ケルベロスの基地

三本脚で立つ~思考の経路

BABYMETAL探究(週刊誌はBABYMETALをどう扱えるのか?→BURRN!問題①)

2016-06-09 01:29:08 | babymetal
気づいたら、このブログの、なんとまあ、100回目、である。

せっかくなので、何か根幹的な「探究」を、なんて考えが頭をよぎったりもしたのだが、行きがかり上、「いま」BABYMETALをめぐって考えていることをそのまま、今回も綴ろう。

『サンデー毎日』を購入した。
表紙が原田知世で、以前もここに書いたが、今までの人生で僕がコンサートに足を運んだ唯一のアイドルが、30年ほど前の原田知世だった。アルバムで言えば、『NEXT DOOR』『Soshite』『Schmatz』あたりをとりわけ熱心に聴いていたなあ。特に『Soshite』は今でも好きなアルバムである(数年前に、このあたりのCDがリマスター・ボックス・セットとして発売された際に、大人買いしたので、これ以前の『バースデイ・アルバム』『パヴァーヌ』等も含めて、「初期」原田知世のアルバムは堪能できる環境にあるのだ。・・・実際には、BABYMETALの視聴やこのブログなどに時間を侵食されてほとんどきちんとは聴けていないが・・・)。

だから、この雑誌を買うこと自体には全く抵抗はなかったのだ(原田知世ももう50歳手前だというのには驚くが、そんな今でも、彼女の透明な美しさは変わらないどころか、より洗練されているように見える。巻末のインタビューの写真も含めて、実に美しい・・・。同様の感想を持つ方も多いようだが、僕も、YUIMETALには、原田知世成分をも感じる瞬間がたびたびある。「時をかける少女」での、あの芳山和子、「理想の日本の美少女」像とでもいうべき、控えめで・でも凜とした・可憐さだ。・・・ただ、YUIMETALの凄さは、そんな美しさに溢れながら、あの超絶的な身体能力による舞踊、突出したコメント力、ユイラグ等をも併せもった、唯一無二・超絶魅力の多面体だ、というところにあるのだが・・・と、こんなことはファンの皆さんに僕が語るまでもない、全くの余談だが・・・)。

そんな美しい表紙の『サンデー毎日』だが、BABYMETALの記事は、何ともまあスカスカなものだった。

でも、よく考えてみれば、これが「一般誌の報道の標準→世間の認知の平均値」ということでもあるのではないか。
つまり、BABYMETALがこうした一般誌でとりあげられる時には、このようなレベルの言説によってこれからも紹介され続けるのだろう。

今回は、この記事をきっかけに、BABYMETALを一般の雑誌で紹介する仕方、その問題点について、少し考えてみたい。
そして、これは、さらに、ヘヴィメタルの国内ではほとんど独擅場(だった)専門誌『BURRN!』誌の問題へと敷衍される。
このへんで一度、この問題も突っ込んで考えてみたい(数回にわたって書くことになりそうなので、今回は『BURRN!』問題までは踏み込まないだろう)。

まず、問題の、『サンデー毎日』の記事を挙げておこう。
本来、まだ発売中の雑誌の記事を詳細に引用することは、ルール違反・営業妨害になるだろうから、このブログでも僕も極力避けるようにしているのだが、今回の記事は、そんなことに抵触さえしない、オリジナリティが全くゼロの、クリシェ(常套句)の羅列でしかないと僕には思われるので、遠慮せずに引用する。
買われていない方、読まれていない方も多いだろう(もちろん、読まなくても何の問題もない陳腐な記事である)から。
(段落番号①~⑥を付す)

(見出し)「坂本九」以来53年ぶりの快挙 「ベビーメタル」に大器の予感

①日本のアイドルが快挙を達成した。

②3人組女性ユニット「BABYMETAL」のアルバム「METAL RESISTANCE」が4月、米ビルボードの総合アルバムチャートで39位に初登場した。ビルボードジャパンによると、日本人の「トップ40入り」は故・坂本九さん以来53年ぶりという。

③ベビーメタルは2010年結成。ヘビーメタル調の曲に日本語の歌詞を乗せて、SU-METAL(18)が歌い、YUIMETAL(16)とMOAMETAL(16)が激しいダンスで両脇を固める。アイドルグループ「さくら学院」から派生し、代表曲に、体重を気にしつつ甘いものが食べたい乙女心を歌った「ギミチョコ!!」などがある。

