家賃と改修費補助で空室解消へ
「改正住宅セーフティネット法」今秋施行
高齢者、子育て、新婚世帯など対象
家賃と改修費補助で空室解消へ 「改正住宅セーフティネット法」今秋施行 高齢者、子育て、新婚世帯など対象
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国土交通省は今秋施行予定の「改正住宅セーフティネット法」で新たに設けられた住宅確保要配慮者専用賃貸住宅の登録制度などに関する説明会を7月から始める(表参照)。同法が対象とする「要配慮者」の定義は広く、低額所得者だけでなく高齢者や子育て世帯、新婚世帯なども含まれる。また、空き家対策とも連動させるため、既存の空き家・空室を改修して登録住宅とする場合には1戸(室)当たり最高100万円を補助する。更に低額所得者が入居する場合には家賃補助も実施する。我が国の住宅政策は、これまでは持ち家重視だったが、高齢化や若年世帯の格差拡大などを背景に、良質な賃貸住宅を社会インフラとして整備する方向に大きく舵を取り始めた。
同省は宅建業者や賃貸住宅管理業者、賃貸人(民間家主)などを対象に新たな住宅セーフティネット制度に関する説明会」を7月に全国7都市で開催する。
セーフティネット住宅というと、被災者、低額所得者、高齢でしかも身寄りのない高齢者向け住宅というイメージが強いが、同法が対象とする「住宅確保要配慮者」の定義は意外に幅広い。60歳以上の高齢者夫婦、18歳以下の子供を養育している核家族世帯なども対象になる。更には子供がまだいない新婚世帯、外国人世帯も含まれている。
また、改正法は空き家対策とも連動させるため、民間オーナーが空き家や空室を改修して要配慮者向け専用住宅として登録する場合には、その改修費を補助する。具体的には登録基準(耐震性など)を満たすための改修費については国が戸当たり最高100万円を補助する。
一方、低額所得者が入居する場合には家賃を毎月最大4万円(国と地方で2分の1ずつ)補助する。補助金は法の趣旨である“家賃低廉化”が果たされていることを確認後に家主に直接支給される。
こうした、家賃と改修費に対する補助を受けるためには最低10年間は要配慮者専用賃貸住宅として運営・管理していくことが義務付けられる。そのため、それを担保する意味合いも含めて、区市町単位の「居住支援協議会」の設立を国交省は各自治体に要請し、設立を支援するため、1協議会当たり1000万円を補助する事業も進めている。
同説明会ではこうした事柄に関する詳細な説明を行うほか、家賃債務保証業者登録制度(10月創設予定)の登録業者であれば、要配慮者専用住宅入居者の家賃債務について住宅金融支援機構に保険を掛けることができる制度についても説明する。ちなみに低額所得者の入居費負担軽減策として、登録された専用住宅の場合には入居時の家賃債務保証料についても国は上限3万円を補助する。
また、今回の改正法のもう一つの目玉が、シェアハウス(共同居住型住宅)も要配慮者専用住宅として登録できるようにしたことである。しかも、良質なシェアハウスの供給を促す観点から、例えば空き家になっている5LDKの一戸建て住宅を改修して5室を要配慮者向け専用住宅として登録する場合には500万円の改修費を補助する。うち例えば2室だけを登録する場合には200万円を補助することになる。
同省は今回の法改正を踏まえ、改めてシェアハウスの運営実態などを調査し、新たにシェアハウス事業を始める事業者向けのガイドブックを作成する。調査には日本シェアハウス協会などが協力する。
例えば5室あるシェアハウスで、うち2室をそれぞれ高齢者と子育て世帯向け専用住宅に登録すると、自然に〓多世代共生型〓のシェアハウスが誕生することになる。〓多世代共生型〓のシェアハウスについては、高齢化、単身化が進むこれからの日本社会にあっては貴重な社会インフラとなる可能性を国交省も感じているようだ。
説明会の参加は無料。開催日3日前までの申し込みが必要となる。詳しい問い合わせ先は、住宅局住宅総合整備課で、電話は03(5253)8506まで。
良質な社会インフラ としての賃貸市場へ
【解説】 日本は今後10年間で、高齢単身者が100万人増加する。また単身世帯はあらゆる階層に広がっている。社会が明るい方向に向かっているとは言い難い状況だ。子育て世帯も含め、多様な世帯が経済面などでの不安を感じることなく安心して暮らすことができる賃貸住宅を整備することは、社会の雰囲気を改善する礎(いしずえ)となる。
また、年代、性別、所得環境などがバラバラの単身世帯は互いの交流が疎遠になりがちであることを踏まえると、住民同士のコミュニティが育ちやすい賃貸住宅としていくことも重要な視点となる。
今こそ、良質な賃貸住宅を社会インフラと捉える発想が必要だ。人口減少、少子高齢化が進む中、地域再生を担う地元密着の不動産会社にとっては、今回の「改正住宅セーフティネット法」の活用が重要な戦略となる。なぜなら、若年世代の所得環境が厳しく格差も拡大していく今後は持ち家よりも、まずは若い世代が入居しやすく、魅力ある賃貸住宅を整備していくことが人口増加と地域の活性化につながるからである。 (本多信博)