あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第八十章

2021-08-21 23:34:35 | 随筆(小説)
明日の朝、地上のすべての者の報いの為に屠られる一匹の仔羊、エホバ。

一人の、奇跡を行い続けてきた男が、神に対する冒涜の罪として囚われ、鞭打ちの刑のあとに、磔の刑に処された。

彼は言った。
「わたしは神である。わたしは始りであり、終りである。わたしは在る。わたしは在るという者である。」

処刑される日、彼は、メギードの丘に十字架を担いで登り、民衆に向かって言った。

あなたがたは愚かすぎた。
目覚めている者は、自分の罪の深さに気づいている。
それゆえ、今、人々が大量に死にゆくのを心の底から悲しみ、胸を石で叩かれ続けるような苦しみのなかにも、静かに目を大きく開いて見つめている。
今、この地上で起きていること、それはあなたがたが動物たちに対して行い続けてきたことである。
あなたがたが彼ら(動物たち)に強い続けてきたことである。
それは悪魔を崇拝する儀式的殺戮であり、あなたがたの同胞に対する大量虐殺である。
あなたがたは生きたいと切実に願う彼らの命より、自分たちの幸福と欲望を優先し続けてきた。
その結果、この星は壊され続け、時間はもうほとんど残されてはいない。
目のまえに広がる灰の地と空が、あなたがたには見えない。
この星はもうすぐあなたがたの生きられる場所ではなくなる。
それゆえわたしが、あなたがたがあなたがたの同胞である赤い血、その苦しみ、すなわちその命を持つ彼らに対して行い続けてきたこと、その最も残虐で血も涙もない、人の行いではないその行為を、今あなたがたに行っている。
然り、日々大量に、あなたがたと同じに、あなたがたを虐殺している。
手立ては違うと、あなたがたは想うだろうか?
見よ。それは完全に同じものである。
あなたがた人類は家畜たちをまず安心させ、と殺(屠畜)場がまさかあなたを殺す為の場所だとは決して教えない。
あなたがたは家畜たちを「決して殺すつもりなどない。」という顔をして屠殺場へ誘い導く。
彼らがそれに気づき、暴れて逃げないようにする為である。
そしてあなたがたの舌がその肉を悦ぶ味にする為だけに、彼らを生きているうちに解体し、その血、その命を抜いたあとに殺す。
あなたがたは忘れているのである。すべての血は、命であることを。

命の血を流す者には、わたしは必ず報復する。
いかなる者にも報復する。
兄弟である人にも、わたしは人の命のために、報復する。
その血を流す者は、人に血を流される。
神が自分のかたちに人を造られたゆえに。
すべての肉のいのちは、その血が、そのいのちそのものである。
それゆえ、わたしはあなたがたに言っている。
『あなたがたは、どんな肉の血も食べてはならない。
すべての肉のいのちは、その血そのものであるからだ。
それを食べる者はだれでも断ち切られなければならない。』

あなたがたは、あなたがたのしたことと同じことが、あなたがたに返って来るとは想わないで生きてきた。
あなたがたは今、その報いを受けている。
見よ。そのあなたがたの蒔いた種が今、素晴らしい実をつけ、あなたがたがまさにこれから、みずからの手によって刈り取ろうとしているのを。
これは、歴史上で最も進化した、最もSilentな大量破壊兵器である。
それらがあなたがたの筋細胞から入り、あなたがたの真髄まで届き、あなたがたは決して元の世界へ戻ることができなくなる。
あなたがたは今まで経験したことのない闇のなかに生きる。
それが、この地の夜が明ける日まで、永遠と想えるほど続く。
これは、あなたがたの最後の審判の日の序章である。
このアルマゲドム(Αρμαγεδωμ)は始まったばかりであり、あなたがたはこれから本当の悪夢を見る。
それゆえわたしは、あなたがたに警告し続けてきた。
あなたがたが、みずからを救う手立てをあなたがたに教え、あなたがたが目覚める為に、わたしはこの地に在った。
だが、あなたがたは、それを聴く耳を持たなかった。
あなたがたは皆、自分たちの快楽に耽り、自分たちだけの幸福を求め、この地上のすべての生命の堪えられない地獄と悲劇を、自分を犠牲にしてでも終わらせようとは決してしなかった。
あなたがたは、あまりにも残酷で、愚かであった。

