ディー判事もの最終巻。副官の馬栄は登場せず、なんと喬泰が! 外交官でポリグロットだったヒューリックらしい、アラブ人、ペルシャ人に差別民がからんだ陰謀事件がテーマですね。殺人事件そのものは痴情がらみで、ディー判事が謎解きの手がかりをいくつか述べているにもかかわらず、本格ミステリとはいいがたいです。しかし単なる時代ミステリだけでなく、人間性に根ざした動機は現代ミステリにも通じる普遍性があります。ディー判事ものの舞台となる大唐帝国はヒューリックの脳内妄想古代中国であり、こんなに規律のとれた役人や軍人がいたとは思えません。ま、そこに魅力的なキャラクターを登場させる隙間があり、脇役も印象的です。
南海の金鈴 ロバート・ファン・ヒューリック著 ハヤカワポケミス
南海の金鈴 ロバート・ファン・ヒューリック著 ハヤカワポケミス
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