金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【デモクラシーの根幹】 ノブレスオブリュージュの魂は何処に!?

2022-03-16 07:32:58 | 金融マーケット

 フランスとイングランドで成し遂げられた「近代民主主義の成立」を支えたのは、自由と国民主権の理念に共鳴した、旧貴族層出身のエリートたちの存在でした。

 彼らは、代々恵まれた財産や土地を所有しており、それを背景に、高いレベルの教育を受けて、国への絶対的な忠誠心を持ち、自由と国民主権の理想が実現できるように、大衆の先頭に立って民意を促し、国政のリーダーになっていきました。そして、18世紀、19世紀、20世紀と、欧州の国家間で紛争や大きな戦争が発生すると、真っ先に手を挙げて、闘いの前線に立って奮戦ある人は国の英雄になったり、ある人は戦死者になったりした、崇高な意志を持った人々でした。

 各国の一般国民からすれば、自らの犠牲を顧みずに、自由と国民主権の為に、そして国民の為に闘う、彼らエリートたちを尊敬し信頼して、自らも同様に戦地に向かう覚悟を決めたり、あるいは、デモクラシーの素晴らしさを自分の子供たちに伝えていきました。そのプロセスを経て、近代民主主義が瞬く間に欧州各国へ広がり、またアメリカ大陸にも渡っていきました。

 このような、近代民主主義を支えた、エリートたちの犠牲的な精神と強靭な意志を、我々は「ノブレスオブリュージュ」と呼びます。

 

 しかし、この「ノブレスオブリュージュ」は、時間ととともに薄れてしまう傾向があるようです。古代ギリシャやローマの時代でも同じ傾向があって、当初は、勇敢で尊敬されるリーダーばかりが牽引する時代から、徐々に、市民を巧みに煽動する策士や、外見だけの薄っぺらな人間たちが指導者に選ばれる時代に移行するにつれて、「古代民主主義」は単なる「愚民主義」となって崩壊、共和制の時代を挟んで、結局は、独裁的な皇帝支配の時代が到来するのを許す結果となってしまいます。

 

 民主主義とは、単なる「多数決」による政治形態ではありません。選挙によって選ばれたリーダーたちが「ノブレスオブリュージュ」で有り続けることを前提とした国家ガバナンスであります。そのためには、自らを犠牲にすることも厭わない、政治リーダー候補を育成する仕組みこそが、民主主義の根幹とも言えます。

 現在は、これが崩壊しつつあると言わざるを得ません。ウクライナ紛争の発生と、それへの対応を見るにつけ、そう感じざるを得ません。ウクライナに対して、15年前にNATO参加を促した張本人は、アメリカ合衆国です。息子ブッシュ大統領の時です。今回の紛争の最大の責任者は、当然ながらロシアのプーチンですが、もう一方のアメリカにも、トリガーを引いた責任が確実にあります。

 ウクライナは、ロシアというリスクを承知の上で、アメリカの誘いに応じて、NATOへの参画に向かったはずアメリカにしても、ロシアというリスクを承知の上で、ウクライナをNATOへ誘ったはず

 結果として、そのリスクが顕在化して、ロシアのウクライナ侵攻が発生。ウクライナは、これに敢然と立ち向かう姿勢を維持しています。一方で、アメリカは、共和党から民主党へ政権が変わっているとはいえ、自らウクライナを誘った責任に対して、真っ向から向き合う姿勢を見せていません

 アメリカは、近代民主主義のリーダーであります。そのアメリカには「ノブレスオブリュージュの魂」が息づいているはず。以前にも申し上げましたが、自分はアメリカのデモクラシーを信じる信者の一人であります。でも、アメリカは動かない。

 

 デモクラシーはもう終わってしまうのか?

 それが問われている日々が続いています。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【ブースター接種完了】 3回... | トップ | 【GⅠレース 春の十番勝負!】... »
最新の画像もっと見る

金融マーケット」カテゴリの最新記事