ケルベロスの基地

三本脚で立つ~思考の経路

BABYMETAL探究(J-POPの”進化”の果てに…)その5~まとめ

2016-03-25 01:03:12 | babymetal
BABYMETALを”J-POPの進化史”のうえにおいてみると、決して単なる「孤高の存在」なのではなく、BABYMETALは、J-POPのさまざまな先達の知恵と工夫の積み重ねの果てに生まれた「J-POPの進化の最新形態」なのだ、ということが見えてくる。

『亀田音楽専門学校』シーズン3、全4回を契機・参考・刺激にしながらそんなふうにBABYMETALを考えるこのシリーズの、今回は、第2話第3話について、である(第4話はシリーズの初回に検討したので)。
前回分の記事を消してしまったのでその概要の再掲も含め、今回がまとめの回になる。

① 1988~1993年 「J-POP誕生の時代」
② 1994~1999年 「J-POP大躍進の時代~インパクト合戦の時代」(☚ これ と)
③ 2000~2005年 「J-POP文明開化の時代」(☚ これ)
④ 2006~現在    「J-POPの現在 そして未来」

まず、② 1994~1999年 「J-POP大躍進の時代~インパクト合戦の時代」について。
(ここからしばらくは、消してしまった前回分の概要です。既読の方は飛ばしてください…ごめんなさい。)

この時代のJ-POPの特徴を番組に即して概説するならば、CDが空前の売れ行きをみせるなか(1998年は、史上最高、年間4億5千万枚)、アーティスト側がそれに埋もれないよう、いかに「パッと聞き」のインパクトを聴き手に与えるか、それを追求した時代、ということになる。

そこでのポイントは、大きく2つ。
②a ハイトーンヴォイスのインパクト
②b 転調~てんこ盛り!

②aについて、いちばん「なるほど!」と思ったのが、ハイトーンヴォイスの魅力・効果とは、単に高い声を出す、ということではない、ということだ。
(裏声ではなく)地声でハイトーンを歌うことで、「ひたむき感」「一生懸命さ」を聴き手に感じさせることになる。
アーティスト側にとっては、思いやエネルギーの爆発、であり、そうした”地声のハイトーンヴォイス”によって、楽曲がパワーの象徴と化す。
それこそが、この時代のJ-POPにおける”ハイトーンヴォイスのインパクト”の意味だった、と亀田誠治は指摘する。

②bについて、それまでももちろん「転調」の見られる楽曲はあったのだが、この時代には、まったく突然の思いがけない転調によるインパクト”が実現されたのだという。その「主犯」は、小室哲哉であり、この”小室転調”と名づけられた”まったく突然の思いがけない転調”は、今やJ-POPの常套手法としてすっかり定着したのだ、という。
小室哲哉じしんが、自らの楽曲の造り方を驚き→感動→思い出という公式で語っていたのが印象的だった。

これって、どちらも、まさにBABYMETALだ!と(例によって)感じたのである。

②aは、SU-METALの歌唱の魅力の本質を言い当てているように感じる。「上手い!」と舌を巻くというよりも、「いいなあ(ジーン)」と聴き手の魂にしみいる、あの歌声(デスヴォイスならぬ、ヘヴンヴォイスとでも呼ぶべきか)には、確かに「ひたむき感」「一生懸命さ」が強く感じられるのだ。
例えば、ロブ・ハルフォードの超絶的なハイトーンヴォイスに、この、「ひたむき感」「一生懸命さ」を感じるということはない。SU-METALのハイトーンヴォイスとは、まさにJ-POPの「ひたむき」「一生懸命」なハイトーンヴォイスの精華・精髄なのだ、とも言えるのだろう。

BABYMETALの数々の楽曲は、②b「転調」だけではなく、あまりにも唐突な展開(転回)のてんこもり、パッチワーク的な構造になっている。②bのさらなる進化形、とでも言おうか。
それにしても、「驚き→感動→思い出」とは、まさにBABYMETALに遭遇し、いずれBABYMETAL中心(と言っても言い過ぎでもない)の生活を送るようになる、僕たちのBABYMETALに対する心理的態度を的確にあらわす文言にもなっていて、驚きである
前回触れた秋元康も、今回の小室哲哉も、何とはなしに僕は「仮想敵」のように心の中で扱ってきたのだが、彼らが為してきた知恵・工夫・哲学の流れの果てに、わがBABYMETALもあるのだということを再確認したのだった。

(以上が、消してしまった前回分の概要でした)

続いて、③ 2000~2005年 「J-POP文明開化の時代」について。

この時代は、前時代と対比するならば、大量の売り上げ・ヒット・インパクトを追求する時代が一段落し、落ち着いて楽曲・演奏の「質」を追求する時代になった、そんな時代だ。
R&B、ヒップホップ、青春パンク、レゲエ、ミクスチャーなどなど、新しいアーティストが次から次へと登場し、今までにない多彩な才能がJ-POP界に花開いた時代
「大ヒット曲」という縛りが解けて、アーティストが様々な自由な試みをするようになった時代。
まさに「文明開化の時代」だと番組では称される。