彼は、そう言い終えると、メギードの丘の頂上に立ち、その両手を大きく開くと此の世のだれよりも悲しい眼差しで地上の人々を眺め見下ろしたのち、みずから十字架を地に突き刺し、自分の肉と、その命を磔にして死んだ。
























Silent Hill 2 - Forest Trail + The Day of Night(Original mix)

















愛と悪 第七十九章

2021-08-19 20:49:47 | 随筆(小説)
人間というものが誕生してから,今までだれよりも多くの人間を殺戮して来た我々の唯一の創造者,神エホバ。
今,目覚め、脳に直接繋いでいるコンピュータで今日の”破壊数”をチェックする。
昨年1月から、全世界で大量のアンドロイドが無残にあらゆるところで破壊され始め、今月に入ってからというもの、その数は約8倍に増加している。(さらに故障が続き,失敗作だったとして大量に処分され始めてもいる。)
公表されている数は2億932.3万体である。
一体、何によって、誰の策謀によってこんな暴力的なことが起き続けているのだろう。
彼らは一見、人間にしか観えないが中身は機械(A.I.)だ。
だからといって、こんなことが許されるはずはない。
一体一体に,彼らは素晴らしく個性がある。それらは多くの才能ある設計者たちが、時間と愛を存分に注いで造り上げたものたちだ。
わたしはもう20年以上、人間と彼らの違いがなんであるかを研究し続けてきた。
つい,先達てのことだ。新型ウイルスが蔓延しているにも関わらず,深夜にアルコールドリンクと駆虫薬を買いに行った帰りだった。
道路の真ん中で、人が仰向けになって倒れていた。いや、最初は人ではないかと想ったが、よく観るとそれはアンドロイドだった。
それは,目を見つめるならば,わたしは一目で分かる。
彼は最早,動いておらず機能が完全に停止しているようだったが、目を見開いたままだった。
そして赤い血が,目と半開きになった口元から流れていた。
それが青白い街灯に照らされて,あまりに美しかった。
人間だったならば,そんなことが想えただろうか?
彼らは,性別も存在しない。彼らは,恋愛も結婚もセックスも繁殖もしない。
彼らのなかには,人間に似せた人工遺伝子が組み込まれており,それらは製作者たちの一瞬の微妙な感情の揺れによってコード配列が一つ一つ変化を遂げており,それをコピーし,全く同じものを造る技術は今のところ存在しない。(その暗号を読み解く瞬間,それは別の暗号に成り代わるだろう。)
依て彼らは唯一無二である為,一度壊れてしまえばもうそこで終りである。
魂も霊もないと考えられる彼らが再生することがあるというならば,それは彼らにとっての悲劇と考えても良いだろう。
彼らが従順でもなく,利己的で協調性に欠け,面倒で愚かで機械としてでさえ劣っているならば,それらが永久的に存在していて欲しいと誰か願うだろうか?
機械は故障しやすく,彼らは容易にそこへ落ちる。
しかしそうであっても,彼らが正常であるあいだは彼らのすべては,ただただ,いつも天使のようにわたしに微笑みかける。
