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"無届介護ハウス" 急増

2015-01-20 | 日記
 
 
             ”無届介護ハウス” 急増 
 

“無届け介護ハウス”急増
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2015_0119.html

介護が必要な高齢者が増え続けるなか、法律で義務づけられた届け出を行わないまま、空き家やマンションなどで高齢者に介護サービスを提供する有料老人ホーム、“無届け介護ハウス”が急増していることがNHKの取材で分かりました。

行政の目が届かず、地域にも閉ざされていると虐待や事故の発見が遅れるなどのリスクも指摘されています。
超高齢社会を迎えるなか、高齢者のついの住みかをどう確保していけばいいのか。

取材班の横浜放送局・角田舞記者と首都圏放送センター・辻英志朗記者が解説します。

民家に多くの高齢者が〓無届け介護ハウスの実態〓

今後、高齢者の数が全国で最も増える東京。
普通の一軒家に多くの高齢者が暮らしているという情報を得て取材を始めました。

東京・江戸川区の住宅街にある2階建ての民家の室内にはベッドが所狭しと並べられ、70代から90代までの男女7人が生活していました。

中には、寝たきり状態の人もいて、ヘルパーが常駐し、介護サービスや食事を提供します。
1か月当たりの利用料金は15万円ほどで、空き家を利用しているため、一般の有料老人ホームと比べると格安だということです。

8畳の相部屋で生活する86歳の女性は、自宅で1人暮らしをしていましたが、体調を崩して入院したのをきっかけに1人暮らしが難しくなりました。

女性は、「ほかに行くところがなかったから入居した。ここがいちばんいい」と話していました。
1人暮らしや所得が低いため行き場をなくした高齢者を受け入れているこの施設ですが、実は法律で義務づけられた届け出を行政に行っていない有料老人ホーム、“無届け介護ハウス”なのです。

本来、高齢者を入居させて介護などのサービスを提供していれば、有料老人ホームとして都道府県に届け出ることが法律で義務づけられ、国のガイドラインでは、個室の整備や広さに応じた防火設備の設置が求められています。

この施設では、ガイドラインで示している個室の整備や廊下幅などの基準を満たせないため届け出を行っていません。

低料金で高齢者を受け入れるにはコストを抑える必要があるため、基準を満たすための改修工事には踏み切れないといいます。

施設を運営するNPO法人の宇井米司理事長は、「私たちは行き場のない高齢者を受け入れている。基準を満たすことも難しく、規制をされると入居しているお年寄りたちも困ってしまう」と話していました。

急増する“無届け介護ハウス”

届け出を行っていない施設を巡っては、6年前に群馬県渋川市で10人が死亡した火災をきっかけに、国も都道府県を通じて実態調査を進めています。

その数は、おととし10月時点で把握しているだけで911と、前の年の2.3倍になっています。

しかし、民家やマンションを利用している施設も多いうえ、住民などからの情報提供以外に自治体が把握する方法はなく、実際はさらに多くの施設が存在する可能性があります。

そこで、NHKでは、今後、全国で最も高齢者の数が増加する東京で、地域包括支援センターにアンケート調査を行うなどして独自に調べました。

その結果、有料老人ホームに当たるのに届け出をしていない施設は、都内に少なくとも86か所あり、東京都が把握している数の実に3.6倍に上ることが分かりました。

多くは空き家になっている一軒家や、マンションの空室、使われなくなった社員寮などを利用した“無届け介護ハウス”で、家賃を低額に抑える一方で、介護サービスを提供することで介護報酬を得ていました。

なぜ、急速に”無届け介護ハウス”が広がっているのか。
その背景を探るため、患者を無届け施設に紹介したことがあるという病院を取材しました。

受け皿不足が背景に〓退院後の行き場所がない〓

東京・調布市の多摩川病院では、救急病院などから患者を受け入れるなどして地域の医療を支えています。

入院患者は160人余り。
早く退院できるようリハビリに力を入れています。

ところが、最近、回復しても自宅に戻るのが難しく、退院できない高齢者が相次いでいるといいます。

体調を崩して去年8月から入院している76歳の男性は、10月には退院できる状態にまで回復しましたが、1人暮らしで重い認知症のため自宅に戻れないままです。

患者の退院を支援する部署では、スタッフが地域の介護施設などに毎日電話をかけ、男性のように退院できる状態になったおよそ50人の受け入れを依頼していますが、施設によっては、数百人が順番を待っているところもあり、退院先はなかなか見つからないといいます。

この日電話した施設も200人が入所を待っている状況でした。
厚生労働省によりますと、特別養護老人ホームへの入所を希望している高齢者は全国で52万人余りに上り、希望してもすぐに入れないのが現状です。

さらに、ことし4月からは、入所が原則、要介護3以上の介護の必要性が高い高齢者に限定されます。

一方、民間の事業者が運営する有料老人ホームは、入居の際に一時金が必要だったり、毎月の利用料が高額だったりする施設が多く、所得が低い高齢者が入るのは難しいのが現状です。

高齢者の受け入れ先が限られるなか、多摩川病院では、過去にどうしても退院先が見つからなかった患者を送り出したケースもあったということです。

多摩川病院地域連携室の金澤富士子看護師長は、「届け出がない施設への紹介は入所後適切に対応してもらえるのか相当不安があるので原則行っていない。しかし、今後、収入が少ない人など受け入れ先が見つからない場合は、本人と相談して無届けの施設への入所を検討することも出てくる可能性がある」と話していました。

“無届け”が抱えるリスク

行き場のない高齢者の受け皿になっている“無届け介護ハウス”。
しかし、高齢者の居住環境が守られなかったり、安全が脅かされたりするなどのリスクと隣り合わせです。

NHKが無届けの施設がある全国の市区町村にアンケート調査を行ったところ、去年までの6年間に、▽施設の職員などによる入所者への虐待が25件、▽事故が25件、▽火災が2件起きていました。

また、施設の情報を地域の住民などに公開していると答えた自治体は、僅か2%にとどまっていて、外部の目が届きにくくなっている実態が伺えます。

高齢者の住まいの問題に詳しい医療経済研究機構の白川泰之研究主幹は、「行政の指導や監督が及ばず虐待や事故などの発見が遅れるおそれがある」と指摘したうえで、「行政はニーズがあることをきちんと受け止め実態の把握に努めるとともに基準を満たしていなくても、まずは、事業者に届け出を出してもらうなど適切な指導をしていくべきだ」と話しています。

介護保険制度のはざまで

介護保険制度が始まってことしで15年。
介護が必要な高齢者を社会全体で支え合うという理念は実現されているのでしょうか。

今回の取材で明らかになったのは、介護が必要になった際、1人では自宅で暮らせず、介護施設にも入れない高齢者の存在と制度のはざまで広がる“無届け介護ハウス”の実態でした。

ある“無届け介護ハウス”の経営者が話していた「制度が実態に追いついていないなかで、代わりに自分たちが受け皿になっている。無届け介護ハウスはいわば”必要悪だ”」ということばが、今の状況を端的に示しています。

超高齢社会を迎え、今後、ますます介護が必要な高齢者が増えていくなか、ついの住みかをどう確保していくのか、改めて考える時期に来ていると思います。