新米がやうやく出回るやうになったとは云へ、私がゐる界隈のスーパーではまだ見かけず、賣場に二袋だけ殘った5kgで¥3000のそれを前にして、なにやら悩んでいる高齢女性、スマホに向かって「ダメだ、無いよ」と話している高齢男性を見かけるばかりである。
新米が出回っても、専門家センセイ曰く「価格が高めなのはまだ續く」云々、ふと、 ははぁこの異様な米不足の狙ひはそこだったか、と思ふ。
諸物価の亂痴氣高騰が續くこの御時世、米だけは自給自足ゆゑ、原材料費高騰などを言ひ訳にした値上げとは無縁、と云はれてきた米である。
しかし物価高騰でひと儲けを企む何某(ナニモノ)かが、わざと精米の流通を制限して品薄状態にして価格を吊り上げ、國民に「致し方のなし」な雰囲氣を浸透させたところで九月の新米をそのまま賣ることにより、庶民に抵抗や反發を感じさせることなく、まんまと米価の値上げをも斷行しやうとしてゐるのではないか──
これだけ店頭から精米が消えても官が何ら對策(備蓄米の放出など)を行なはなかったわけも、一方でおにぎりなどの辨當やレトルト米は普通に賣られてゐる奇妙さも、それで納得がいくのである。
さう考へると、かうした惡知恵ばかり働く何某も、困りはすれど怒りもせぬ衆庶も、今頃カラクリに氣が付いた私も、みんなみんな、阿呆に見えてきてしまふ……。