④昨年は欧米など10カ国を回る世界ツアーを実現。国内よりも海外での人気が先行している。ヘビメタに詳しいレコード会社「ハウリング・ブル」の小杉茂社長は「10代の可愛い女の子が活躍するヘビメタバンドは世界的に例がない。新鮮さがウケたのではないか」と分析する。人気歌手レディー・ガガも、ツアーの前座に3人を起用したほどだ。

⑤しかし、基本は可愛いアイドル。「正統派のヘビメタではない」との批判もあるが、音楽プロデューサーの山口哲一氏は「それこそが成功の理由」と指摘する。低音の効いた演奏でヘビメタファンを振り向かせつつ、日本語歌詞とポップさも兼ね備えた曲でアニメや漫画など日本の「カワイイ文化」を好む若者を取り込んだのだ。「ヘビメタもクールジャパンも世界的にはニッチな市場。だがファンの横のつながりが強いので、SNSなどを通じて短期間で知名度を上げられた」(山口氏)

⑥9月には初のドーム公演を予定するなど、日本でもブレーク間近。所属事務所は人気俳優・福山雅治と同じで、「(福山の結婚による)ファン離れで業績低迷か」とも囁かれたが、ベビーメタルが新たな稼ぎ頭になるかもしれない。

(女性記者?ライター?の署名あり)


ここにあるのは風評である。「記事」ではない。
端的に僕の感想を述べるならばこういう文言になる。

こう言いたくなるのは、この、(女性)記者の署名付き記事(コラム?)が、記事内容からこの筆者はBABYMETALを体験していないどころか、視聴さえしていないのだな、ということが明らかであるからだ。

BABYMETALを語る際の恐ろしさは、こうした、「情報のコピペ」「印象」「先入観」「常套句の組み合わせ」による記事を、それと炙り出してしまうところにある。

まさに「百聞は一見にしかず」。
「百聞」と「一見」とで、これほど評価ががらりと変わってしまう対象もそうはない。

ただし、「一見」といっても、PVを数本流し見しただけでは、「一見→ソッ閉じ」という反応がBABYMETAL遭遇体験の王道であることからわかるように、BABYMETALの「凄さ」はわからない。
ファンにとっては素晴らしい番組だった過日の『Mステ』であっても、1曲しか「演」奏はしていないから、やはり「BABYMETALとは何か?」の核心は見えないだろう。

BABYMETALの場合の「百聞は一見にしかず」の「一見」とは、例えば、「ソニスフィア映像」「メトロック映像」といった、30分程度のフェスのものでよいから、ライヴ映像を視聴すること、だ。

もちろん、市販されている映像作品『LEGEND I・D・Z』『LEGEND 1999&1997』『LIVE AT BUDOKAN』『LIVE IN LONDON』に収録のどれか1公演(できれば全て)、あるいはWOWOW放映の昨年度のアリーナ3公演のいずれか(できれば全て)、であれば、文句はない。
さらには、もちろん、一度でもライヴを体験した人の書く記事であれば、申し分ない。

たとえ、それが批判的な内容を含んだものであっても、実際にBABYMETALのライヴを(映像であっても)体験したうえで書かれた記事であれば、織り込まれる「客観的情報の内容」は変わらなくても、「書き方」は必ず変わってくるはずなのだ。
上記の記事には、それが全くない。対象を見もせずして書いた記事もどき(コラム)、だからこれは「風評」なのだ。

具体的には、①③④に見られる「アイドル」、④⑤に見られる「可愛い」という文言だ。

僕も、BABYMETALは、「アイドル」であると言いたいし、「カワイイ」とはまさにBABYMETALの武器(例えばインギーの速弾きや、ロブ・ハルフォードのハイトーンヴォーカルにも匹敵するものだ)と思っているが、しかし、この記事には全く納得できない。

なぜか?

