午後は暇だったので、二週間前にも行った有樂町の東京國際フォーラム前で開催の大江戸骨董市を覗きに行く。
今回も外國人觀光客たちで大賑はひ、ニッポンは外貨で持ち堪えてゐる國であることがまざまざとしてゐて、まったく良いお勉強になる。
ひとつの見世で關心のあるものを見てゐると、先ほど見た時ここにあった皿は賣れてしまったのかと、主人に訊ねた人がゐた。
一度は通り過ぎて、やはり氣になり戻って来たやうだ。
主人がさうだと答へると、その人は「御縁がなかったネ……」と、連れと納得して、そのまま通って行った。
同じことは、私にも何度か經験がある。
物を手に入れると云ふことは、すなはち御縁を手に入れると云ふことであり、もし本當に御縁があれば、後日に思ひがけない場所で同じ物に出逢へることも、私は何度か經験してゐる。
その見世では、私はもふひとつ見たい物があったが、生憎とほかの客が先ほどからそれに關心を示してゐた。
こりゃ御縁がないネ……、と私はいま手にしてゐる分の代金を主人に拂ひ、それだけを手に入れて、サッと見世から離れた。