ケルベロスの基地

三本脚で立つ~思考の経路

BABYMETAL探究(「リスペクト」考~「仮面ライダーアマゾンズ」を観て)

2018-03-02 11:53:59 | babymetal

遅ればせながら、「仮面ライダーアマゾンズ」シーズン1&2、全26話を見終わった。
というのも、つい先日、Amazonプライムに入り、この作品に出逢うのが、つい最近になったからだ。

勢いでAmazonMusicにも加入し、その凄さにもびっくりしているのだが、これはまた記すことにして、
今回は、「仮面ライダーアマゾンズ」を観ながらBABYMETALについて改めて感じ入ったことがあるので、
そのことを記しておきたい。

ネタバレになるので、「仮面ライダーアマゾンズ」についての詳細は書かないが、
驚天動地、戦慄必至の、SFヒューマン・ドラマになっている。
このレベルの番組が、タダで観られる(プライム会費は必要だが)とは、
配信、恐るべし。
すでにご覧になった方も多いだろうが、
もしもAmazonプライムに入っていて、つまりAmazonビデオを視聴できる環境にあって、
この作品をご覧になっていない方がいらっしゃったら、是非是非ご覧になることをお薦めする。
あ、家族一緒にとりわけ小さなお子さんと一緒に、は絶対に無理な番組なので、ご注意を。

平成仮面ライダーシリーズは、子ども達が小さかったこともあり、
「クウガ」「アギト」「龍騎」「555」までは、子ども達以上に自分が夢中になって観ていた。
昭和の仮面ライダーとは異なる、ハードな世界観、大河ドラマ的な緻密なストーリー、
イケメン・美女の俳優群、と、「子どもも、(かつてのライダー世代の)親も楽しめる」
上質のエンタメであった。「アギト」「龍騎」「555」は、映画も観に行ったなあ。

「仮面ライダーアマゾンズ」も、そうしたハードなストーリーの大河ドラマの延長線上にあるのだが、
地上派テレビではない配信であるがゆえの、よりハードな設定、ストーリーである。
「食人」なんてテーマ(ネタバレだが、これは公然のものなので、視聴の楽しみを削ぐものではないはず)は、
絶対に日曜朝のお茶の間では放映できないものだし、ギリシャ悲劇を思わせる「宿命」の圧倒的な悲しさは、
子どもには理解・体感不能だろうし。

で、今回、BABYMETALのことと重ね合わせながら、特に感じ入ったのは、
毎回のドラマの冒頭にクレジットされる「原作 石ノ森章太郎」についてだ。

脚本は、(あの「龍騎」の)小林靖子氏であり、
この「仮面ライダーアマゾンズ」の設定やストーリー展開を石ノ森章太郎じしんが生前に考えていた、
などということは決してない。
でも、冒頭には「原作 石ノ森章太郎」とクレジットされるのである。
最近の日曜朝の仮面ライダーは視聴していないので未確認だが、僕と子ども達が観ていた上記のシリーズでも
ずっと同じクレジットはあったので、おそらく現在でも同じだろう。

「仮面ライダー」を生みだした石ノ森章太郎の「魂」を受け継ぎながら、
その時代の最先端をつくる
それが、リスペクトだ。

「仮面ライダーアマゾンズ」に、僕は、とりわけそれを感じた。

1号ライダー以来、<異形の(にされてしまった)悲しみ。それでも、人間を守るために戦う>
このハードでダークな世界観が、仮面ライダーの根幹にある。
その「魂」の系譜の刻印が、冒頭の「原作 石ノ森章太郎」にあるのだ、と、
視聴を重ねながら痛感したのだった。

それと、昭和の「仮面ライダーアマゾン」の様々な要素を換骨奪胎しながら、
実に見事に散りばめてある。
これも、またひとつのリスペクトだ。

いま改めて観たならば、ツッコミどころ満載で、ほとんどギャグにも見える昭和「アマゾン」
(Amazonビデオで第1話を観直してみたが、あまりにも破天荒な設定・展開に、力強い魅力を感じた)
を、今、大人の鑑賞に耐えうるクオリティの高いドラマに仕立て上げている。
その姿勢・手際。
これこそ、真の意味で「原作 石ノ森章太郎」から生み出された精華だ。

・仮面ライダー最初期のもつ「怖さ・不気味さ」
・アマゾンライダー、腕輪、ベルトのデザイン
・野性
・モグラ獣人(の悲劇)
・第1話 蜘蛛 → 第2話 蝙蝠 の怪人ラインナップの様式美

等々、「原作 石ノ森章太郎」ライダーの”ツボ”はきちんと踏まえた上で、
最先端の映像・ドラマとして、スタイリッシュな完成度へと洗練させる。
そういう意味での、正当なリスペクトだ。
全26話のタイトルが、頭文字A→B→・・・→Zで構成され(最終話は「AMAZONZ」という尻文字)、
第1話「AMAZONZ」→最終話「AMAZONZ」、と循環する構成も見事だ。

これは、
BABYMETALが、「鋼鉄魂」を引き継ぎながら、メタル成分を全く別の次元にリファインし、
これまでになかったまったく新しいライヴパフォーマンスをみせる、
という「メタル」への正当なリスペクトと大いに重なるものだ。

単に、表面的な「いわゆるメタル」「メタル風」の再生産をするのは、正当なリスペクトではない。
真に「メタル」の魂を大切にしているからこそ、
全く前例のない「なんじゃこりゃ!」に挑戦し続けているのだ。

「洗礼の儀」WOWOWのCM映像、わずか30秒だが、じつに神々しい。
こんな神々しいメタルなど、これまでに存在しなかった。
3人の(当日は2人での演奏になったが)大和撫子による<メタルダンスユニット>
という先例のないかたちだからこそ、生み出された神々しさだ。

ということを改めて痛感したのだった。

さらに、(これは「リスペクト」というテーマから大いに外れてしまうが)
駆除班の紅一点、高井望(演者:宮原華音)にはBABYMETAL好きならば必ず心惹かれるはずだ。
チーム一の毒舌で、女の子っぽいふるまいは全く見せない、戦う美(少)女。
他の男性メンバー達が、銃を武器に戦うのに、彼女は手刀・足刀を装着して肉弾戦を挑む。
初登場時から消えない、ほほの傷跡も凜々しい。

格闘シーンはスタントではなく、宮原華音じしんが演じているのだが、
空手経験者である彼女のキレのあるバトルは、実にカッコイイ。

とりわけ、(視聴した多くの方が、印象的なシーンとして挙げているが)、
ある回で、普段は戦闘服で戦う彼女が、作戦上、私服で侵入し、そのまま怪人と戦うシーンがある。
スカート姿でのバトルになるのだが、
これってYUI・MOAじゃん!
と思ってしまった。

この、戦う美(少)女、という成分は、昭和ライダーにも、旧来のメタルにもなかったもので、
この胸躍らせるカッコよさ、は、やはり最先端のものだ。

この「戦う美(少)女」という成分まで取り入れた、BABYMETALのステージとは、やはりとんでもなく「濃い」ものだ。

それを再確認した。


この春には、「仮面ライダーアマゾンズ」完結編が、劇場で公開されるそうで、
間に合ってよかった、と思いつつ、
子連れもいるだろう劇場版で、この配信版の世界観を損なわないのは無理じゃないのかな、
という不安もあるのだが・・・。

いわゆる「地上派テレビ」的な穏当なものではない、突き抜けた、「なんじゃこりゃ!」の魅力。


「仮面ライダーアマゾンズ」とBABYMETALには、大いに重なるものがある。