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会津天王寺通信

ジャンルにこだわらず、僧侶として日々感じたことを綴ってみます。

「長講会」は伝教大師がご入滅された6月4日に厳修されます 柴田聖観

2025-06-16 14:27:54 | 天台宗

 

 6月4日は宗祖伝教大師がご入滅された日ですが、この日は比叡山延暦寺のご廟所である浄土院拝殿で長講会(ぢょうごうえ)という法会が厳修されますが、それについ「比叡山時報」令和7年6月8号において詳しく紹介しています。
 最高学位の探題から出された論題について、問者が疑問点を述べ、これに対して講師が天台宗としての見解を示し、その疑問点を解消するという問答です。終わりには探題がその問答の内容を精査し、講師の答えに対して可否を判断する精義が行われます。
 本年は首座探題である藤光賢天台座主猊下から出題された論題は「国土苦楽」でした。問者が「国土の苦楽は衆生の業感によるものか、それとも諸仏の変幻によるものか」と問うたのに対して、講師が「共にその意あるべし」と答えることから始まり、その後、二重三重と問答が繰り返されました。最終的に講師は「衆生の業感、諸仏の変幻の両方を用いて解釈しなければならないとして問答」を締めくくりました。
 伝教大師が徳一と論争したときもそうした問答が行われましたが、政治学者の丸山眞男は「法論の論は単なる議論というより、論争という性格が強い。それ故、法論を文章にすると、勢い問答体になるのだ」(『忠誠と叛逆』)と書いています。
 また、こうした長講会を通して天台宗の教義を学ばれた方々が、歴代の座主を務めてこられました。その意味からも、延暦寺でも最も重要な法華経の講論であるといわれています。
                  合掌


第259世天台座主に藤光賢猊下 柴田聖寛

2025-03-22 21:28:19 | 天台宗

 

 次座探題の藤光賢大僧正が2月1日付で第259世天台座主にご上人されました。第258代天台座主探題大僧正大樹孝啓猊下がご高齢を理由にご譲職(辞任)されることを発表されたことを受けたもので、同日、滋賀院門跡で上任式が執り行われ、大樹座主猊下は前天台座主として遇されることになりました。
 大樹座主猊下は令和4年8月、比叡山宗教サミット35周年記念「世界宗教者平和の集い」では「神仏からの激励を賜った」と力強いお言葉を述べられ、参加者を鼓舞されたことが、今も語り継がれています。
藤光賢天台座主猊下は昭和7年1月生まれの長崎県出身。天台宗主務会議、宗務総長、宗機顧問などを歴任され、京都五箇所門跡のひとつである曼殊院門跡や九州西教区金乘院住職を勤められました。昭和生まれの初の座主猊下であられます。
 伝燈相承式は6月10日午前10時半より、比叡山根本中堂で古式に則り行われます。藤座主猊下は歴代天台座主の相承譜に、第259世座主の上任の署名をされる運びになっています。
 『岩波仏教辞典』では「座主」について次のように書いています。「本来は一座の主の意味で、中国で、人々の主、学解にすぐれた人、寺の上首を称した。日本では天台宗の管長の称となり、852年(仁寿2)円仁が座主に任ぜられてのち、江戸時代まで勅旨によって任ぜられた。義真を初代、以下円澄・円仁・と数えて現在に至っている」
                 合掌


令和7年の比叡山から発する言葉は「繋紡心(けいぼうしん)」

2025-03-22 21:22:10 | 天台宗

 

 令和7年も春の季節を迎えましたが、今年1年間の心がまえを示す、比叡山から発信する言葉は「繋紡心(けいぼうしん)~心が繋がり紡ぐ道が照らされ相思う時代が訪れる」です。獅子王圓明延暦寺執行は「人と人との繋がりを心掛けて日々過ごすことで世界がより良くなる。<繋紡心>を持ち、ありがとうの心を日々忘れない一年を送りたい」と述べておられます。
「繋ぐ」は離れたものを結びつけること、「紡ぐ」はさまざまなものをより合わせて一つのものを作り出すことを意味します。人間が楽しく仲良く生きていくためには、自分にとって得があるかどうかではなく、多くの人との対話を深め、心を一つにして世界が平和になることを願うのが、信仰者としての役目ではないでしょうか。なかなかできることではありませんが、私もこの言葉を肝に銘じてこの一年を歩んでいきたいと思っております。
 繋紡心の「書」は比叡山の願いを象徴するものとして、根本中堂と一隅を照らす会館前に、一年間掲げられるほか、「比叡山時報」表紙の題字下にも印字されます。比叡山延暦寺のホームページでも閲覧することができます。

           合掌


本年は明鏡止水を心がけます 柴田聖寛

2025-01-01 12:19:53 | 御挨拶

  新年おめでとうございます。皆様にとってもよき一年でありますよう心からお祈り申し上げます。私も後期高齢となり、何かと不行き届きの点もあるかと思いますが、本年もまた、悉有仏性の天台宗の信仰を広め、住職としての務めを果たしていく所存であります。
 私のブログも途切れ途切れながらも、何とか継続をして、私が日頃考えていることを、皆さんにお伝えできれば、と考えています。令和7年は昨年にも増して激動が予想されますが、如何なることがあっても、私たちは「明鏡止水」を忘れてはならないと思います。邪念のない落ち着いた心境であれば、いかなる困難も乗り超えることができるからです。何卒、本年もよろしくお願いいたします。

         合掌


穏やかな新年を迎えられますようお祈り申し上げます 柴田聖寛

2024-12-30 23:28:09 | 日記

 年の瀬も押し迫ってきましたが、今年は新年早々に能登地方が大地震に見舞われました。総選挙では自公が少数与党となり、国内の政治も混沌としています。世界に目を転じれば、中東ではイスラエルとハマスの戦いが激化し、ウクライナとロシアとの戦争も、未だに休戦にいたっておりません。アメリカの大統領にトランプが当選したことで、今後の世界がどうなるかも見通せなくなっています。一天台宗の僧侶として私は、この一年、世界が平和でありますようにと日々祈りを捧げてまいりました。
 個人的にも、今年は色々なことがありました。伝教大師様の「一隅を照らす、此れ則ち国宝なり」(『山家学生式』)との言葉を旨としてきましたが、今後とも心折れることなく仏道に励みたいと思っております。皆様も良いお年をお迎えください。
 なお、令和6年の年末の御祈祷は12月31日、令和7年の初祈祷は1月1日に執行いたしますので、多数の御参拝のほどよろしくお願い申し上げます。
 合掌参拝