確かに骨折であることを確認した先生は鎮痛剤と抗生物質の注射をしてから、折れた箇所が動かないように簡易ギブスをしてくれた。
これは、患部にまいたコットンの上に糊のついたメッシュ地を巻いて包帯をしたものなのでカチカチではなく、たよりなげな物だった。
「はずれても巻き直したりしないでください。血流を止めると危険ですから」との言葉を聞いて、家で勝手に添え木などしなくて良かった、と思った。(そんな余裕もなかったけど)
「明日の朝、レントゲンを撮ってから治療法を検討しましょう」と言われ、帰ってからの長い夜を覚悟した。
落ち込んでいる私に先生が「この子達は、自分が細くて長い足を持っているっていう自覚がないもんだから、とんでもない無茶するんだよ、しょうがないよ。」と慰めてくれるものだから、それまで堪えていたのにとうとう顔が『森進一』になってしまった。
リビングに座布団と毛布であんずの寝床をつくり、横に自分用の布団を敷いた。
あんずはすぐに寝たようだったが、2時間後くらいから「んん~ん~~ん~~、クゥ~ン、んん~ん~~ん~~・・・・」と小さい声だが、子供が「え~ん、え~ん」と泣いてるような感じの声が聞こえてくる。
「あんずどうしたん?痛くなったん?」と、声をかけるとしばらく静かになる。
夜中にそれが何度かと、「きゃん!」という声で目を開けると3本足で震えながら立っていたりもした。
ほとんど眠れずに朝を迎えたが、診察開始時間の9時までがまた長く感じられた。
手術時の麻酔に備えて、レントゲンでは鎮静剤を使いたくないのだが、足を伸ばさないといけないので、あんずが痛がって暴れたりするならやむを得ず打ちます、との説明を受けた。
あんずはマズルから目にかけて覆うように皮製のマスクをされ、目隠し状態でレントゲン室に連れて行かれた。
今思い出すと、それは囚人のようで『あ、兄きぃ、ちょっとの辛抱ですぜ!』と声をかけたいようなシーンだった。
そして兄きは立派にがんばり、鎮静剤ナシでオツトメを終えた。
写真が出来上がるまであんずは点滴を打ってもらい、私は手術の選択肢の簡単な説明を聞いていた。
①固定法(ギブスなどで固定するのみ)
②髄内ピン固定法(骨髄腔内に針金状のものをひじから挿入して固定する)
③プレート法(折れた箇所にプレートをあててネジで止めて骨を固定する)
イタグレちゃんの骨折日記では、プレート法が多いと思う。
両足骨折の子がピン固定法で治した日記も読んだ事があるがその1件のみだった。
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<今日のあんず>
「かじります」