それは、この記事が、「すでに読者のもっている理解の枠組みに、BABYMETALをあてはめよう」つまり、「BABYMETALがわかった、と思ってもらおう」という目的で書かれているからだ。

一般雑誌でのBABYMETALの記事とは、本来的にそうしたものにならざるをえない。

「BABYMETALって何だ?」という問いかけに続いて「BABYMETALってこういうものですよ」という「答え」が来るのだ。

”何か”が「わかる」とは、自分がもっている常識・知的枠組みとその”何か”がつながる、ということだ。
未知だった”何か”が、自分がすでにもっている知的枠組み・認知のマップの中に整合性をもって位置づけられるということだ。

上記の記事を読んだ人は、「ああ、なるほどね」とBABYMETALを理解する。
そして、客観的な情報の内容としては、上記の記事には明らかな間違いはない。
つまり、それなりに正しくBABYMETALを理解するのだ。

しかし、正しく理解できるBABYMETALって、何なのだ?

今回の記事だけでなく、(このブログでも何度か取り上げた)マーケティング的な「BABYMETALの成功の秘訣」という文章に感じる違和感、その核心はここにあるのだと思う。

空前絶後。
唯一無二。
「なんじゃ、こりゃ!」
「AWESOME!」
この3人が揃うって、奇跡だよな(涙)!
圧倒的な楽しさ!カワイさ!カッコよさ!
どんな体力してるんだ!こいつら、バケモノかよ!?


実際に、BABYMETALのライヴを体験したり、あるいはフル尺のライヴ映像を視聴したり、そうすれば「必ず」感じることになるこれらの感想

これが、BABYMETALの魅力である。

つまり、「今までにこんなものは体験したことがない!何だこれは!?」と圧倒されることが、BABYMETALとの遭遇の本質なのである(そうですよね?)。

その衝撃を何とか自分自身に説明したくて、僕たちオッサンは、「BABYMETALを熱く語る」のである。
このブログもまさにそうだ。
決して「正解」があるわけではない。
生涯ではじめて出会う、正体不明の「天国(?・・・あるいは楽しい地獄?)」、こんなものが自分の人生に降臨するなんて思ってもいなかった、その衝撃。
それが僕たちの「語り」を誘うのだ。

「探究」なんて格好つけたタイトルを付しているが、それは、要するに、BABYMETALが「深淵」「泥沼」だからこその、果てしない自問自答だ、ということだ。
毎回(今回も)わかったかのようなことを書きつらねているが、BABYMETALはいつでも僕たちの「予想の遙か斜め上」を行くのだから。

メタル・ゴッドとの共演って!・・・
えっ、東京ドーム、2DAYS!?・・・

まさに「ONLY THE FOX GOD KNOWS
人知を超えた、(ある種)狂気のユニット、それがBABYMETALなのだ。

ところが、一般誌の記事とは、その性質上、読者のもっているリテラシーによって読解できる情報の質・量のなかで、”何か”を読者に理解させる、腑に落ちさせる、そのために書かれているのだから、BABYMETALの魅力の本質である人知を超えた空前絶後・唯一無二の「なんじゃこりゃ!」の狂おしく激しき楽しさ、なんてものはオミットされざるをえないのだ。

したがって、わかった顔をして書けば書くほど(客観的な情報としてはいくら正しくても、あるいは、正しければ正しいほど)、BABYMETALの魅力の核心はとりこぼすことになってしまう、のだ。

「BABYMETALがわかった」と思う/言うことは、ほんとうにはBABYMETALがわかっていないことの何よりの証左である

こんな、嘘つきクレタ人のパラドックスめいた構造が、BABYMETALにはあるのだ。

『サンデー毎日』の記事に戻ろう。

記事の基調となっている情報は、正しい。
確かに、BABYMETALはアイドルである。

「いや、そうではない、彼女たちはもはや世界的なアーティストだ!」とおっしゃりたいファンも数多くいらっしゃるだろうが、僕はむしろ積極的にBABYMETALはアイドルだ、と言いつづけたい。

「アイドルではなく、アーティストだ」というのも、やはり既存の認知の枠組みに当てはめた考え・言説だ
それではBABYMETALの「狂った凄さ」をとりこぼしてしまう。

彼女たちはアイドルだ、と見ていた方が、圧倒的におもしろい。事実、彼女たちはとんでもなくおもしろいアイドルなのだから。

しかし(あるいは、しかも)、そのアイドルとは、今まで僕たちが知ってきた・体験してきたアイドルとはまったく別次元のアイドルなのだ。

ソニスフィア、レディング&リーズ、そしてダウンロードと、年々、より大きな規模のメタル/ロック・フェスのメインステージに登場し、その圧倒的なパフォーマンスで、数万人の(懐疑的な、時にはヘイタ―も含む)海外の観客の度肝を抜き・魅了し、回心させる、「可愛いアイドル」だ
(今年のダウンロード・フェスはまだ、だが・・・)

