猫親爺の禁煙

 実家に遊びに行ったときのこと、風呂から上がってきた父が、「ちょっと体重が増えたなあ、タバコやめたからかなあ」と言った。
 父が若い頃は、喫煙や受動喫煙が健康に及ぼす害についての知識が今ほど人々のあいだに浸透していなかったから、喫煙人口はずっと多かったし(昭和41年のピーク時には成人男性の8割以上が喫煙していた)、父も煙草を吸っていた。たとえば昔のドラえもんのアニメを見ると、パパがのび太のいる部屋で平気で煙草をぷかぷかふかしたり、パパの会社のデスクの上には吸殻が山盛りになった灰皿があったりする。今のドラえもんでは、たぶんそんなシーンはないだろう。
 それが、だんだん喫煙の危険性が知られるようになり、健康への関心が高まるに連れて、喫煙人口は減少し、1988年にはWHOが「世界禁煙デー」を設定するなど、喫煙者の肩身は狭くなっていった。私の父も同じで、まず、ベランダで小さな火を灯すホタル族になり、その後、健康には代えられないと禁煙した。
 が、またここ数年、目が覚めないからといって、タール1ミリグラムの煙草を一日1、2本だけ、一度禁煙した手前きまりが悪いのか、まるで高校生みたいにこそこそと庭で吸っていたのだが、今回、その一日1本も絶ったという。
 理由を聞いたら、いま家には育ち盛りの0歳や1歳の猫たちがいるからということであった。
 ちなみに、数十年前私や弟が生まれたとき、父は禁煙していない。
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