ケルベロスの基地

三本脚で立つ~思考の経路

BABYMETAL探究(『INTRODUCING BABYMETAL』 を視聴して)

2015-09-19 00:57:15 | babymetal
ああ、Zeppツアー、実に楽しそうで、うらやましい!

まさに、まさに、垂・涎。

京都に在住しているのだが、仕事で毎週水・木曜日には大阪に行き、よる10時くらいまで働いているのだ。だから、今回の「BABYMETAL WORLD TOUR 2015 in JAPAN」なんば公演2Daysも、眼の前にまでBABYMETALが来ているというのに、仕事のために抽選に応募することもできなかったのだ。
ぐぬぬ。
昨日、一昨日も、仕事先から「Zeppなんば」なんてすぐ鼻の先で、昨日などは、地下鉄「なんば駅」で乗り換えさえしたのだ。そのもどかしさよ!
夜、仕事しながらも、時計をちらっと見て、「ああ、もう夜7時半、いよいよはじまるころだな」と思ったりしていたのである。
深夜に帰宅してから、皆さんのライヴ参加感想などを読んで、こちらまで半ばうっとりしつつ、歯ぎしりをしているのである。

楽しかっただろうなあ。
いいなあ。

で、その鬱憤を晴らすべく、ツタヤで『INTRODUCING BABYMETAL』 を借りてきた(し、ええい、と、Dr.Martens の8eyeBootsまで買ってしまったぞ!)のである。

今回は、それについての感想を(もちろん靴の話などしませんが)。

一時、「すわ、新曲の入ったミニアルバム?」なんて話題になった企画盤だが、音盤も映像盤も全て既発売のものであり、ツタヤのレンタルのみだから、すでにファンで音盤・映像盤を所有している人間にはいわば無用のもの、なのだが、
「ひょっとして、サプライズ音源とか映像とかが、こっそり収録されているのでは?」
なんて思って、ツタヤに足を運び、借りてきたのである。

京都は(京都も)まだまだBABYMETALの認知度は低い、と思う。
一時期、視聴できるコーナーのあったタワーレコードでさえ、今や「どこに売ってるの?」という扱われ方である。JEUGIAには、2Fの角っこにまだミニ・コーナーがある(『ヘドバン』の在庫も充実している)。先日ふらっと寄った時には、西欧人らしき若い男性2人が角っこのコーナーでDVDを手に取ってニヤニヤしながら何か語りあっていた。

自宅近所のツタヤにも、CD大賞の小さなPOPが貼ってあったりしたが、ほとんどおざなりである。
それよりも例えば「ゲスの極み乙女。」の方が断然大きな扱いなのだが、まあ、それはそうだろう、と納得はしている。BABYMETALのアルバムなんて、スタジオ盤と「RED NIGHT」2枚しかないし、レンタルする層なんて、ツタヤを訪れる客のなかのごくごくごくごく一部だろうし。

ところが、今度の『INTRODUCING BABYMETAL』は、ぱっと見てすぐわかる新譜コーナーに、10枚ほど並んでいるではないか!
驚きつつ、1枚を手に取りレジへと歩きながら、ドキドキしていた。
何やら、「本気」を感じたのだ。
ツタヤの、ではなく、BABYMETAL陣営の「本気」を、である。

ビジネスの裏側の事情はわからないから、これは勝手な素人考えだが、「なるほど、国内でのBABYMETALのプロモートは、こういうカタチで行くのか」と、勝手にうなずいた、のである。

プロモーションとして、手っとり早くて効果があるのは、何といってもテレビ出演だろう。
実際に、昨年のNHKの『BABYMETAL現象』によって多くの(?)ファンを獲得したようだし、個人的には「黒歴史」という印象をぬぐえない年末のMステでも、SU-METALの歌声に打たれてファンになった人も少なからずいたようだし。
幕張で”新たな調べ”に打たれた時も、「これでお茶の間を制覇だ!」なんて興奮していたのだが、BABYMETAL陣営が目指しているのは、もっと地味で・確かな基盤づくりなのだ。

今回の、この、レンタルCDの棚に並べて誰かが手にとってくれるのをじっと待つ、というのは、テレビに出て認知度を上げるというスタイルとは真逆のものであろう。
(ZEPPツアーという、今の人気からは信じられない小箱でのツアーというのも、何か、似た匂いがする)。