そこには、日本でも、音楽フェスが定着し、フェスのライヴでのノリ、その価値・意味が認識されるようになった、という事情も大きく影響している。
多くの種類のアーティストをいっぺんに楽しむことができる「楽園」が、日本にも普及したのだ、と。
また、i-pod等の普及で、(カセットテープやCDをとっかえひっかえしていた時代に比べ)音楽の聴き方もいっそう自由に多様になった、という意味でも「楽園」の時代である、と。

この時代のJ-POPの、大きな特徴は、3つ。
③a リズムの楽園
③b サンプリング
③c 生音の楽園


③aは、先に述べたようなさまざまな種類の音楽がJ-POPと融合し、”さまざまなリズムを身体で感じて楽しむ”ことが楽曲のそして歌唱・演奏の、大切な要素になった、ということだ。
番組内では、R&Bのリズム、パンクのリズム、レゲエのリズム、を各楽曲から抽出して紹介していたが、この時代のJ-POPの”進化”とは、単に「~風リズム」をオシャレな意匠として散りばめるようになったというのではなく、日本人の聴取者がそうしたリズムを本格的に・生身の身体で、楽しむようになった(楽しめるようになった)、ということだ。
典型的に言えば、「裏ノリ」を楽しめるような身体を日本人が所有するようになったのだ、と。

亀田誠治校長:談
J-POPって、なんだかんだ言って、何か、ずーっとメロディ重視、メロディ優先だった気がするわけ。
でも、この時代になって、リズムだけでも、ワビ・サビだったり、サンバの持つ陽気感だったり、いろんな表現・いろんな表情をリズムだけで出せるようになったわけ。
メロディ主義からリズム主義へ、ていうか。この時代に大きな変革があって、まさに「リズムの楽園」が花開いた気がする。

これ、”ダンスメタルユニットBABYMETAL”の核心、と言ってもよい大切なポイントだ。
もちろん、ヘヴィメタル(といっても様々なサブジャンルがあるけれど)が基調になっているのだが、そこにさまざまな”リズム”がパッチワークされていて、まさに”リズムを身体で感じる”こと(とりわけライヴ会場で)が、BABYMETALの楽曲を楽しむ、ということの中核にある

ここまでの内容で、改めて(初めて)気がついたことがある。

YUI・MOAの舞踊・スクリームとは、まさにそうした”リズムを感じる楽しさ”を観客に感じさせるために視覚化・前景化・鮮明化した「楽器」の働きを(も)果たしている
のだ。

例えば、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」。
この曲におけるYUI・MOAのスクリーム・合いの手は、歌詞の面では、「チャチャ入れ」、「生真面目なメッセージを相対化・輻輳化する”メタ”な次元」として(も)機能しているのだが、
リズムという観点から分析してみると、僕たちがYUI・MOAに合わせて「持って~」「負けないで~」「見つけちゃいや~」「イエスタデーイ」「バイバイ!」「ダメ!」と合いの手を入れるとき僕たちは必然的に「裏ノリ」を(とは限定できないかもしれないが、歌メロとは異なる”リズム”の刻みを自らの身体と声で体現することになっている、ということだ。

(「イジメ、ダメ、ゼッタイ」においては)ある意味、オールドスタイル・オーソドックスなとも言えるSU-METALの歌唱に、”進化”したJ-POP的エッセンス「リズムの楽園」を、YUI・MOAは、そして2人に導かれて僕たちは、ふりまぶしている、ということなのだ。

SU-・YUI・MOA、の、単なる「3人」というだけではない、極めて確固・鮮明な二等辺三角形の「この3人」の関係性が、こうした面でも複雑な有機的な機能を果たし、BABYMETALの楽曲を・「演」奏を唯一無二のものにしている。
改めて、BABYMETALを考え出した人って天才だろ、と言いたくなる。

しかし、少なくとも、2000年以前には、BABYMETALは生まれ得なかった、ということがよくわかった。やはり、”J-POPの進化”がBABYMETALを生み出した、のでもあるのだ。

③bは、ラップからの由来で、ゲストのリップスライムのメンバーによれば、
サビの部分だけを繰り返す、その楽しさ」じゃないのかな
ということだ。
アナウンサーに「何のために?」と質問され、一同、苦笑していたが、もちろん、それが「楽しい」「気持ちいい」から、だ。
曲の作り方が自由になった、作り手にとっての「楽園」、だと称されていたが、BABYMETALの場合、いわゆるラップ的なサンプリングもあちこちに挿入されているけれども、本質的には、やはり、
YUI・MOAのスクリームこそが、この”サンプリング”の機能をも果たしている、ということを、僕は思った(あくまでも偏った私見なので、この見解が「正しい」などと”主張”するつもりはない)。

