「さあ死んだ・・・
こんなざまなんだぞ。これでもよかったというのか?」夢のなかの男は厳しく問い詰めてきました。
私はもう初めに持っていた彼へのなんとなく自分なんじゃないかと言う気持ちも漠然とした親愛感も消え失せてしまいました。
こんなひどいことを言ったりみせたりするのは悪い奴に違いないと思うようになっていました。だったら絶対負けるわけにはいかない。
だいたい、自分たちの幸福を守るために人を痛い目に合わせるという考えなのが許せませんでした。私はついに言いました。
「・・・い、いいよ 」
「あんなのするぐらいならそれでいいよ。たくさんの人をあんな目にあわせるぐらいだったら・・・自分たちが不幸になっても」
「お前というやつは・・・」彼はため息をつきました。
「おまえがちゃんとやらないとすべてが終わるんだぞ」
「誰もかも、何もかもだ!」
さっき見たものこそがそういうものにみえていた私は混乱しました。
「だってさっきのだって何かひどいことに・・・」
「あれをやることはいいことなんだ。」
「そのあとでみんな助かることになるんだから。ほら。」
かれはまた、スクリーンでビジョンをみせました。
何か美しく平和になった世界のビジョンが映し出されました。でも私はもうめちゃくちゃに怒っていました。どっちにしたってともかく一度はさんざんにするんじゃないか、駄目だ、そんなのと思いました。
「ひどいことしといて何言ってんだ! 後から助けたって駄目だ! 初めからしなきゃいいじゃないか!」
「ほかにどうしようもないこともあるんだよ・・・」
「だったら、しない!」
「だいたいそんなの信じない。そんなことあるもんか! 絶対しないから」
「しかたないやつだ」
「選択の時までよく考えて決めなさい」
「絶対しないから」
「考えるんだ」
「いやだ・・・絶対に・・・」
「・・・・・」彼の困ったような苦笑いしている顔をざまあ見ろ、悪い奴め言ってやったぞと思ってみつめながら
「しないからね・・・絶対に!、絶対に!」と叫び続けるうちに私は目が覚めました。
無事に手術が終わっていました。
「なかなか目が覚めなかったね。もう目が覚めないのかと思ったよ」母が心配して言いました。彼女もいつもひどい心配性の人でした。「手術の途中に目が覚めてまた、麻酔されたんだ・・・それでね・・・」麻酔の眠りから覚めた私は何だかとても怖くなっていました。とんでもない部分は映像でみただけだったし、ある筈がないと思いましたが、辛い方のだけは実感があってありそうに思えてとても心配になったのです。私は母に少し夢の話しをしましたが、当然、おかしな夢をみただけよと言われておわりでした。
そのあとも気にして言っては何度もただの夢だと言われるうちに自分も本当にやっぱり変な夢をみただけなんだと思うようになり、すべてを忘れることにしました。ただ、あとでこう考えました。どうせ自分はつまらないダメな人間だからきっとうまく人を幸せにもできないに違いない。だからたとえそれが無意味な夢に過ぎないとしてもともかく絶対夢のなかで決めたように結婚はしないことにしておこうと・・・
そして今になって分かるのです。
あの時に見せられた最初のイメージが姉と結婚したときの写真だったと! 見た夢そのままの椅子に腰掛けた写真が、今、あるのです・・・そしていまの自分の姿を鏡で見ると、やはりあの時の男が自分なのだとも・・・。
頭に浮かぶのは木内氏の体験です。臨死体験による体外離脱というやつです。すごく深い麻酔による眠りは死と変わらないような脳の状況を作るといいます。それが自分を体脱状態にしたと・・・。
でも、あそこであった自分はいったいどういうことなのか・・・? ともかく単なる悪夢なら問題はなかったのですが恐ろしいことに、彼の見せた状況は次々と現実になっていってるのです。
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