主審は反則の笛を鳴らし、PKという結果が齎され。

まさに土壇場で得た勝ち越しのチャンスで、絶対に決めなければならないキック。
キッカーは4月月間MVPに輝いた、ゴールゲッターの浅川。
周囲の選手双方がペナルティアークを取り囲むように位置取り、満を持して放たれたゴール左へのシュート。
しかしGK高橋拓は読みきってセーブ、これを躊躇わずヘディングで詰めにいった浅川。
逆方向を襲ったボールに必死に飛び付いた高橋拓、バウンドを経てゴールに入らんとする直前で、片手で掻き出しに成功します。
まさに紙一重での凌ぎにチームメイトの祝福を受けるGK高橋拓、その一方でゴールラインを割ったかどうかで異議を唱える奈良サイド。

そのどさくさに紛れて、クリアでゴールラインを割ったにも拘らずゴールキックで再開と、齎された熱気が判定をも有耶無耶にしてしまい。
奈良にとっては不可解ぶりが二重三重にも重ねられた格好となり、尚も攻め続けましたが勝ち越し点は奪えずとなり。
1-1で引き分けとなり、奈良は手中にしていたはずの勝ち点3を失った格好で終わってしまいました。

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