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Scientific Boxing

国内、海外のボクシング界の状況や試合の観戦記などを絶対的主観で書き綴るブログ

考察~村田諒太のストレートの打ち方~

2020年07月26日 | BOXING
youtubeの村田諒太channelにUPされていた動画を見た。
「 足を蹴ってパンチに力を伝えるのは間違い 」
ズバッと言い切りましたねえ。
自他のフォーム、体のパ―ツを使って用語を駆使し詳細に、かつ事例を含め理詰めに
説明されていた。
「 足腰を回転させたうえでパンチを打っては間に合わない 」
「 手に仕事をさせれば足腰はついてくる 」
「 鳩尾から上の力で打つ 」
「 左フックも体打ちは間違い、腕を振る 」
ふ~む、なるほど。
口下手、支離滅裂、パッパラパーが多いこの業界では出色の能弁である。
さすがオリンピック金メダリスト、世界チャンピオン。 ( それは関係ないか )


本題について管理人の見解を申し上げる。

結論を先に言うと ” 基本ありき ”
いわゆる ” 基本が完全に身についた上で出来るもの ” である。
村田は言ってないが基本前提であり、説明されている打ち方はその応用である。
※動画の 【 応用編 】 を言うものではない。


■何故村田は本件を題材に上げたのか?

そのスタイルにおいてプロ初頭から 「 手打ちだ 」「 体が硬い 」「 腰が入ってない 」
とネガティブな評価を受けていた。
口撃に対しては反抗的になりがちな性格も手伝い評価に対する反論もあるのでは。
彼は持論の中でjustify(正当化)、excuse(言い訳)を巧みに使い分けている。
あるいは自身の影響力を利用して現代ボクシングでの有効性を発信しているのかもしれない。
現代はスピード重視で、より速く的確に当てなければならない。
その為には確かに一発毎に足を蹴って腰を回転させていてはヒットが間に合わない。
更にはその間に相手の速いパンチを食い、自身が腰を回転させている分カウンターと
なる懸念もある。
だったら手打ちでパシパシと打ち合った方が攻防共に有効である。
実際、現代はそんな試合が多い。

しかしボクシングは進化していると言われるが本当にそうだろうか?
シュガー・レイ・ロビンソン、モハメド・アリの時代と比較するならば進化していると
言えるだろうが
黄金の80年代のボクサーと比較したならば ”進化” よりも ”変化” の方が適切に思う。
勝利志向がより強くなった現代に合わせ有効をブラッシュUPし、
有効でない部分は切り捨てはしないがオプション化する。
結果、似た様なスタイルばかりとなり、記憶に残る試合がなく、判定が多くKOが少ない。
まさに変化だ。

足の蹴りと腰の回転で言うならば
ウェルター級のシュガー・レイ・レナードはあの高速回転連打の中で殆どのパンチにも
足腰が入っていた。
トーマス・ハーンズはアマでKO率10%以下だったがプロ転向後、足の蹴りの効果を習得した
ことで爆発的な右ストレートを体得した。
マービン・ハグラーは黒人にしては太ももが太く下半身が安定していて
vsムガビ6Rでは足腰の回転で連打スピード、各パンチの威力、的確性の融合を疲労した。
ロベルト・デュランのライト級時は体がバウンドする程に一発一発を体打ちしていた。

もしも上記ボクサーらをタイムスリップさせたならば
レナードはメイウェザーをスプリットで
ハーンズはカネロをあのチョッピングライトで
ハグラーはGGGを終盤棄権に
デュランはパックを血ダルマSTOPに

おっと話がそれたか。 なにか懐古的な...



■村田だからできる。

動画の村田の体つきを見るがいい。
ウェアを身に着けていても筋骨隆々なのがよく判る。
本ブログのロンドンオリンピック決勝の記事でも書いたが日本人離れした体格の利がある。
1986年あたりのボクシングマガジン、ジョー小泉氏連載の ”ボクシングアラカルト” で
日本人ボクサーの体格の不利の記事があった。
当時の日本王者と世界王者の体格を比較したもの。

バンタム :今里光男   vs ミゲル・ロラ
フェザー :杉谷 満   vs アズマー・ネルソン
ライト  :シャイアン山本vs エドウィン・ロサリオ
ウェルター:尾崎富士男  vs ロイド・ハニーガン

小泉氏の見解は
「 同じ体重でも上半身の筋肉量 ( =筋力 ) に違いがあり過ぎる。
  それがパワーの差となり、実力差となる 」

それから数十年経過し日本人の体型も変わりつつあるが欧米人のような上半身になる事はない。
人種的なフィジカルで異なるのだ。
残念ながらボクシングは日本人には不向きなのだな。
そんな中で村田のフィジカルは異質である。
恐らく計量前、アバラ骨がむき出しになったり胴回りがペラペラになったりしないだろう。
そして程よい筋力を維持したままリバウンドも出来るだろう。
そのフィジカルだからこそ鳩尾から上でパンチを打っても足腰が連動しパンチングパワー
も保てるのだ。
動画内で例に出していた野球のバッティングでも同様。
メジャー選手など足腰を利かせてない訳ではないだろうが
大袈裟な話、車椅子でBOXに置いてもホームラン打ってしまうモンスターもいるかもしれない。
逆に読売ジャイアンツの阿部捕手などあのガッチリした体格でもツイスト打法で足腰を先に
行かせている。
その阿部もメジャー級にはなれないだろう。
村田は資質、素質、才能、センスと天才肌なのだ。
これもロンドンの記事で言ったが他のメジャースポーツで大成できる人がマイナーな
ボクシングを選んでくれた訳だ。


■どの打ち方が正しいのか?

打ち方はその人の体型、体形、体質、スタイル、性格、希望で本意的に選択できるが
環境 (所属ジム、担当トレーナー )、また状況 (試合の相手) で不本意に変わる事もある。
打ち方の選択に迫られる時もある。
人生では後に選択の取り消しが出来るものもあるが
ボクシングでは選択を間違うと取り返しが困難となる。
だから本当によく考えて決める必要がある。

結論は 「 絶対的な正しい打ち方はない。 但し基本を疎かにしてはならない 」 である。

迷う時、判らない時は基本だけをやる。
何が基本であるかはどの指導書にも書いてあり、どのジムでも指導している。
ボクシングの基本はボクシングに対し理にかなっているのだ。
ピンチになった時、繰り返し練習して体に染みついた基本が自身を助けてくれる。
結局は基本ができたうえでの応用なのだ。
村田が動画で基本の重要性を言わなかった理由は判らないが
天才特有のmentalityなのか前述のjustifyかexcuseか。
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (リゴリゴ)
2020-07-28 01:27:35
お久し振りです。
再開してくれてとても嬉しいです。3年半は待ちましたね。
おかえりなさい。
また、観戦記を投稿して頂けるのでしょうか?
個人的には、以前していたようにお金を払ってでも見たいですかね。
もしよろしければ個人的にはリゴンドー、アクセス数を稼ぐ意味では井上など旬の話題になっているボクサーを分析して欲しいです。
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Unknown (おれ・ガメス)
2020-08-02 23:58:19
お久しぶりです。管理人さんは現代ボクシング肯定派と思っていたので意外です。確かに80年代の方が凄みを感じます。
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Unknown (相撲王子)
2020-09-09 17:29:08
なんとこのタイミングで
相変わらずの素晴らしい考察で
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Unknown (バタービーン)
2020-09-10 00:13:34
お久しぶりです。
本格的に再開するのかわかりませんが、また管理人様の考察が読めて非常に嬉しいです。
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