行列のできる猫用お水

 うちには、猫たちの飲み水として用意してある水が二箇所あって、ひとつはキャットタワーの一番下に置いてある小さなバケツ、いまひとつはキッチンカウンターの上のコップである。
 バケツの水はキャットフードのお皿のそばにあって、最初から猫が水を飲むために置いているものだけれど、カウンターの上のコップは、もともと猫の飲み水として用意していたのではない。半年くらい前に、手ごろな大きさの花瓶がなかったのでコップに花を挿していたところ、そこから好んで水を飲むようになったので、花が枯れてしまったあとも猫用コップとして常設されることになったのである。
 みゆちゃん、ふくちゃんのふたりともコップの水ばかりを好んで飲んで、バケツのほうはほとんど飲まなくなった。ときどきふたりが水を飲む時間が重なると、狭いカウンターの上に前後に並んで、順番に飲んだ(もっとも、みゆちゃんはお行儀よく順番を守るが、ふくちゃんはときどき無理矢理割り込んで順番抜かしをする)。バケツの水なら並ばなくても飲めるのに、見向きもしない。行列に並びたがるのは人も猫も同じなのかもしれない。
 ところが、それほど気に入っていたはずのコップの水なのに、ここ最近、ぱったりと飲まなくなった。ふたりともである。別に何かを変えたわけでもないけれど、人にはわからない、猫にとっての何か変化があったのかしら。少し前に、ふくちゃんがバケツの水を飲んでいるのを見て珍しいなと思ったような記憶があるから、まずふくちゃんがバケツに乗り換えて、それをみゆちゃんが見習ったのかもしれない。でも理由はわからない。
 どういう気まぐれか知らないけれど、設置してから半年ばかりずっと飲み続けていたコップをやめて、いまはどちらもバケツの水を飲んでいる。カウンターの上から水を飲む猫の姿が消えて、ただ水の入ったコップだけがぽつんと置いてあるのがちょっとさびしい。
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