あはは。
笑ってしまうが、でも、皆さんご存じの通り、これは掛け値なしの事実・実績である。

これを知ったうえで書くならば、たとえ「アイドル」という文言を用いたとしても、『サンデー毎日』の記事のような書き方にはなるはずがないのだ。
さすがに、『ヘドバン』誌ほどの熱量を、とまでは言わないが、”あの”BABYMETALのライヴをそれなりに体験した後では、書き手の筆致も「必ず」それなりの熱を帯びる。
それは、読み手(BABYMETALファン)にはありありと伝わるのだ。

③・・・ヘビーメタル調の曲に日本語の歌詞を乗せて、SU-METAL(18)が歌い、YUIMETAL(16)とMOAMETAL(16)が激しいダンスで両脇を固める。・・・
  ↓
⑤しかし、基本は可愛いアイドル。・・・

などという書き方になるはずはないし、

「新鮮さがウケたのではないか」
という、”ヘビメタに詳しいレコード会社「ハウリング・ブル」の小杉茂社長”の分析(これはこれで客観的な情報としては間違いではない)をまるで「正答」のように引用することもないはずだ。

ライヴ(映像)を(せめて30分間)観れば、何をさておいても、その(神バンドの超絶的な演奏と有機的に絡み合った)3人の圧倒的なパフォーマンスこそが、「ウケた」ことは明らかだからだ。
まともな感性・常識的な思考力があれば、そう思わないはずがない(ですよね?)

⑤の、「低音の効いた演奏でヘビメタファンを振り向かせつつ、日本語歌詞とポップさも兼ね備えた曲でアニメや漫画など日本の「カワイイ文化」を好む若者を取り込んだのだ。
(これが「山口哲一氏」の分析かどうかははっきりしないが)
こんな安易な「方程式(というか、単なる「足し算」だが・・・)」によってBABYMETALが世界規模で「ウケた」のではないことも、ライヴを観れば明らかだ。
代入する具体的な数値によって成り立つ/成り立たないが分かれる方程式なんてものは、方程式ではない。
BABYMETALがこのBABYMETALだから「ウケた」、ということ、
だから、他の誰も真似ができないのだ、ということ。
これも、ライヴ映像を30分観れば明らかである。

そして、まさに、BABYMETALを語るときのクリシェの王様「クールジャパン」。
そんなものとBABYMETALが全く無関係どころか、むしろ対極にあることも、ライヴ映像を30分観れば明らかなのに・・・。

懸命に髪を振り乱し、汗を跳ね飛ばしながら、笑顔で、あるいは凜々しい表情で、言葉の壁を超えて、観客を扇動し続ける、3人の姿(それを超絶演奏で支え続ける神バンドの姿)。そこからもたらされる、いままで観たことも聴いたこともない、「狂喜」。

それを目の当たりにしたうえで「クールジャパン」などという気の抜けたぬいぐるみのような文言を使える書き手などいるはずがない。
「燃える(→その結果、おっさんが「萌える」)熱い鋼鉄魂(メタル・ハート)」
まさにそれを体現する姿が、BABYMETALなのだから。

・・・にしても、少なくとも商業誌に掲載する記事・コラムを書く際に、その対象であるBABYMETALの、30分程度のライヴ映像を観るという、プロの記者・ライターならば最低限の準備・調査をさえもせずに、伝聞(ネット上等の記事?)と、微妙に(あるいは大いに)本質からずれた「識者」のコメントだけで署名記事として発表する、などというのは、恥さらし以前に、大胆というか厚顔無恥というか、何とも呆れてしまうしかない。

ここで個人攻撃をするつもりはないので、今回の記事・コラムの記者(ライター)名を挙げることまではしないが、これまでもこれからも、数々の媒体で、
BABYMETALをわかったかのように語ることで、全くわかっていないことが露呈され、書き手の無恥・厚顔がさらされてしまう」という
BABYMETALをめぐる「踏み絵」効果は、発揮されつづけられることになるのだろう。

(つづく)

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