港區南青山の根津美術館にて、企画展「物語る絵画」を觀る。
物語の挿繪であったものが、時代が進むにつれて掛け軸や屏風繪の題材へと發展し、やがて独立した美術群を確立する。
女のもとに忍んで行く姿の構図が多い源氏物語モノより、私は平家物語モノのはうが、謠曲などでよく接するぶん馴染みがある。
よって、原典である“物語”を知らないと逆に作品世界を深く味はへず、時節柄見るからにただガイドブックを見て何となく流れて来ただけの、ヨレた普段着姿の夷人行樂客どもなどでは、とてもわかるはずもない。
……が、一人だけ、小綺麗な身なりの外國人男性が、案内チラシにも出てゐる「浮舟図屏風」を、左手で綺麗にスケッチしてゐた。
(※「浮舟図屏風」の一部 案内チラシより)
ほかの部屋で展示物をうっかりスマホで撮らうとして連れに窘められてゐた若い夷人男などと違ひ、この男性だけは本物だと感心した。
美術館を出て六本木方面を望むと、空が薹風の影響でイヤな色を呈してゐた。
これからどうも、お盆のあたりが危ないらしい。
ヤレヤレ、また災害ばかりの令和夏。