ケルベロスの基地

三本脚で立つ~思考の経路

BABYMETAL探究(巨大天下一メタル武道会~MOAMETAL「最強」説3)

2015-11-22 21:49:46 | babymetal
「BABYMETAL DEATH」での、MOAMETALによる「MOAMETAL DEATH!」のキメ笑顔

あの何とも魅力的/挑発的な笑顔は、
a〈アイドルな笑顔〉なのだろうか?それとも、b〈メタルな笑顔〉なのだろうか?
今回は、そこを焦点として、MOAMETALの「最強」ぶりを探究してみよう。

と、その前に、まず、この「BABYMETAL DEATH」という楽曲の、いわば”狂気に満ちた楽しさ/カッコよさ”は、BABYMETALの楽曲のなかでも、とりわけ無類である、ということに(皆さんには「釈迦に説法」でしょうが)改めて言及しておきたい。

BABYMETALの楽曲のなかでも無類、ということは、この世のありとあらゆる音楽のなかでも、「なんじゃこりゃ!」度においてのある極点に位置するものだ、ということになる。
この(いい意味で)”狂った”楽曲は、古今東西のロック史のなかに燦然と輝く1曲なのだ(少なくとも、僕にとっては、そうなのだ)。
いや、もちろん、へんな曲というだけならこの世に星の数ほどあるかもしれないが、この、「BABYMETAL DEATH」の、カッコよさ・可愛さに満ちた疾走ヘヴィ・メタル・チューンであるがゆえの「なんじゃこりゃ!」感の横溢、これは、まさに、「唯一無二」と形容するしかない。

と言いながら、(このことは何度か触れたが)この「BABYMETAL DEATH」だけではなく、BABYMETALのすべての楽曲が、”唯一無二のBABYMETALらしさ”(ある種の”狂気”)の体現であり、これこそが、「オンリーワンのジャンル」ということの内実(のひとつ)なのだろう。

BABYMETALに似たバンド・ユニットがいくつかある、という意味での「ジャンル」ではなく(それだと、もはやオンリー・ワンではなくなってしまう)、BABYMETALのすべての楽曲が、「アイドルでもメタルでもあり、アイドルでもメタルでもない、BABYMETAL」としか言いようのない、他に類のない魅力をいつも持っている、ということだ。そうした楽曲・パフォーマンスの集成、それがジャンルとしてのBABYMETAL、ということだ。
(例えば、本日のオズ・フェスというガチのメタル・フェスで、「あわだまフィーバー」が演じられたというではないですか!「まさか!」ですよね。でも、それこそがBABYMETALなのだ、と。)

そうしたオンリー・ワンの楽曲群のなかでも、「BABYMETAL DEATH」こそは、とりわけオンリー・ワン、なのだ。

アルバム『BABYMETAL』のオープニング曲であり、多くのライヴでのオープニング(あるいはアンコールの幕開け)であるのは当然である。
いまや「伝説」というべき「神」番組、『BABYMETAL現象』も、
冒頭のメタル没落の状況紹介→世界を沸かせるBABYMETALの映像数枚→「BABYMETAL DEATH」の爆音疾走→タイトル「BABYMETAL現象~世界が熱狂する理由~』がバーン!、と、ここまでの3分40秒で、すでに鳥肌モノだ。ここまでで、心を鷲掴みにされた新規の方も少なからずいたのではないか。
(そして、そのあとのロンドンでバスの中からファンの行列を目にして「わー」「きゃー」言う3人の可愛い姿、など、さらに、多次元での魅力の攻撃が休むことなく繰り出される)。

そして、そこで「演」奏される、「MOAMETAL DEATH!」の「キメ笑顔」は、「BABYMETAL DEATH」の”狂気に満ちた楽しさ/カッコよさ”の最大の核のひとつである。あの笑顔があるのとないのとでは、この曲の”狂気”の迫力・味わいはまったく違う。
(また、音盤だけ聴いていても、「SU-METAL DEATH!」「MOAMETAL DEATH!」につづく、「MOAMETAL DEATH!」の発音のうわずったキレの良さ、はじけた楽しさ(「モアメタルでふっ!」)は、やはり無類である。)

BABYMETALに出会ってから、僕の場合は、まだ1年と2カ月なのだが、しかしほぼ毎日「BABYMETAL DEATH」も聴き倒しているわけで、まあ、かなり聴き込んでいる方だと言ってよいはずだが、それでもいまだに、この曲には「なんじゃ、こりゃ」と震撼させられることがよくある(まあ、BABYMETALの全ての曲がそうなのだが。そうした、いくらでもしゃぶりつくせる、というのは、それだけBABYMETALの楽曲群が、練りに練られていることの証なのだろう。鑑賞期間の射程が極めて長い、というか、鑑賞に足る深度が底なしに深い、というか。このへんの「飽きない」をめぐる考察もそのうちきちんとまとめたい)。

