仮設退去、遠のく見守り
熊本地震 884世帯「支援受けていない」
仮設退去、遠のく見守り 熊本地震 884世帯「支援受けていない」
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熊本県は10日、熊本地震の応急仮設住宅を退去した1万6727世帯のうち、既存の福祉サービスを受けておらず、支援が必要な被災者
が昨年11月末時点で少なくとも884世帯あるとの調査結果を明らかにした。被災者の見守りは「仮設を出るまで」が原則だが、東日本
大震災の被災地では自宅再建後の孤独死が問題になっており、県が要支援者の実態把握を進めていた。今後も3カ月置きに調査する方
針。
調査は、仮設入居者の訪問・生活支援を担う「地域支え合いセンター」がある県内18市町村が、昨年8月末までに退去した世帯を対
象に実施。(1)健康に問題があるが医療機関を受診していない人(2)親族や近所との付き合いがない独居の高齢者や障害者(3)生
活に困窮しているが生活保護を利用していない?などに該当する884世帯について「仮設退去後に必要な支援を受けていない」と判断
した。
市町村別の世帯数は、益城町250▽宇城市83▽嘉島町49▽合志市31▽阿蘇市20▽美里町19▽御船町12▽大津町9▽宇土市5▽氷川町3▽
菊陽町1?で八代市と菊池市はゼロ。熊本市や南阿蘇村など5市町村は「非公表」としている。
これまで、仮設退去後は「生活再建が完了した」とみなされ、自治体によって対応が異なるため「支援漏れ」もあった。調査結果を
受け、今後はセンターが退去者の見守り活動をしたり、既存の医療・福祉制度につなげたりする。ただ、3月末でセンターを閉める八
代市、菊池市、美里町、菊陽町、氷川町の5市町は、県と相談しながら支援のあり方を模索中という。
仮設入居者5000人下回る
熊本県は10日、2016年4月の熊本地震により仮設住宅などで仮住まいをする被災者が1月末時点で1863世帯4393人となり、5千人を
切ったと発表した。住まい再建の見通しが立っていない被災者は4世帯おり、県は19年度内に仮設からの転居先にめどをつけたいとし
ている。
仮設入居者の内訳は、みなし仮設2491人(前月比529人減)、仮設団地1839人(同210人減)、公営住宅等63人(同5人減)。このう
ち県外のみなし仮設や公営住宅で暮らす被災者は先月と同じ8人だった。 (壇知里)
重なる転居に高齢者負担重く 体調異変、車いす生活に
熊本地震で熊本県益城町の自宅が全壊した平田栄子さん(77)は、みなし仮設住宅を退去後、体調を崩した。地震前は趣味の手芸の
ために電動自転車で遠出するほど行動的だったが、今は高齢者施設で車いす生活を送る。左手はほとんど曲がらなくなり、体重は1年
で20キロ近く減少。「ストレスがたまったのかしら」と昨年4月に起きた体の異変を振り返る。
約30年前に夫を亡くした平田さん。被災後、同県八代市のみなし仮設住宅に入居。2018年春、次男が購入した同県芦北町の一戸建て
に移り住んだ。見知らぬ土地での新生活は、近所付き合いで嫌な思いはなかったが、知り合いもおらず心細さは増した。衣料品店も遠
く、手芸の時間も減った。
昨年4月中旬、突然体が動かなくなった。助けを呼べぬまま、倒れて3日目。首に下げていた携帯電話が何度も鳴った。仮設入居時か
ら見守ってくれていた益城町の地域支え合いセンター支援員からだった。必死に電話を取り「動けないんです」と伝えた。救急車が駆
け付け、入院。医師から「発見があと2日遅かったら亡くなっていましたよ」と言われたという。
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東日本大震災の被災地では、災害公営住宅での孤独死や、度重なる転居のストレスで体調を崩す「リロケーションダメージ」が問題
化してきた。
国も仮設退去後の支援強化に動きだした。昨年4月には、西日本豪雨など相次ぐ大災害を受け、「被災者見守り・相談支援事業」を
スタート。仮設入居者に限定せず、地域支え合いセンターが訪問・見守り支援をできるようにした。
平田さんは5カ月間の入院後、施設に入所した。外泊できる状態になく、一度も自宅に帰っていない。「いずれは戻りたいけど…先
のことは分からない」
一本の電話で平田さんを救った支援員は強調する。「生活が落ち着くまでは見守りが必要だ。仮設を退去しても、すぐに既存の制度
につなげるほど簡単ではない」 (壇知里)