迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

佛的正統派。

2023-07-19 19:50:00 | 浮世見聞記


澁谷區神宮前の太田記念美術館で、「ポール・ジャクレー フランスが挑んだ新版画」展を、前期と後期を通して觀る。


1896年に佛國パリに生まれ、三歳で来日して以来昭和三十五年(1960年)に六十四歳で亡くなるまで日本で生活したポール・ジャクレーは、幼少期に自腹で浮世繪を購入して精巧に模冩する才を發揮し、當時の佛國大使からも受注するほどの技(うで)を見せ、少年期には月岡芳年の孫弟子から本格的に日本画を學び、昭和九年(1934年)には折からの“新版画運動”の氣流に乗って、意欲的な作品を數々生み出していく──

歌川國芳の系譜につながる藝術家らしく、日本傳統の浮世繪が新しい時代の空氣に触れて、遠近濃淡一つ一つの明確な色遣ひによって華麗に蘇生し、飛翔する様をじっくり樂しむ。


(※案内チラシより)

居住する日本のみならず、朝鮮や中國、アジア諸國へも精力的に赴き、そこに生きる人々のその瞬間を、生き生きと版画に冩し取る。


(※同)

ポール・ジャクレーの“新浮世繪”の特徴とも云へる、百回以上も刷り直して表現される繊細かつ華麗な色彩美は、特に清朝王族を題材にした作品で大いに發揮されてゐると、私には感じられる。


そして朝鮮國の庶民女性を捉へた作品では、チョゴリの裾から乳房がはみ出してゐる様も、はっきりと冩し取られてゐる。

李王朝時代の古冩真にも残されてゐるその風俗は、現代の御伽噺な韓流時代劇では決して取り上げない事實であり、さうした意味からも、ポール・ジャクレーの新版画に見る美麗は、決して徒らな美化ではないと信用できるのである。










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