会津天王寺通信

ジャンルにこだわらず、僧侶として日々感じたことを綴ってみます。

人の救済を目指す菩薩の六つの実践行が六波羅蜜です 柴田聖寛

2020-04-26 08:17:19 | 信仰

 新型コロナウイルスによるパンデミックで世界は大変なことになっていますが、今こそ信仰が試されているのだと思います。前回は四諦と八正道についてお話をしましたが、今回は六波羅蜜に関して論じてみたいと思います。
 なぜ「六」かと申しますと、人の救済を目指す菩薩の行う実践業は六つであるからです。波羅蜜とはPāramitaの音写で、到彼岸の意訳です。すなわち『向かい岸(彼岸Pāram)に到達(ita)した』という意味なのです。
 人々を迷いの此岸から悟りの彼岸に渡らしめるために、必ず身に付けなくてはならない徳目が「実践行」なのです。また、その救いの「実践行」を極めることが難しいので、「度無極(どむごく)」ともいわれ、「人々を度する、すなわち救うことに極まりがない」とも訳されます。

 六つの実践行とは下記の通りです。

①布施波羅蜜 壇波羅蜜ともいいます。人々に布施を与えることです。布施は金銭や財物を与える財施と、教えを施す法施とに大別されます。前者は在家者が、後者は出家者が行う実践行です。
②持戒波羅蜜 戒を受持し守ってゆくことです。戒を守れば自らは清浄となり、同時に他人を傷つけたり、悩ましたりすることがなくなります。
③忍辱波羅蜜 他人から悪口・罵倒されても、危害を加えられても、怒りをもって返報することなく、耐え抜くことです。
④精進波羅蜜 勇敢な心をもって、善を修し、悪を断するために、努力精進することです。
⑤禅定波羅蜜 心を一つの対象にとどめて心を鎮め、真理を見究める知恵を磨くことです。
⑥般若波羅蜜 知恵波羅蜜ともいいます。事象の本質を見抜く知恵、すなわち般若によってあらゆる存在の本質を「無常・苦・空・無我」であると如実に観察することです。

 また、⑥の般若波羅蜜の働きを内容的にさらに四つに分けて、全部で十種にして「十波羅蜜」ともいわれます。

⑦方便波羅蜜 他者を救済する手段が方便です。
⑧願波羅蜜  他者を救おうとする願いです。
⑨力波羅蜜  人を救おうとする実践力です。
⑩智波羅蜜  智とは⑦⑧⑨のそれらの力を支える知恵を意味します。

 四諦と八正道、さらに六波羅蜜の言葉の意味を理解することが、仏教を信仰する上でもっとも大事なことなのです。

      合掌

 

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瀧本光静さんの『最後に伝えたかったこと』(彩図社)を読む 柴田聖寛

2020-04-20 12:22:40 | 読書

  

 大切な人を亡くされるという悲しみほど、深い悲しみはありません。残された人たちは、もっと生きているうちにしてあげたかったとか、言葉が足りなかったと反省するものです。
 瀧本光静さんの文と絵になる『最後に伝えたかったこと』を手に取ってみて、なおさらその思いを強くしました。瀧本さんによれば、そこに収められている47編の文章は誰かに見せるためではなく「葬儀や法要の際に、遺族が故人に宛てた言葉をそっと書き留めていた」のだそうです。
 毎朝、朝メシはいらないと言っていたのに、決まって準備してくれた母が亡くって、「なぜたったの10分ができなかったのか。ごめん母さん」と後悔する息子。早く妻を亡くして男手だけで娘を育てて逝った父への、娘からの感謝の言葉。無口な夫がこの世を去ってはじめて、自分のために保険をかけてくれていたことを知った妻の驚き。
 どこの頁を読んでも、私は涙がこぼれてなりませんでした。瀧本さんは「想いは言葉にして伝えることが重要」とおっしゃっておられますが、私もその通りだと思います。

                  合掌

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