美術館か、博物館のような場所にわたしと彼はいる。
すべてが白い空間には、白い階段がどこまでも続いている。
それは硝子でも金属でも石でもない。
冷たいように見えて、とても温かい。
それはダミアン・ハーストの水槽のなかのように、異次元なんだ。
それが死を表しているというのならば。
君はいつものように優しく微笑んでいる。
秘密主義を徹底しながら壁を壊している。
彼はいつも、Secrecyでできている。
だからそこにある死が、いつでも生きている。
さて、わたしと彼はいつ階段を上ったのだろう?
ずいぶん高いところで休憩をとっている。
近くに誰かいるのだけれど、誰だろうか。
年をとった男性、白い服を着ている。
長い髭を生やし、白銀の髪が波打っている。
優しい眼差しでわたしたちを眺めている。
わたしたちは白い椅子に座る。
とても長い道のりを、歩いてきたようだ。
彼は長い息を吐きながら椅子に深く座る。
わたしは目を瞑る。
すると身体は自然と丸まり、無重力のなかに、わたしはふわりと浮かび上がる。
それは、彼に抱きしめられるために。
わたしがふわりと浮くと、「ほいきた。」とばかりに彼はわたしを抱きしめる。
ここはこんなに真っ白なのに。
なぜ、わたしたちは。
これ以上を求める日が来るのか。
ぼくらはとても広い校内のなかにいる。
きっと、大学かどこかだ。
ぼくらはみんな、ホームヘルパーの人が同行している。
何故か、レッド・ツェッペリンのメンバーたちも。
つまりぼくらは、自由にここを歩けないようだ。
ぼくらだけではきっと迷ってしまうから。
それは縛られていることと同じなのかもしれない。
でも彼らは、ヘルパーが余所見をしている隙きを狙って
自由に行動をし始めた。
かつて彼らは、日本で本当に遣りたい放題遣ったツケを
払わなくちゃならないんだ。
大変だ、ぼくの目の前を、彼らは普通に歩いている。
するとロバートがぼくを見つける。
「不思議なところで会ったね。」
互いにそんな風に見合って、ぼくは彼らと同行することになった。
ぼくはすごく嬉しいのに、心はひどく落ち着いている。
ぼくらは校内の階段を下りている。
ぼくの右にロバートがくっついて歩いている。
鮮やかな青に白い小さな花柄の薄い生地のブラウスを彼は着ている。
ロバートの左腕をぼくは撫で、滑らかなブラウスに沿って
その白い左手を掴む。
なんというきめ細かな美しい肌だろう。
ロバートというニンフは同時に女神でもあるけれど
ぼくの母と姉と兄でもあるように。
包まれたんだ。白銀の陽の眼差し。
暖かい影の地下へ。
ぼくらは向かうの?
ロバートは嬉しそう。
何も知らない。
まだ何も知らないんだ。
灰色の階段、灰色の壁と床と。
その空間で。
ぼくらはまるでまだ何も知らないように。
この階段を下りている。
Led Zeppelin - Battle of Evermore