巣立ちの時

雛は２羽いました。


驚くほど速い早さで大きくなっていく雛は、
巣からすっかり体がはみ出てしまうほどになりました。
いよいよ巣立ちの時がやってきたようです。

土曜日には、雛は１羽しかいませんでした。
勇敢な方は大空に羽ばたいていったのでしょう。
臆病そうに少し震えているもう１羽はまだ勇気がないようです。
じっと巣に縮こまって怯えています。
つい数日まで、かあさんもいたし、兄弟もいたし・・・
けれど、巣にはもう誰もいません。
自分で飛んでいかなければ食べるものを口にすることができません。
巣にこもっていては、体力がどんどんなくなってしまいます。
手を伸ばせば届く距離の巣なので、この数週間見て見ないふりして、
そっとしていたのですが、祈る思いが強くて
「早く飛びたて、頑張れ、頑張れ。」つい掛け声を掛けてしまいます。



そして今朝、玄関を出てすぐ右手にある薔薇の枝を
日課のようにのぞいてみると・・・空っぽだったんです。
とうとう巣立ちを終えました・・・
ほっと安堵したそのとき、
すぐそばの木の葉がわさわさ動きだしました。
雛が枝と葉っぱに挟まって、もがいていたのです。
空を見上げるとかあさん鳥が心配そうに、空を旋回しながら、
近くの電線に止まって、じいっと雛の様子をうかがい始めました。
「かあさんはちゃあんと応援していてくれてたのね。」
胸が暖か～くなって、とっても優しい気持ちになりました。

さあもう、これ以上人間の出る幕なしということで。
あとは、親子にお任せです。


それから数十分後、鳥たちの姿はありませんでした。
残されたのは使命を終え物寂しげに空っぽになった鳥たちの要塞。
嬉しいはずなのにちょっとさびしさも感じます。
元気でね・・・
空を飛ぶのは気持ちが良いのでしょうね・・・
（うっ、なんだかこのセリフ？！宮沢賢治がはいってます・・・
　　　　只今、次回の朗読劇に向け賢治に浸っていて、相当影響うけてます）
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