トンボのおもちゃ

 今までの無為を反省して、この頃はみゆちゃんふくちゃんとわりとよく遊んでいるのだが、うちにある猫のおもちゃというと、外で拾ってきたカラスの羽がもうだいぶぼろぼろになったのや、柄の折れた猫じゃらし、パーカから抜き取った紐(パーカのフードについている紐はいつも取ってしまう。使ったためしがないし、かがんだときに紐の先端が食べ物のお皿や絵の具、その他いろいろなものに浸かってしまいそうで邪魔だからである。余談だが先日買った子供用のパーカには紐がついていなかったので、製造側にも紐の不必要さがわかったのかしらと思っていたが、パーカの紐で首が絞まるなどの事故がときどき起こるため〔これをいうなら、フードも危ないらしい〕業界団体では子供服に関しては紐をつけないことを自主指針としているらしい。)などろくなものがないので、新しいものを買うことにした。猫の買い物は楽しいので、わくわくしながらネットのショッピングサイトで猫のおもちゃを探し、「人気商品」だというトンボ型のおもちゃを見つけて注文した。
 お正月に届いたので、みゆちゃんふくちゃんへのお年玉にちょうどいいと思いながら開封した。くねくねとしなるワイヤーの先に、トンボのような形のおもちゃがついている。フィルムで出来た羽は玉虫色に光り、カシャカシャと猫が好みそうな音を立てる。
 さっそく、猫タワーの上にいたふたりの鼻先へ、ひらひらとワイヤーを操ってトンボを飛ばしてみた。が、無反応。むしろ、迷惑そうに顔を背けられ、私は意気消沈した。ふくちゃんにいたっては、新しいおもちゃを怖がって逃げ腰である。そのうちみゆちゃんが、トンボではなく持ち手の棒の先を片手で引き寄せてかじりだしたが、それじゃあトンボの意味がない、家にある鉛筆とかペンと同じではないか。
 商品のレビューでは、ほとんどの人が飼い猫が喜んだ、大興奮だと書いていたけれど、うちははずれだったらしい。ペット会社の人々が額をつき合わせてああでもないこうでもないとアイデアを出し合って試行錯誤を繰り返し、猫の狩猟本能をくすぐるおもちゃを作るのだろうが、結局はただの紐とかとかビニタイとか、猫が自分で選んだゴミみたいなおもちゃには勝てないのか。しかも注文するときにどう間違えたのか、同じおもちゃが二つも届いてしまったので、ひとつは、あんまり遊ばないかもしれないけどと断って、実家のキキとハルのお年玉にあげた。
 が、このトンボのおもちゃは最初の反応からは予想外に、どういうことかその後時間が経ってから大ヒットした。みゆちゃんが遊ぶ気満々のときに、みゆちゃんの好きなアイロンのあて布(みゆちゃんは、この半透明のメッシュの布の下におもちゃを隠したりちらりと見せたりする遊びが大好きで、遠くから狙いを定めてダッシュしてくると、布の上からおもちゃに飛びつき、その勢いで布ごと床の上を滑るのを楽しんでいる)と組み合わせて誘ってみると、ここ最近あまり見ることがなかったほどの大はしゃぎである。それを見てふくちゃんも、新しいおもちゃが「怖いもの」ではなく「楽しいもの」であると理解したらしい(彼女は本当に怖がりである)、みゆちゃんよりもさらにハッスルしてトンボで遊ぶようになった。今でも、トンボで遊ぼう、とニャーニャー催促してくるほどである。(要するに、気難しいみゆちゃんは最初トンボを見せたときに遊ぶ気分ではなかっただけ、怖がりのふくちゃんは楽しいおもちゃであると理解していなかっただけのことのようである。)
 余分のトンボをあげた実家の方はどうだったかというと、こちらもキキとハルが大興奮したらしく、新たに二つ、マリちゃんと外猫用に追加注文した、と父からメールが届いた。
 まったく、大ヒット商品である。みゆちゃんが子猫のように遊んでくれたこと、ふくちゃんが遊ぼうと積極的に催促してくれることがとても嬉しい。このおもちゃを開発された方々、スミマセン、上に書いた「ペット会社うんぬん」という一文は完全に撤回して、このすばらしい仕事に敬意を表します。



別に紹介料を稼ごうというわけではありませんが、
そのトンボのおもちゃとはこちら↓です…参考までに


ペッツルート カシャカシャびょんびょん
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