この曲中に、3回の「MOAMETAL DEATH!」のキメ顔があるのだが、必ずしも3回とも同じ顔ではない。
というよりも、ライヴごとに、その3回の表情(の組み合わせ)も異なる

というか、そもそも、この楽曲の「演」奏としては、「笑顔」を見せないのがデフォルト(初期設定)であったはずなのだ。(今から振り返れば、この曲のキメ顔にふさわしい「笑顔」を、当時のMOAMETALはまだつくれなかった、ということになるのかもしれない。)

ざっと、最初期の映像から、「BABYMETAL DEATH」における「MOAMETAL DEATH!」の3回の表情の変遷をざっと瞥見してみよう。

以下、笑顔か笑顔でないかは、まあ客観的に判断できるが、a<アイドルな笑顔>なのか、b<メタルな笑顔>なのかは、現段階での僕の個人的な印象である。次に視聴した際には、aかbかの判定は変わるかもしれない。

より、ドヤ度や挑発度の高いのがb〈メタルな笑顔〉で、そこまで挑発的ではないチャーミングな美少女ぶりを見せるのがa〈アイドルな笑顔〉だ。

aとbとの差は、気合の入れ方やあるいはカメラに映る角度によって見え方や印象が微妙に変わる、ということもあるだろうし、あるいは、MOAMETALが意識的に顔を演じ分けている(いわゆる「顔芸」)のかもしれない。

① 『 LEGEND I 』 2012.10.06
1回目 真顔
2回目 真顔? 直後には笑みを浮かべている
3回目 真顔
MOAのジャンプのタイミングが遅れたりもあった。

② 『 LEGEND D 』 2012.12.20
1回目 真顔
2回目 真顔 (顔をつくる余裕がない、という感じ)
3回目 真顔
とりあえず振り付けとおりに、あごをあげる、という所作に見える。

③ 『 LEGEND Z 』 2013.02.01
1回目 真顔
2回目 やや、a〈アイドルな笑顔〉が淡く見える気がする
3回目 真顔

ここに至って、初めて笑顔らしきキメ顔が登場したが、はっきりとした笑顔ではない。笑顔ナシがデフォルトだった、ということの内実はこのことだ。むしろ、MOAMETALを含めた3人は、まるで木偶(でく)のような感情をもたない操り人形を演じているかのようにも見える。

④ 『 LEGEND 1999 』 2013.06.30
1回目 ロングの映像でまったく表情は見えない。
2回目 微妙。だが、真顔でキメて、すぐに表情を緩めている、と判定。
3回目 これも微妙。2回目同様、真顔でキメて表情を緩めている、と判定。

③④をみると、2回目のキメ顔は意識的に笑顔をつくろうとしているのかもしれないし、
「DEATH」の「エ」の発音によって口元が笑顔に近くなるのかもしれない(写真撮影時の「チーズ」に近い効果)、とも思う。
いずれにせよ、最近の明らかなキメ笑顔(後述)ではないこと、しかし、①とくらべるとキメの表情に余裕ができてきていること、は間違いないだろう。

⑤ 『 SUMMER SONIC 2013 』 2013.08.10
1回目 すまし顔(キメ顔の後も、闘う顔を見せ続ける)
2回目 すまし顔。(キメ顔を緩めた後は、柔らかな笑顔に近い表情を見せる)
3回目 すまし顔。その後も真剣な顔だ。

「1万人のステージに挑むのである!」と紙芝居で宣言される「天下一メタル武道会」。
笑顔を見せてなどいられない、ということだろうか。
フル神バンドによるライヴのオープニングらしい、緊張感・闘争心に満ちた表情である。

⑥ 『 LEGEND 1997 』 2013.12.21
1回目 b〈メタルな笑顔〉(スロー確認)
2回目 真顔。
3回目 ナシ

1回目、映像の角度が見にくいのだが、コマ送りで確認すると、鋭い眼光に笑みの組み合わせの〈メタルな笑顔〉が確認できる。ほんの一瞬だが、この笑顔、初登場、だ。
この「BABYMETAL DEATH」は、聖誕祭なのに、途中からSU-METALが十字架にはりつけになる変則ヴァージョンで、3回目の「MOAMETAL DEATH!」は演じられなかった。

