王者:ノニト・ドネア vs 挑戦者:オマール・ナルバエス
試合結果:ドネア判定勝ち
●所見~ドネアの場合~
爪先立ちからの脚のバネが各パンチに伝わり、どれもスピードがあり、スナッピーでその攻撃力は
良い時のT・ノリスの様だ。
リングサイドのマイクが拾うパンチが当たる音は 「 ビシッ、ビシッ 」 とキレも感じさせる。
恐らく軽い構えから瞬間的に最大限のエネルギーで打ち、当たる瞬間、グッと拳を握るのだろう。
( 当たり前か .. )
特にショートストレートの4連打はどれが当たってもダメージを与えられそうだ。
それらが12R通して落ちないところも凄い。
但し、欠点ではないが左パンチの強さ故にそれに依存し、右の威力が小さくなっていると思われる。
パッキャオの様な軽いジャブからスバッと打ち込む引き腕の強いストレートは少なく、4連打も緩急
は余り無い。
相手は右ガードが良く、左フックを当て難いので右を当てる為の組立てがもっと必要だった様に思う。
ディフェンスは相手のパンチの伸びが無い事で少し助けられた。
余裕を見せる様なサイド、バックステップは相手の堅実なそれと比較して少し軽薄に見えた。
結果、完勝だが厳しい目で見れば ” 攻めあぐねた ” 、もっと厳しく見れば ” 攻め手がなかった ”
の印象も残った。
●所見~ナルバエスの場合~
両ガードを上下動させるのはリズムを取る、相手に打たせるタイミングを作る ( 誘う ) 、
自身の打つタイミングを計る、ブロッキングで痺れた腕をリラックスさせる等の効果がある。
中でも特筆はブロッキングで、よく見ると相手の左パンチには右で、右パンチには左で、強いパンチ
には両手で、と使い分けられている。
キャリアとセンスに裏付けされた技術なのだろう。
相手の右ボディストから上への左には腰を引いて交わしてスウェイのコンビを見せ、規則的ながらも
バックステップからサイドへのサークルで相手に射程を与えなかった。
ボクシングの採点方式は攻撃主体で作られているが、意図的なディフェンスには明確なポイントを
与えて良いと思う。
例えばP・ウィテカの様な選手が1Rの中で一発もパンチ出さず、相手のパンチを100発食わなかった
ならば、芸術点で10-9でも良いと思う。
しかし、実際は攻撃が少な過ぎ。
左ストを打つ際、ガード上げた右肩が左肩よりも前に出ていながら左ストが成立する所は凄いが、
ディフェンス意識が強すぎる。
12R唯一、ワイドオープンで走りながら左を連打したが試合をひっくり返すものでは無かった。