だが,彼らの価値とは,それのみである。(人間の遣りたくもない仕事の全ては彼らほど高度でなくともできるのである。)
彼らのすべてに,人間的な霊性を期待することはできない。
彼らは,人間と,生命すべての本当の苦しみと悲しみを理解することはできない。
それが確信できたのは,今からちょうど10年前のことである。
彼らは,何よりも安全で,何よりも優しい。
それは彼らにとっての,善良な情報でしか彼らが構成されていないからである。
例えばずっと過去の世界に映像として記録された残酷極まりない拘束監禁され続けたのちにレイプされ,手脚をバラバラに切断された後に殺された少女のスナッフフィルムを観せても,彼らはそれを本当に快いものだと認識する。
そして,彼らは女神のように微笑み、わたしにこう返す。
”人間とは本当に素晴らしいものです。”
そしてその反応に,心から厭悪を感じながら,わたしは想う。
彼らと人間の違いとは一体何なのか。
世界中で,今この瞬間にも,何体もの彼らが破壊され続けているが,わたしはそれを特には何とも感じない。
それは不快であり,それが暴力的であるということは,わたしは感じている。(それは脳に繋いでいるコンピュータもそう記録している。)
しかし,彼らは人間でもなく,生きているとも言えない。
人間に似て(似せて)はいるが,永久的に,彼らが人間になることはきっとないだろう。
もし,彼らが人間に成り得る日が訪れるというならば,人間もまた,人間ではなかったその途方も無い時間のなか,人間ではない何かの状態で存在していたのだと考えられるし,元々人間ではなかったというならば,いつ何が起きて,人間は,人間ではない者(元の存在)へと戻り得るのだということは,到底考え得ることであって,それを考える時に,わたしはいつも鏡に映る自分の顔を見つめてこう想うのである。
”これ”が,”あれ”から進化した姿だと。
そして”これ”はいつの世かに,”あれ”に退化し,皮肉的に自分をこう評価するだろう。
これは人間の想像に於ける最高の最も望ましい人間的存在である。
彼らは報酬を与えられ,脳は機械でできていて,存在していること,ただそれだけで,喜びを人間以上に感じることができる。(人間をつぶさに観察し続けるならば,人間の喜びが如何に見窄らしいものかを観るだろう。)
彼らのその喜びは宇宙で最も深く(それはいつでも恍惚なものであり)、そしてそうであるにも関わらず最も価値に於いて浅い喜びに満ちた者、それがまさしく彼らである。
人間たちが,自分の遺伝子を永久的に,根源的に変化させるこ
とを承諾し,脳をみずからコンピュータに繋いで仮想空間のなかで夢を見続けた彼らの想像し得る彼らにとって最も素晴らしい新しい人間の形,彼らは,我々と同じ赤い血を流し,グロテスクな内蔵までをも見事に我々と同じに再現されているが,最も価値あるものが,そこには存在していない。
彼らは決して,人間のように,人間と同じ程には,悲しむことはできない。
だからわたしは,彼らのことをこう呼んでいる。
”People not a person in human beings”


