spin out

チラシの裏

オシリスの眼

2016年11月25日 | ミステリ
発表年は1911年(「ブラウン神父の童心」が出た年で、ヴァン・ダインがデビューするのは15年後)。
作品内で事件がおきたのは1902年から1904年にかけて。
これ、ホームズがサセックスへ養蜂するために引退していた期間なんですね。
だから、前世紀の作品ではあります。
そうではありますが、さほど古い感じがしなかったのはなぜか。

ミステリとして人体の骨の構造を(100年経っても人間の身体の仕組みは変わりません)、
物語として、奇妙な遺言状をいかにして主人公側有利に発効させるか、
をテーマにしているから、でしょうか。
医療ミステリとリーガルミステリの嚆矢、と言うと褒めすぎですかね。
その両方を一気に解決する「ジョン・ベリンガムの章」は圧巻で、
ソーンダイク博士が大英博物館に登場するところなど、
ミステリの雅気が満ちて懐かしさで一杯になりました。
犯人の設定も、当時としてはヒネリを効かせてあったのではないか。
いろいろなエピソードやデータもあからさま、と言えるほどフェアに提示されていると思います。

だけど、やっぱり古い。
もしカーが「ジョン・ベリンガムの章」を書いたならば、
レントゲン写真に何が写っているか、あたりで一旦文を終えて、
章を書き換えると思うんだけどなあ。

訳者のブログで「クイーンとフリーマンの違い」を拝見していたので、
クリスティ流派に洗脳されているニンゲンとしては、
ハッタリとミスディレクションが無い(あるいは薄め)のが物足りない。
所詮はエンタメ小説なので、面白さが前に出ていないと、
「ミステリは面白い」というメッセージが伝わらないのでは?
論理学の教科書に使いたい、というエピソードは本当かもしれないけれど、
学生のときを思い出してみれば、「面白い教科書」なんてなかったですよね。

■オシリスの眼 オースティン・フリーマン
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ユーミン、山之口貘、獄門島 | トップ | ぼくのミステリ・クロニクル »

コメントを投稿

ミステリ」カテゴリの最新記事