あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

永遠の婚約者

2017-01-13 02:01:25 | 想いで
もうここ二ヶ月ちょっと、ずっとわたしは考えている。
なぜ彼は、拷問を受けてでも、家族や恋人を犠牲にしてでも、自分の命を懸けてでも、告発したのか。





史上最大の告発者、エドワード・スノーデン。
彼を見ていると、わたしはどこかが、わたしの亡き最愛の父に似ている気がしてならなくなる。
悲しそうな、さびしそうな表情。
特に晩年、父もこんな表情をしていた気がする。
わたしはいつも父の愛に、飢えきっていた。
父の愛に毎日渇き、父の生きている頃から、わたしは苦しくてならなかった。

そんなわたしが、ほんとうに父を失ってしまった。

ずっと父の代わりを探しているんだろう。
母の記憶がなく、父子家庭で育ったわたしにとって父は、母でもあった。

このエドワード・スノーデンという男が、なんかすごく、深い母性愛も感じる存在であり、わたしは彼に果てしない幻想を抱いている。

かつてイエス・キリストも、家族や弟子に降りかかる苦しみを犠牲にしてでも、みずから拷問に合い、そして処刑された。
それが本当の愛であると言える人は、少ないかもしれない。ってキリスト教徒は多いけどな、実際に、自分の身になって考えてみたら、自分が拷問に合うということは、自分を愛する者たちを精神の拷問にかけるということである。

これを本当の愛だと、信じられる人は、多いのだろうか。

自分が愛する存在を、自分が最も愛する存在を、最も苦しめること、これが愛だと、本当の愛だと信じて死んでいける人は、多いだろうか。

わたしは彼がそんな人だと想う。
エドワード・スノーデンとは、そんな人なんじゃないのか。
だからこんなに悲しい表情をする男ではないのか。

わたしのお父さんに、そっくりだ。
似てるったら似てるんだ。
お父さんといつも一緒にいた娘のわたしが、そう言うのだから。

似ているんだよ。きっと。

しかしそう想えばそう想うほど、近親相姦やな、と俺はわたしはぼくは、最近またよく想う。
ええのんか、それで。近親相姦やぞ?
禁断の愛。
でも実際、スピリチュアル的に考えたら、も、全員、近親相姦だから。
もうええやん。ええやんかいさ。
それが人間なんだよ。人間なんだ。俺は人間なんだ。俺は死体なんだ。俺は人間なんだ。おんなじやないか。人間なんだよ。霊なんだよ。嘘なんだよ。真なんだよん。
も、ええやろ。
俺は胸が苦しい。
そうは言ったって、苦しくないわけなんか、ないんだよ。

最も愛する人が、父親なんだ。
いいじゃないか。何が悪い。なにも、悪くないだろう。
母親なんだ、わたしにとって、父は。
なんにも、おかしくはない。そうだろう。俺は、おかしくはない。
おかしいさ。笑ってほしい。お父さん。
だってそうやん。お父さんと結婚なんてできへんやん。実際の話。
したら、あきまへんやん。
人間のタブーにはちゃんと訳があるんだから。
子供を産めば、奇形児が生まれる。
俺の子宮は奇形だ。
ハート型をしている。
双角子宮。不妊や流産になりやすいと言われている子宮だよ。
お父さんも知らなかったこと。

わたしは、お父さん以外の子供を産めないということか。
そう考えると、納得できる。
わたしが何故今まで妊娠できなかったのかということを。

なかに何度と、わたしは射精されてきたが、一度も妊娠できなかった。
子供がほんとうに、欲しかったのに。

わたしはまるで、自分が死体のように感じる。
どんなに笑っても、どんなに泣いても、どんなに怒っても、嫉妬しても、恐怖しても、ほんとうの死を感じるとき以外、わたしは死体なのです。

こんなことを言うと、またお父さんが悲しむ。
エドワード・スノーデンみたいな悲しい顔をして。

わたしは、お父さんと結婚するべきだった。
生きていくほど、お父さんが死んだ日から遠のいていくほど、そう感じる。

何故できなかったんだろう。
わたしは何故、お父さんと結婚できなかったんだろう。
それはお父さんが、死んでしまったから。
わたしを置いて、死んでしまったから。

人間の心理とは、ほんとうに複雑で、素晴らしい。
わたしは父に性的な関心を持ったことがないと言ったが、逆に、父から性的な関心を持たれていると感じて、それが嫌でたまらなかった。
年頃になると胸が小さく膨らんできたので、それを隠すのにいつも背を丸くしていたから、わたしはすごく猫背になってしまった。
わたしがいつまで経ってもトイレの中にある使った後の生理用品を捨てなかったから、父が勝手に捨ててしまったとき、ひどく、嫌な気持ちがした。
父にわたしの性を、感じとられることが、嫌でしょうがなかった。
わたしを女として見てほしくはなかった。絶対に。
父が娘であるわたしに性的な関心を持って見ることは、不潔なことだった。
断じて、受け入れられることではなかった。
わたしは絶対に、なにがあろうと、父の娘でなくてはならなかった。
わたしが父の恋人になることは、赦されなかった。
わたしがわたしに対し。
それは、決して赦せる罪ではなかった。
父を殺してでも。



わたしは、赦せなかった。
わたしを。
父から性的な目で見られていると感じていたのは、わたしが、父を性的な目で見ていたことの、証だ。
ようやく最近、それにわたしは気づいた。

オイディプスコンプレックスというものは、娘にも在る。
まるでわたしは父を奪いたいが為に、母をもこの手で殺してしまったみたいに思えてくるではないか。
フロイトのおっさん。あんたは偉い。
俺を苦しめて欲しいもっと。
俺ァ苦しみでしか生きていけなくなった人間だ。
俺が望むもの、俺が解放される苦しみがどこかにあるはずだ。

それを、いつも、探してる。
わたしが心から悲しみながら、心から喜べるもの。
俺はそれしか求めてへんよ。
ほんまの話。
嘘の話。
もう俺は、俺はなんにも、区別する必要もない。

お父さんを、性的な目で見ていたのは、わたしだ。
これが投影。
鏡だ。
わかっていたんだろうほんとうは。
わかってないふりをよくしてきたもんだ。
もうずっと、自分を欺きつづけて生きている。
それが俺の喜びなんだから。
悲しくてしょうがない、喜びなんだから。
誰にも奪えるものじゃない。
お父さんにも。
奪わせることはできない。
それを奪われるなら、わたしが死ぬということだ。
死だ。まぎれもなく、それは死だ。
生きていることが、死体だ。わたしの。
その死体は、いつも、いつでも、悲しく喜んでいる。
もうきっとずっとひとりだよ。わたしは。
永遠の婚約者を、死なせてしまったのだから。
永遠の花婿を、この手で殺めたのだから。




あなたの子供を、わたしは生みたかった。















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