繰り返しは省くが、例えば、やはり「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のYUI・MOAの合いの手。

「ダメ、ダメ。ダメ・ダメ・ダメ・ダメ」は、まさに、「サビの部分だけを繰り返す、その楽しさ」だし、「KARATE」の「セッセ、セッセッセ、セイヤ!」も、「ウォオ~ウォオ~オオ~」も、言ってみればそういう機能を果たすパーツであろう。
何のために?もちろん、それが「楽しい」「気持ちいい」からだ。
ここでも、SU-METALと、YUIMETAL・MOAMETALとの、二等辺三角形が…(以下同趣旨、省略)。

J-POPの”進化”によって生まれてきた「リズムの楽園」「サンプリング(の楽しさ)」少女の(舞踊と)声で体現する、という、何とも可憐で大胆不敵なYUI・MOAの”スクリーム&ダンス”

こうして考えると、YUIMETAL・MOAMETALこそが、(初見の方の多くが感じるような「邪魔」なものなどでは全くなく)BABYMETALを最新・最先端にしている「要」であることがよくわかる。(YUI・MOAがBABYMETALの「本体」である)

もちろん、それは、SU-METALの歌と神バンドの演奏、という最高級の本格的「安心」「信頼」があってのことだが。(SU-METALと神バンドがBABYMETALの「魂」である)


③c 生音の楽園。
この「生音」とは、番組内では、アコースティックな楽器の生音や、ストリングスについての指摘であった。それは現段階ではBABYMETALにはそのまま当てはまらないだろう(『METAL RESISTANCE』はどうだろうか?)が、しかし、少し角度を変えれば、これもまた、まさにBABYMETALの魅力の本質の謂、だと言ってもよいのかもしれない。

あらゆる人が口を揃えて言う、「BABYMETALはライヴが凄い!」(実際に、そうだ!)。
そこにあるのは、ギミック的仕掛けやプロデュース等の演出を超えた、音盤や映像盤さえも遙かに凌駕した、「生」の凄さこそ、BABYMETALの凄さだ、ということだ。

その核のひとつは、(またまたまた)YUIMETAL・MOAMETALの「生」声の躍動するスクリーム
さらに、神バンドによる「生」演奏の驚愕。
そして言うまでもなく、SU-METALのとんでもない「生」歌による感動

そして、3人の美(少)女が実際にステージに立ち、信じられない精度の精緻な(いっさいごまかしのきかない)「生」な舞踊を繰り広げ続ける、メタルダンスユニットであるという、BABYMETALの本質

番組では、亀田誠治校長が次のように述べていた。

90年代って、作り手も聴き手も、曲にインパクトを求めて、刺激的な曲、テクニック満載のそんなサウンドが多かったんだけれども、2000年代に入ると、人肌の体温を感じるような、そんなアコースティックな生音志向に変わっていった気がするんです。

これは、J-POPだけの特徴でもないのかもしれないが、少なくともJ-POPにおいて、徹底的にプロデュースされ、作り込まれるようになり完成度があがった楽曲・演奏だからこそ、そのインターフェイスとして「生」の”人肌の体温”がひときわ大切になった、というこの”進化”の道筋の、やはり最先端に、BABYMETALはある、と僕は思う。
(例えば、MOAMETALの微笑み、って、生楽器やストリングスによるカウンターラインの機能を果たしている、と言ってもいいんじゃないか、と思うのだ。)

番組の総括、として、亀田誠治校長はこう語る。

この時代は、J-POPが豊かになった時代だと思います。
音楽の根元、根っこにある、リズムだったり、ナマの音だったり、ナマの声だったり、そういったものが求められるようになった。
まさに人を芯から揺さぶる音楽、そういった音楽がいろんな形で咲き乱れた、本当に、J-POPが成熟して、楽園になった時代だ、と思います。


(しつこいが)これって、まさにBABYMETALだ!
と、ここでも僕は言いたくなる。

J-POPの進化によって現出した「楽園」。
その「楽園」に芽吹き、茎を伸ばし、とんでもない大輪の花を咲かせたのが、BABYMETALだったのではないか、と。

それにしても、これほど凝りに凝った楽曲、素人の僕などには(この番組に出逢わなかった)気づかないような、”最先端”の徹底的なこだわり、それを統括し、練りに練って(ある意味慎重すぎるからこそ大胆であるとも言える逆説的な)発表を続けているKOBAMETALと、
そうした(オーバー?)プロデュースに呑み込まれても「素材」としての凜とした初々しさを保ち続けている、SU-METAL・YUIMETAL・MOAMETAL(中元すず香・水野由結・菊地最愛、と言うべきか)との出逢い、
というのは、本当に「奇跡」としか言いようがない。

今回の考察でも、「この3人だからBABYMETAL」という絶対性が、より強く露わになった、と僕は思っている。

さあ、FOXDAYまで、あと600000秒余りだ!(公式HPによる数字です。…ぴんと来ないけど)














コメントを投稿