⑦ 『 赤い夜 』 2014.03.01
1回目 真顔(笑顔ではない)、
2回目の「MOAMETAL DEATH!」は、〈アイドルな笑顔〉(優しいやわらかな笑みである)、
3回目の「MOAMETAL DEATH!」はまた真顔、のようである。

2回目のキメ顔は、はっきりと「笑顔」である。⑥の〈メタルな笑顔〉は通常再生では印象に残らない一瞬のものなので、はっきりとMOAMETALのキメ笑顔がこの「BABYMETAL DEATH」に降臨したのは、この『赤い夜』が初めてである。

⑧ 『 黒い夜 』 2014.03.02
1回目は、a〈アイドルな笑顔〉(?)笑顔かどうか、判定は微妙ではあるが…。
2回目は、真顔、
3回目は、また真顔、のようである(「デス」の「ス」の口が微妙に笑んでいるようにも見えなくもないが、笑顔とはいえまい)。

2日連続の公演、初日とは明らかに表情の組み合わせが異なる。
YUI・MOAバトルを考察したときにもそうだったが、単純に、ある時からこう変化したと言えないところが、BABYMETALの奥深さであり、「探究」のしがいがある、とも言えるところだ。

⑨『 The FORUM 』 2014.07.07
1回目は、顔がよく見えず、
2回目は、ドヤ感満載のb<メタルな笑顔>(笑顔を通り越して顰め面にさえ見える)であるが、
3回目は、笑顔ではあるが、もう少し控え目なa〈アイドルな笑顔〉

3回中2回キメ笑顔を見せる「演」奏は、初めて、である。①~③などと比べると明らかだが、「笑顔でキメる」表情が、この頃には堂に入りつつある。
この⑨の2回目と3回目を、a〈アイドルな笑顔〉とb〈メタルな笑顔〉の典型例としたい。

しかし、この表情の組み合わせが固定化されたわけではなかった。

⑩ 『 SUMMER SONIC 2014 』 2014.08.16
1回目 すまし顔(凛とした勇ましい顔)でキメて、ほどけた顔は笑顔に近い柔らかな表情だ。
2回目 b〈メタルな笑顔〉<メタル>だと感じさせるのは、目つきの鋭さである。口元は笑顔ながら、目つきは戦う時のそれだからだ。
3回目 すまし顔。1回目よりは勇まし度の低い、MOAMETALの真顔に近い表情だ。

2回目ははっきりとした<メタルな笑顔>だが、1回目・3回目は笑顔ではない。


⑪『WORLD TOUR 2014 幕張メッセ』 2014.09.14
1回目 a〈アイドルな笑顔〉
2回目 a〈アイドルな笑顔〉 ほとんど同じ笑顔の繰り返しだ。
3回目 a〈アイドルな笑顔〉だが、笑顔の余韻のなかで、”ドヤ顔”も見えるので、多少bも混じっているといってよいかもしれない。

ついに出た!3回ともの「キメ笑顔」!
ワールド・ツアー最中の、いわば凱旋公演に降臨した、微笑の天使による、「MOAMETAL DEATH!」の3度の「キメ笑顔」!。
ここでは、戦う顔ではなく、愛らしい<アイドルの笑顔>を見せている。
やはり、ホームだという安心感が滲み出ているのだろうか。そうだとすれば、日本のファン大感激だし、そういう風に思わせるような「顔芸」だとすれば、それもまた大したものだ。

⑫『 BRIXTON 』 2014.11.08
1回目は、顔がまったく見えず、
2回目は、真顔、
3回目も、はっきりは見えないが、真顔のように見える。

あれ?という感じ。⑨~⑪と笑顔率が上昇してきたのに・・・。
やはり、必ずしも時系列に添って、単純に、ということではないのだ。

そして、表情ではないが、ここまでの「演」奏では、MOAMETALは、「B!」「A!」「B!」「Y!」「M!」「E!」「T!」「A!」「L!」で身体を前に折って、起き上がり両手を掲げる動きの際、膝を折っている。YUIMETALが両脚を伸ばしたまま、腰を支点にしての上半身の折り畳みをしているのと比べると、MOAMETALの、華奢さが仄かに伺われる。腰を痛めないための配慮、あるいは、腹筋・背筋の未熟さ、ということだろう。
(これは、MOAMETALうんぬんではなく、YUIMETALの身体能力のバケモノぶり、を賞すべきなのだろうが)。

2015年に入る。

⑬ 『 新春キツネ祭り 』 2015.01.10
1回目 b〈メタルな笑顔〉。鋭い流し目つきのドヤ顔!
2回目 a〈アイドルな笑顔〉。1回目よりは柔らかな、落ち着いた笑顔だ。
3回目 b〈メタルな笑顔〉!これも、もう顰めっ面に近い笑顔だ。それがカッコよくってカワイイのだ。

