弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

カラオケ法理 ~著作権の侵害主体~

2014-08-06 21:53:59 | 著作権

今日の午後、名古屋の一部の地域で、一時的な豪雨があったみたいです。

ちょうどその頃、外出していたのですが、雷が鳴り、今にも雨が降りそうな雰囲気だったのに、結局雨に降られることはありませんでした。

ゲリラ豪雨というのは、ほんと局地的なものなのですね。

 

では、今日の本題。

昨日のブログでは、世界コスプレサミットの主催者があまり収益獲得に力を入れすぎると、著作者やその団体から何か言われるかもねー、と指摘しました。

マンガやゲームの登場人物の衣装を複製しているのはコスプレーヤーの皆さんなのに、なんで主催者が著作権侵害を言われるのだろう?ということに少し触れたいと思います。

 

この点に関して参考となる最高裁の判例があります。

「クラブキャッツアイ事件」と呼ばれる判例です(最高裁昭和63年3月15日判決)。

この事件において、最高裁は、著作権を直接侵害しているわけではないけど、それを助けているような場合も侵害と考えるという法理(カラオケ法理)が確立されました。

 

事案はこんな感じ。

スナック等で、カラオケテープ(古い事件なので、カラオケテープです!)を再生して客にカラオケのサービスを提供していたお店があり、そこでは、ホステスさん等の従業員がカラオケを客に勧め、客が単独で歌ったり、ホステスさんも一緒に歌ったりして店を盛り上げていました。

ところが、このお店、JASRAC(音楽著作権の管理団体)から使用料を請求されても支払わなかったんですね。

それで、JASRACから使用料の支払いや演奏の差止めの訴訟を提起されたという事案です。

 

この場合、カラオケで歌っているのはお客さんです。

なので、現実に音楽著作物を利用しているのは店のお客さんなのであって、店自体は著作物を利用していないんですよね。

それでも、最高裁は、次の2つの点から、店も音楽著作物の利用していると考えていいと判断しました。

 ① カラオケ装置の設置や操作等によって、お客がカラオケで歌うことの管理を店が行っていたこと(管理性)

 ② カラオケを営業の一環として利用し、客を呼び込んで営業上の利益を上げていたこと(営業上の利益)

 

この考え方、著作権法に書いてあるわけではありません。

あくまで裁判所が法律を解釈して認めた考え方であって、カラオケが問題になったという事案をとって「カラオケ法理」と名付けられています。

法律に書いてなくても、最高裁判所が示した解釈として、このカラオケ法理は裁判所で用いられる判断基準となります。

 

ちなみに、現時点でのカラオケ演奏については、このカラオケ法理をあえて用いなくてもいいような仕組みになっています。

でも、最近ではインターネット関連の事件など、カラオケとは全く関係ない事案でも、このカラオケ法理を用いて判断がなされています。

 

ですから、最初に話を戻すと、世界コスプレサミットも、カラオケではありませんが、カラオケ法理を適用するとすれば、まず①管理性の要素はすでに認められる可能性が高い。

そうすると、主催者がコスプレサミットを利用してもうけてやろうとすると、②営業上の利益の要素も認められることになってしまい、著作権者から何か言われる可能性が出てくるのではないかと。

 

現状では、もうけを目的とした事業ではないので、②営業上の利益の要素を満たしていないってことになるのかな。

 

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