王者:テーパリット・ゴーキャットジム vs 挑戦者:亀田大毅
試合結果:テーパリット判定勝ち
●所見~テーパリットの場合~
戦 ( いくさ ) では情報も重要なファクターとなる。
陣営は近年のタイ人にしては珍しい程、挑戦者側の多くの情報を集めた様だ。
調印式でのグローブチェックのクレームはデンカオからアドバイスを受けていたのか。
( 管理人的には実際にその様な事があったとは思ってないが )
挑戦者のスタイルは左フックだけと言っていた事から数試合のビデオを見たのだろう。
また、 「 ラウンドガールが色目を使うかもしれないがあれはレディボーイだから気にするな。
パタヤのニューハーフ選手権で優勝したヤツだ 」 とかも言っていたかもしれない。
そして採点~判定への疑惑。
どう見ても王者優勢だがTVが言うセコンドの取材では 「 イーブンだ。残りのラウンドはすべて取れ 」
と指示が出ていたらしいが、それが本当ならば判定には相当にナーバスになっていた様だ。
コールを待つ表情からも良く判る。
スタイル、見た目共にタノムサクに似ている様な。
見た目は肌艶良くした様な感じだが。
特徴は感じられないが胸の辺りに置いた両グローブからストレートが良く出て、序盤は3、4連打が
的確にヒットした。
相手の左フックを警戒し、右ストの引きに気を付けていたので余り伸びなかったが強く打てば威力
があり、ディフェンスにおいても上体のムーブは少なかったが、相手のスタイルによってはもっと
動けるのではないだろうか。
この試合、唯一の誤算は相手の回復力。
陣営ともに3R辺りには中盤KOを意識したに違いない。
終盤は相手の驚異の回復力で相手のペースに巻き込まれながら戦っていた ( 劣勢ではないが ) 。
●所見~亀田の場合~
2Rの打たれ方を見てTKO負けも有りかと思った人は多いだろう。
相手の連打を全て食い、打たれた瞬間、後頭部がグッグッと鞭打ちの様な動きをしていたので
相当にダメージを負っただろう。
鼻血もダメージを強調した。
近年の世界戦であれ程の鼻血を出す選手は珍しい。
ルーキー時に鼻血が出易いのでレーザー治療を施したと言うエピソードがあるが体質的に出易い
のだろう。
流石のタフネスも遂に崩れ落ちるかと思いながら見たが何という回復力だろうか。
中盤には戻り、終盤には上がっていた。
トレーニングの成果よりも素質なのだろう。
同じ事をしている兄とは余りに違うから。
攻撃的特徴として相手の右ストをブロックした直後、左フックを強振するカウンターがあり、タイミング、
フォームは良く、威力もあり、この試合も多く出していたが研究され読まれていた。
左ボディフックは以前は仰け反り、支点を変えて打ったが現在は軸をブレさずに打つ様になっている。
攻防の効果をキャリアで学んだのだろう。
後半は突然の右ストが良く出て当たっていたが重心をやや後ろ脚に置いた構えからリーチが然程無い
ながら当たるのは瞬間的に重心をグッと前に移動し打つからで、
その重心移動のスピードは速くナチュラルだ。
下半身の強さとバランスの安定によるもので、これは大木を担いで微少なスクワットをするトレーニング
による成果と思われる。
あのトレーニングは理に適っていて脳の平行感覚、軸の安定、下半身のバランスに効果的の筈だ。
陸上競技ハンマー投げの室伏選手も実施していたらしい。
負けた要因はディフェンス。
ガードは位置は両グローブをテンプルあるい顎をカバーするもので、決定的急所を守る、攻撃への
繋ぎがし易い等の意図だろうがブロックのみでブロッキングではない。
相手のパンチに対応して動かさず、所謂置くだけ。
相手としてはフックを意識させアッパーを打てば当たり、多角のコンビを打てば数発は当たる事になる。
緊張感があり、良い試合だった。
恐らく、今後、最低でも2度は世界戦のリングに立つのだろうな。