映画『1917命をかけた伝令』撮影秘話
ワンカット映画というのは、映画の冒頭からラスト・シーンまで、映像が途切れることなく続いていく映画をいいます。まるで舞台劇のように最初から最後までシーンが1本で繋がっているわけです。
もちろん、本当にそういう撮影を行っているわけではありません。たとえば登場人物が一瞬暗がりの中に入って画面が真っ暗になった瞬間とか、やはり登場人物が壁などの遮蔽物に一瞬隠れたところを狙ってカットをかけ、それを編集で繋いで、いかにもずっと撮り続けているように見せるわけです。
そのためには、そうとう入念なリハーサルが必要です。カメラと俳優の動き、というか「気持ち」が完全に同期していなければ良い画にならない。
カメラの動きは、観客に煩わしさを感じさせないためにも、自然に動き尚且つ完璧に役者の動き、気持ちを捉えなければならないし、シーンの繋ぎ目を感じさせないために、カメラの位置や動くスピードも完全に一致させなければならない。
まあ、イマドキはコンピュータ制御で、カメラの動きを調整できるので、その点は昔よりは容易です。その昔アルフレッド・ヒッチコック監督が撮った『ロープ』という映画が、やはりワン・カット映画だったのですが、これはどこで繋いでいるかがハッキリわかるものでしたし、カメラの動きに何か煩わしさを感じて、妙に疲れる映画でした。実験映画としては面白かったけど、あまり何度も観たい映画だとは思えなかった。
その点、この作品は完璧です。
カメラの動きがまったく気にならず、むしろその存在を忘れさせ、まるで自分自身がそこにいるかのような臨場感を味わえる。兵隊たちの息遣い、疲労、恐怖が、まるで自分のことのように感じられる。
これは劇場で観るべき映画でした。劇場の大スクリーンで観て、体験すべき映画です。私はそれができなかった。
不覚!
時は1917年、第一次世界大戦の真っただ中。前線にいる味方の部隊にある命令を伝えるため、若い二人の兵士が伝令となって戦場を横切っていく。のどかな平原に横たわる兵士たちの遺体。激しく降り注ぐ砲弾の雨を搔い潜り、墜落した戦闘機が突っ込んでくるわ突然狙撃されるわ、突然敵兵に囲まれるわ、主人公はそんな危機また危機を潜り抜け、走る!
走る!
走る!
あまり細かいことを語るべきではない映画です。これは是非観ていただきたい。観て体感していただきたい。
映画『1917命をかけた伝令』
忘れられない映画の1本。