兵庫県借地借家人組合本部

借地・借家・マンションのトラブルなんでも相談

突然借地から立ち退き迫られる住民…無残に切断された長屋に困惑

2018-03-06 | 日記

                    突然借地から立ち退き迫られる住民…

                         無残に切断された長屋に困惑  

突然借地から立ち退き迫られる住民…無残に切断された長屋に困惑
http://www.mbs.jp/voice/special/archive/20180305/

大阪市生野区の古い住宅が密集しているエリアで突如、立退き問題が勃発し、周辺の住民によると、約180もの世帯が対象になったといいます。長年住んだ家から離れたくない、不安や怒りを抱えながら暮らす住民たちを取材しました。

購入か立ち退きか、迫られる選択

大阪市生野区で夫婦で居酒屋を営む岩男進さん(61)は今から30年前に近所に住む地主から土地を借り受け、念願だった一軒家を購入しました。ところがおととし、突然、地主から土地を買ったという不動産業者の社員が訪ねてきたといいます。
「『おたくの土地をうちが買った』と。『つきましてはこれからうちが地主や』と。ほんまに寝耳に水ですから、ちょっと混乱しましたよね」(岩男進さん)

岩男さんは地主と賃貸契約を結び、毎月きちんと土地の賃料を収めていました。ところが、おととし11月、地主から大阪市内に本社を置く不動産業者が土地を買い取ったのです。岩男さんは不動産業者から土地を購入するか立ち退くか、どちらかを選ぶよう迫られたといいます。

【おととし12月の音声データ】
(業者の社員)「いま皆さんからいただいてる地代で貸し続けていくつもりはないですよ」
(岩男さん)「貸し続けるつもりはないとはどういうことですか?」
(業者の社員)「なので引っ越していただくか、うちが建物を買わせていただくか。逆に土地を買っていただけないかというご提案で
すね」

提示された土地の価格は約40年分の賃料に相当する額だったため、簡単に買うことはできません。かといって、慣れ親しんだ家や店を手放すこともできないといいます。

「お金がなかったので手作りで作った店なので。やっぱり自分の持ち物やからできた。一度も地代を延滞したこともありませんし、向こう(元地主)に言われるとおりに更新料も払いましたし。いままでどおり地代も払うし、今までどおり住み続けたい」(岩男進さ
ん)

困り果てる住民たち

このあたりでは、岩男さんと同じ様な悩みを抱えている人が大勢います。実はこの一帯、約4000坪の土地や建物は1人の大地主が所有していました。ところがほとんどを不動産業者に売ってしまったため、住民らによると、約180世帯が立ち退きなどを迫られたというのです。

付近は昔ながらの長屋が立ち並ぶ住宅密集地。ところが上空から見てみると…住宅が密集する中、ところどころが更地になっているのがわかります。先月、近所の集会所には急な立ち退きを迫られ、困り果てている住民たちの姿がありました。

(住民)「(業者は)どないしても(土地を)買わへんのやったら、出て行ってくれ、うちに売ってくれと言うてくる。ここで死のう
と思ってるんやと言って、あんたらわからんやろって言った」
(住民)「私は年金暮らしやし、預貯金なんかもあらへんし」
(住民)「あんたらこんな年になってから追い出そうとしてって言った。私も今まで何にも言わなかったけど」
不安そうな顔で住民の話に耳を傾ける佐々木節子さん(63)。佐々木さんの住む家は、とんでもないことになっていました。

長屋切り取られ、壁はブルーシート

佐々木さんは借家の長屋に夫と長男と3人で暮らしていて、70年以上前からきちんと家賃を支払っているにもかかわらず、住んでいた長屋が切り取られてしまったのです。切断された壁はブルーシートで覆われただけの状態です。

もともとここは4軒が連なった長屋でしたが、不動産業者に所有権が移った途端、予告もなく工事が始まったといいます。

「ドスンって下から地震が来る感じ。壁一枚やぞって思って。うちの家が建っててくれるんかなと、最後まで。ぺしゃんといけへんかなって」(佐々木節子さん)
恐怖を感じた佐々木さんは不動産業者の社員に工事を止めてほしいと伝えました。ところが…

【去年9月の音声より】
(佐々木さん)「壁が落ちてきている。気をつけて」
(業者の社員)「何をすんの?」
(佐々木さんの知人)「壁にひび入ったりしてるやん」
(業者の社員)「いや、それはうちも建物の所有者やんか。振動ってあるやん、振動ってどれだけの振動やの?なんか物落ちる?」
(佐々木さん)「家おってみ?」
(業者の社員)「おれらここにずっとおったよ」
(佐々木さん)「外と中と全然違う」
(業者の社員)「はっきり言って何の意固地が知らんけどさ、いずれにしても解体せなあかん。このままほったらかすの?」

結局、空き家だった3軒がとり壊され、佐々木さんの家だけが残りました。
その後、家の中ではさまざまな問題が出てきています。
「壁の隙間が…外丸見えですねん。切り離しの作業が終わったとたんに毎日隙間が増えてきて、最終的には壁が外れそうになっている」
Q.寒かったりしない?

「寒いです。もうブルシート1枚で外ですからね」
佐々木さんの家を診断した一級建築士は、強い地震が起きると倒壊する可能性が高いと指摘しています。

「住み続ける権利」知らずに…

土地や建物の貸し借りで弱い立場になりがちな借り手の権利を守るため、借地借家法では「正当な理由がなければ住民を立ち退かせることはできない」と定められています。

つまり、佐々木さんには現状のまま借家に住み続ける権利が保証されているのですが、このような権利があることを知らなかった佐々木さんは、46万円の立ち退き料をもらう代わりに契約書にサインをしてしまいました。

「この端から向こうの端まで全部出ると。私のところだけ頑張っても仕方がないと。1時間以上居座って『もう帰らへん』って言いますねん。ハンコを押してもらうまで」(佐々木節子さん)

佐々木さんは今、弁護士に相談して立ち退きの撤回を求めています。立ち退き問題に詳しい弁護士は…
「本来であれば事業者自身が住んでいる人の権利や利益に配慮してきちんと説明、告知するべきこと、そういうものをすっとばして、とにかく自分がもっと儲かるような建物を建てたいとか、高度利用したいという事業者側の都合で住んでいる人の権利が侵害されている状況がある」(増田尚弁護士)

一方、新たな地主となった不動産業者は取材に対し、「住民に無理強いはしていない」と話しています。

「住民の7割とは円満に解決している。佐々木さんの家については、もともと老朽化していた。今の安い家賃をいただきながら修復できるレベルではない。オーナー責任として転居先を提案し、転居にかかる費用をお出しするので、ご協力をお願いしている状況である」(不動産業者)

古い住宅街で突如持ち上がった「立ち退き」問題。住民たちの不安が解消される日は訪れるのでしょうか?