ガイドブックには決して載ることのない、私的な「登米の歩き方」を掲載する。本当はガイド地図も作ろうと思ったが、歩いて探すことも楽しみの一つなので止めておいた。もっとも、これを見て実際に登米を歩く人はいないだろう。ガイドブック的な出版物は、どうしても「映える」スポットにばかり注目する。都会の喧騒から離れ東北独特の町並みを訪れた方が、わざわざお洒落なカフェに行く必要はない。そもそも登米町には、お洒落なカフェなど存在しない。それを補って余りある個性豊かなスポットが満載なのである。決してガイドブックが取り上げない(あぶら麩丼はギリ取り上げる)、登米の名所を歩いてみよう。
①天然もの看板
真っ茶色に染まったオロナミンC看板。廃業した店先に掛かっている。十年以上前も同じような姿だった。レトロを演出するツールではなく、本物だ。そしてこれがマツダランプとのコラポとなっている。マツダランプの看板は現存する中では一級品だと思う。文化財保護が必要なレベルである。これは登米の名所である。
②油扶丼
登米の名物「油扶丼」である。かつ丼の「かつ」の替わりに「油扶」を使ったものである。油扶は想像よりもボリュームがあり、適度な油感が肉の代用を超えた独特の味わいを醸し出している。これまた登米名物の「はっと汁」と合わせて食べると最高だ。はっと汁は「すいとん」のような汁物だ。ビーガンにもお勧めの料理だが、どちらも小麦粉の塊であり、フル・グルテンであることは言っておく。ちなみに両方を注文すると結構な量で、お腹がパンパンになる。育ち盛りでなければ「ハーフ」がお勧めである。写真は「大衆食堂つか勇」のあぶら扶丼。
③謎のスタンプ台
相当な年季が入ったスタンプ台が街中にある。もう十年以上前から同じような状態で、正直なところ放置案件である。謎の河童のイラストが描かれている。登米周辺には河童伝説があり、本来であればこのイラストは元祖ゆるキャラになってもおかしくなかった。だが登米のゆるキャラは「はっとン」という小麦のすいとんをモチーフにしたものになった。他にも何種類かのキャラが存在するが、河童は無視された。極めつけとしては登米市の水道マスコットキャラというものがある。ここは河童だろ?と誰しもが思う。でも「ジョーくん」という別のキャラが作られた。それだけにこの河童は涙なくして見られない。
④武者隠し
街中の民家のような建物に仕掛けられた「武者隠し」なるギミック。ハス向かいには「警察資料館」という施設があるものの、普通の街中である。良い齢をして恐縮だけど、武者隠しと言われると隠れたくなるのは人情だ。今回もそこに身を隠した。向かいの警察資料館から家族連れが出てきた。若い夫婦と4~5歳くらいの男の子だ。「ねぇー、あの人隠れているよ!。どうして隠れているのー?」とお父さんに聞く。お父さんは子供の手を引く。僕も一人で無ければ「拙者、敵から身を隠す武士にござる」とか気の利いたことを言っても良い。でも一人だとは流石に恥ずかしい。そういえばこのパターン、過去にも何回かある。年配の人に見つかり、懇切丁寧に説明を受けたこともある。貴方が隠れた場合、どんなことが起きるだろうか。
⑤廃屋
かつての登米城址の上、石垣が組まれた坂道を上ったところにある廃屋。これも十年以上前から廃屋である。何か気になって登米に来る度に見に行く。この奥はどんつきになっており、裁判所があるだけだ。裁判官の官邸だったのだろうか。何となく診療所っぽい雰囲気もある。何故解体されずにそのまま残っているのか。ここまで来たら答えは聞きたくない。想像の世界で楽しもう。
X-T5 / XF23mm F1.4R LM WR