健康な人ほど花粉症になりやすい!?
現在、日本人の4人に1人は花粉症患者だといわれていますが、そもそも花粉症はどうしてこんなに増えたんでしょう…。環境の変化が原因? それとも現代人に何か問題アリ? 『鼻すっきりの健康学』の著者、アレジオ銀座クリニック院長の呉 孟達先生に話を伺いました。
「花粉症増加の最大の要因は、スギやヒノキが増えたことです。戦後すぐ、復興に必要な材木を調達するため、日本中の山々の木が伐採されました。その結果、保水力を失った山で災害が多発したため、1950年代に全国(北海道と沖縄を除く)で、一斉にスギやヒノキの植林を行ったのです。そして、スギやヒノキが樹齢30年を迎えた1980年代に、花粉患者が激増したのです」
ほかにも、近代化による環境の変化も関係あるのだとか。
「本来、飛散した花粉は土に吸収されますが、コンクリートやアスファルトの地面では花粉が吸収されず、そのまま残ります。残った花粉はクルマにつぶされたり、排ガスのダストに傷つけられて、細かくなりますが、細かい花粉は目や鼻の粘膜から、より侵入しやすくなるのです」
また、住まいの気密性が高まったため、体や衣服を通じて家のなかに入った花粉が、外に出ていかないのも要因のひとつだとか。どちらにせよ、花粉症増加の原因は、環境の変化ってこと?
「それだけではありません。現代人にアレルギー体質が増えているのも事実です。加えて、日本人が“健康になりすぎた”から花粉症が増えたともいえます」
えっ! それってどういうことですか?
「それでは、花粉症のメカニズムから説明しましょう。花粉が目や鼻に入ると、細胞が花粉を異物(抗原)として認識し、細胞の免疫機能が働いて“IgE抗体”というものを産生します。IgE抗体は目や鼻の粘膜に集まり、この状態で花粉が侵入すると、花粉とIgE抗体が結合します。そして、結合したIgE抗体の量がある一定のラインを超えると、アレルギー反応が起こり、花粉症が発病するのです」
この花粉症が発病するまでのボーダーラインは、人によって違うのだとか。
「花粉症とは、花粉という異物に対する免疫反応の表れです。健康な人ほど免疫力は強くなり、少しの花粉にも過剰反応して、IgE抗体をたくさんつくる。つまり、健康な人ほど花粉症を発病しやすくなるともいえるのです」
う?ん…。多すぎるスギに、近代化による環境の変化、免疫の過剰反応と、花粉症をとりまく背景は、なかなか複雑な模様です。
花粉症Q&A
花粉症に関する気になる疑問にお答えします。
Q.花粉症は遺伝するの?
- A.
- 花粉症の最大の要因はアレルギー体質の遺伝です。しかし、生活習慣や住環境など、他にもさまざまな要素があり、家族に花粉症の人がいても発症しないケースは珍しくありません。
Q.花粉症になる人とならない人は何が違うの?
- A.
- 遺伝的にアレルギー体質を持っているか否かが、大きな分かれめになります。それに加え、食生活を始めとする日常生活の要素が深く関わっている他、花粉が多く飛んでくるところに住んでいる人は、花粉症になり易いといえます。
Q.ある年、突然花粉症になるのはどうして?
- A.
- アレルギー体質の人は、花粉という抗原を体内に取り込むと、IgE(アイジーイー)という抗体をつくります。でも、この抗体の量が一定の水準に達するまでは、症状はあらわれません。子供のころから毎年、花粉を吸って、抗体をつくり続け、やがてその水準に達しています。そこでさらに花粉を吸い込んだとき、くしゃみや鼻水などの症状が出るのです。
Q.花粉症は体質を改善すれば治るって、ホント?
- A.
- 確かに、アレルギー体質をなくすことができれば、花粉症は治ります。しかし、これは普段の生活を変えるだけでは不可能で、医療機関で「減感作(げんかんさ)療法」を受けるしかないのが現状です。
Q.お年寄りに花粉症が少ないのはどうして?
- A.
- 戦後10余年が経った1960年代になるまで、国内で花粉症はみつかっていませんでした。現在のお年寄りに花粉症の人が少ないのは、スギ花粉の飛ぶ量が少なかっただけでなく、当時の日本人の食生活や住環境がアレルギー体質になりにくくしていたからです。
また、年をとると免疫の力が低下するため、花粉に対しても敏感に反応しなくなり、若いころほどひどくなくなる場合もあるのです。
Q.「花粉症かな」と思ったときは?
- A.
- 医師によるアレルギー検査を受けましょう。抗原(花粉)を直接皮膚につけて反応を調べる「アレルゲン皮膚反応検査」で原因の見当をつけ、後は採血して「特異的IgE(アイジーイー)検査」で抗体の量を調べれば、診断できます。