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谷崎潤一郎

2006年08月20日 | others
「乱菊物語」は谷崎潤一郎が『乱世に「菊」という名前の女性の一生を描くつもりで、この題をつけた』そうです。ところが、この長さ(文庫で400ページあまり)で、まだその「菊」という女性は登場してきていないんです。となると400ページはまだプロローグ? 谷崎潤一郎が伝奇作家になりきって書いた作品なので、やたらにおもしろい! 続きを、誰か続きを! 古川日出男さんいかがですか。

で、山田風太郎が「あと千回の晩飯」というエッセイの中で「乱菊物語」を絶賛する反面、『最近は時代小説が流行っているが、若い作家はどうやって牌史を知るのか』という疑問を出しています。稗史というのは正史(横溝じゃなくて官の決めた正しい歴史)にたいする民の集めたいかがわしい歴史、ということですね。

で、谷崎潤一郎が書いた別の妖しい時代小説がこれ、「武州公秘話・聞書抄」。生首の魅力にとりつかれた武将が、主君の顔を女首(戦場で捕った首の鼻をそいで、のちの証拠にするもの)にするという偏執狂的時代小説(「武州公秘話」)。「聞書抄」は、盲目の法師が石田三成の謀将ぶりを語りでさらけだしていくものですが、途中からどんどん別の話になっていって、国枝史郎化してしまうにしても、語りの技はすばらしいです。

乱菊物語(谷崎潤一郎 中公文庫)
武州公秘話・聞書抄(谷崎潤一郎 中公文庫)
あと千回の晩飯(山田風太郎 朝日新聞)
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