






秋田県北部の町、藤里町。これが2回目の訪問である。初めて藤里町を訪れたのは2021年のことだった。それまで幾らでも機会があったのに藤里町に行かなかったのは、世間を騒がせた児童連続殺人事件があった町だったからである。事件のことを想うと胸が締め付けられる。加害者に同情するつもりはないが、あまりに切ない事件である。更にいえば、この小さな町にはワイドショーの取材班が長期に渡り張り付き、地元住民との間に軋轢や衝突もあったと聞く。スティル写真とはいえ、カメラを手に町を歩いて良いものか逡巡したのも事実である。だが前回の訪問時に町を歩いて、藤里町はそんな暗いイメージの町ではないことも知った。今後は事件のことではなく、町の違う一面を見ていこうと思ったものだ。そこを踏まえて次に行きたかったので、敢えてもう一度触れた。
さて、藤里町の町並みの特徴は、独特の色合いである。バラバラの建物の色や風合いが微妙に混じり合い、藤里カラーともいうべきトーンを出している。基本的には茶色をベースにし、それが風雪に耐えて劣化し、何ともいえない表情を見せる。それは哀感溢れるものであるが、同時に突き抜けたような雰囲気も感じられる。北の田舎町。桜さえも咲いていない陰鬱な天候。それでも何かラテンの匂いがするから不思議である。
X-T5 / XF23mm F1.4R LM WR