また、3度とも笑顔!
そして、3回目の「ドヤ!」度の高さ!
何か、余裕・安定感さえ感じさせる「笑顔」を3度繰り出すのだ。
⑫とは、緊張感等も違ったのかもしれない。
何しろホームでの、『キツネ祭り』なのだから。

そして、このライヴから、MOAMETALも、折り畳みの際に、膝を曲げなくなる。(「L!」では、YUI・MOAともに、次の動きへと勢いをつけるためのバネとして膝を曲げる)。
でも、これって、動きは単純だけど、サマソニの映像を見て、えげつない角度だな!と震撼させられた。いくらふだんからお辞儀の深い3姫だといっても、これをライヴの現場でやっているのだからなあ…。
これ、おっさんにはとても無理、一発で腰をやられる、というレベルの折りたたみである。
MOAMETALの明らかなヴァージョン・アップを、この動きにおいて(も)痛感させられるのだ。

そして、
⑭ 『 巨大天下一メタル武道会 』 2015.06.21  では、
1回目 a〈アイドルな笑顔〉b〈メタルな笑顔〉の融合、b寄り。
2回目 a〈アイドルな笑顔〉b〈メタルな笑顔〉の融合、a寄り。
3回目 a〈アイドルな笑顔〉b〈メタルな笑顔〉の融合、ジャスト中間。


そう、ここでも、3度とも「笑顔」で、しかも、可愛らしさを放ちながら、ドヤ顔の挑発も含む「笑顔」である。
成田亨の言う「本当に強い者は戦う時にすこし笑っている」をまさに具現する「笑顔」であり、さらに、
ここでのMOAMETALの笑顔には、単純にaともbともいえない、もっとふくよかな豊かな感情の横溢さえも伺われる、のだ。
次回考察することになるはずの、c〈最愛な笑顔〉あるいはd〈最愛の笑顔〉という新たな概念が必要になるのは、例えばこのへんを語るためである。

そして、つい先日放映された
⑮ 『 SUMMER SONIC 2015 』 2015.08.15  では、
1回目 b<メタルな笑顔>
2回目 a<アイドルな笑顔>
3回目 b<メタルな笑顔>


aかbかの区分は微妙だが、3回ともはっきりとした魅力的な笑顔でキメているのは明らかだ。

2015年ヴァージョンは、(確認できるかぎり)すべて、3度とも「笑顔でのキメ」だった。

そして、冒頭に書いたように、このMOAMETALの笑顔のキメ顔が、この「BABYMETAL DEATH」の”必殺のエッジ”となっているのだ。
とりわけ、ライヴのオープニングでの、このMOAMETALのキメ笑顔たるや、ライヴ全体の超絶的な楽しさへの先導として絶大なる効果を発揮している、それは疑いようがない(実際には、ライヴの現場では、「あっ、MOAMETAL、笑顔でキメたな」なんて確認する余裕はないが)。

MOAMETAL最強!を唱える所以である。
(もちろん、SU-METALも最強、YUIMETALも最強、なのだ。3人が3人とも異なる質の「最強」であることがBABYMETALというユニットの「無敵」ぶりの内実なのだ。そのうえさらに、神バンド帯同、という「最強」のミルフィーユ状態!)

いや~、こうして瞥見し、改めて、MOAMETALの「進化」ぶりの凄さを、痛感している。

例えば、①と⑮とを見比べると、これはもう、別物と言ってよい。①~③に比べて、⑬~⑮の「キメ笑顔」の”殺傷力”の凄さよ!
⑩と⑮を比べても、1年間での「キメ笑顔」の量・質の「進化」は歴然としている。

ふう。

こんな風に、MOAMETALの「キメ顔」に注目しながら「BABYMETAL DEATH」を連続で見る、という体験をしたのは初めてだが、実に実に楽しい体験であった。

これまで、ついついYUIMETALの動きに目を奪われがちだったのだが、そうして見慣れたはずの映像が、MOAMETALの表情を追うことによって、また別の輝きを放つのだ。
BABYMETALのライヴ映像の、魅力の「無尽蔵」ぶりを、改めて痛感している。

そして、⑮を確認するために、MOAMETALの顔に注目しつつ「Road of Resistance」まで観つづけていたら、(またまた)泣けてくる自分がいた。
⑬~⑮のライヴでの、とりわけ「Road of Resistance」におけるMOAMETALの「笑顔」は、また別の次元のものなのだ。
次回はそのへんの機微を中心に考察したい。

(つづく)