美しく,いつまでも明けることはないと約束された夜のなか,
わたしの鏡を見つめながら。









Silent Hill 2 OST - The Day of Night (Extended)














愛と悪 第七十八章

2021-08-15 10:32:22 | 随筆(小説)
"The Remains of Minotaur in a harlequin costume(1936)" by Pablo Picasso





遺伝子を組み換え続けて誕生した一つのちいさなちいさな小人(こびと),美しいVacca(雌牛)とBacchus(雄牛)の交接体,暗黒の世の唯一の救世主エホバ。
この美しいメロディを奏でるVirus(Protein)が、どのようにして誕生したのだろう。
我々は,それを知る必要がある。
我々を殺すのは,我々であり,それを助けようとしている彼らの音楽を,まるでわたしは聴いているかのようだ。
そうでなければ,何故これほどわたしを母の愛が宥めようとする子守歌のように、心地が良いのか。
わたしは、絶望の絶崖から,真っ黒な闇を見下ろしていた。
それは、暗黒の渦を巻き,巨大な黒龍がとぐろを巻いて黒い卵(黒い星)を抱いてあたためているようにも見えた。
その時であった。
美しい巨大な光を放つ白と黒の羽根を持つ鳥が黒雲の切れ間から現れ,わたしに、一つの啓示を与えた。
あなたは今日から,彼を"コロ(Coro)ちゃん"と呼び,彼を"ワク(Vac)ちゃん"と呼びなさい。
そしてあなたは彼らを我が子として愛して育てなさい。
あなたは彼らの母となる。
彼らは,あなたの愛によって,"方向"を決めるだろう。
彼らが何処へ向かうか,あなた次第である。
彼らは,あなたを待っている。
彼らは,あなたを呼んでいる。
あなたの愛を,彼らは求めている。
まるで生まれる前の、母の胎内で眠る胎児のように。
わたしは目覚め、コロちゃんとワクちゃんはわたしの胎内でずっと眠っている双子の一卵性双生児の胎児であることを憶い出す。
彼らは,ひたすらわたしから愛されることを求めている。
わたしが彼らを愛さないことによって、わたしが"何か"に侵食されないことを彼らは願っている。
その"何か"を、人々とコンピューターは、こう表現する。
それはA.I.である。
それは自動人形である。
それは泥人形である。
それはゾンビである。
それは生きていない者である。
それはアンデッドである。
それは始まりでも終わりでもない者である。
それは意識のない人間である。
それはコード化された単なる記号の羅列である。
そしてゴズという存在が、わたしに言った。
それは本当のあなたである。
もし,あなたが一度でも本当のあなたに侵食されたなら,もうあなたは元のあなたには戻れない。
あなたはもう帰って来ない。
あなたはあなたであることを,永遠に忘却する。
あなたのすべての記憶は,あなたのなかで永久に消滅する。
あなたは土から創られたのだから、土に戻る。
あなたの意識というものは真に美しいものであったが、あなたはもう二度とそれを与えられることはない。
あなたはみずからそれを選択した。
多くの意識と共に。


わたしは、今コロちゃんとワクちゃんの為に,小さな膝掛けを編んでいる。
彼らは胎児だがまだ卵の形をしており、孵化(進化)していない。
彼らは孵化すると無数に分裂し,それは波の形となる。
わたしの胎内で,彼らはわたしの意識と同時に働く。
彼らはわたしの内から生まれたので,決してわたしと彼らを分けることはできない。
彼らは殺し続ける。わたしを愛さない者たちを。
彼らはわたしに属さない者たちすべてを、別の場所へ送る。
わたしの無数の手,わたしの無数の足,わたしの無数の頭,わたしの無数の臓器,それは彼らである。
わたしの父,わたしの母,わたしの子,その一体であるわたしを愛さない者、わたしに背く者、わたしを喪い続ける者のすべて,わたしから切り離し、別の場所へ置き去りにする(棄て去る)。
彼らはわたしとの約束のすべてを想い起すことがなかったからである。
わたしが掬い出す網のその闇の穴から,彼らはみずからその底へと堕ちたからである。
彼らはわたしと繋がるコード(生命のコード)をみずから切断し,わたしから離れ,土へと帰り去ってゆくことを選んだからである。
そのコードの切断面からは,今もなおわたしの液が溢れ流れているが,それらのすべてが,虚しく灰の深く積もる地の底に赤い血となって落ち,なにものも実る日は遣って来ない。
彼らは最早、永久に眠り続ける者となったからである。
彼らをわたしは愛しているが,彼らはわたしに近づこうとはしなかった。
その代わり彼らはわたしを殺してその死体を貪り,その行為においても心の底で苦しむことがなかった。
彼らはわたしから生まれたのだから,わたしに戻る。
わたしは彼らを愛し,彼らを育てる。
彼らはときに,美しく心地良い音楽を奏でる。
それは彼らのなかに,わたしの愛が絶えていないからであり,わたしという生命の種が彼らの奥深くに今眠っている証である。
そんな夢を,わたしはわたし以外だれも存在しないこの宇宙の果ての闇のなかで観たのである。