昨年以上に、国内では、ファンの「数」よりもファンの「強度」の重視というか、「音楽として聴いて・観て本気で好きになってくれる人をじわじわ増やす」という戦略をとっているように感じたのだ。

さて、『INTRODUCING BABYMETAL』の中身であるが、「音盤」と「映像盤」の2枚組である。

① 音盤
ひょっとして、新録など、ひそかに混じっているのでは?と妄想もあったのだが、完全にスタジオアルバムからの抜粋である。

1.メギツネ
2.ギミチョコ!!
3.いいね!
4.ド・キ・ド・キ☆モーニング
5.ヘドバンギャー!!
6.イジメ、ダメ、ゼッタイ

通して聴いたが、さすがに、さんざん聴き倒した音源だから、特に感想はなく、むしろ、「平板さ」を感じてしまった。(後述するが、映像盤には独特の「ワクワク」を感じることができた。)

逆に言えば、上記以外の楽曲によって、1stアルバム『BABYMETAL』の魅力的な「起伏」が生まれていたのだ、ということを再確認した。

1. BABYMETAL DEATH
2. メギツネ
3. ギミチョコ!!
4. いいね!
5. 紅月-アカツキ-
6. ド・キ・ド・キ☆モーニング
7. おねだり大作戦
8. 4の歌
9. ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
10. Catch me if you can
11.悪夢の輪舞曲

12.ヘドバンギャー! !
13.イジメ、ダメ、ゼッタイ

個人的には、なんと言っても、「紅月」だ。
そして、BLACK BABYMETALの2曲。
いや、何はさておき、オープニングの「BABYMETAL DEATH」。
なんじゃこりゃ、の体現である「CMIYC」。

って、挙げていけばきりがない。

あらためて、アルバム『BABYMETAL』に収められた”調べ”群の、”必要にして十分”の凄みを感じたのである。
もちろん、この『INTRODUCING BABYMETAL』 の音盤に収録された6曲は(インディーズ時代も含めて)シングルにもなったようないわばBABYMETALの「顔」「名刺」がずらりと並んでいるのであり、BABYMETALの<INTRODUCING>として、ふさわしい楽曲群であることは言うまでもない(これら6曲を外しては『INTRODUCING BABYMETAL』にならない)。
しかし、これらを中心としながらも、極北(BMDやCMIYC)も極南(4の歌、おねだり)も、そしてど真ん中(アカツキ)も、渾然となっているのがアルバム『BABYMETAL』の濃厚さであり衝撃力であったのだ。

結論としては、この『INTRODUCING BABYMETAL』 においての、①音盤は、いわば「アリバイ」である、というのが僕の個人的な感想である。

つまり、ツタヤでレンタル商品として置き、何かのきっかけで未来のファンに手に取ってもらうためには、<音楽CD>である必要があり、そのための「資格」を得るためのものとしてこのラインナップが選ばれたのだ、と。

そして、そのこととは直接関係ないことだが、『INTRODUCING BABYMETAL』のパッケージの素っ気なさというかストイックさというか、それはいつものとおりである。
BABYMETALのロゴと、アルバム名と、収録曲名と、あとは、例の「BABYMETAL are SU-METAL(Vocal,Dance)…」があるだけ。
写真もないし、歌詞カードも入っていない。
見た人を惹きつける、神々しい写真、カッコいい写真、はいくらでもあるはずだが、全くそれらを封印したパッケージだ。そこに、上に述べた「本気」を感じるのである。
テレビに出ない、ということと、超絶的に魅力的なビジュアルを封印して棚に並んでいる、ということとは、同じ線上にある。

歯に衣着せぬ言い方をするなら、「バカは寄ってくるな」ということだろう。(僕ももう完全にバカの中のバカだ。靴まで3姫と揃えたくなってたまらなくなり、しかも、同じモデルでもないのに買ってしまうのだから。…まあ、それはそれとして)。上っ面だけで吸い寄せられる浅いファンはいらない、ということか。

名前だけは聞いたことがあるような気がするし、ちょっと借りてみようかな、よくわからないけれど、という人間(例えば、音楽好きの男子高校生)とかが、音盤を聴いたりダビングしたりした後で、「せっかく付いているし、返す前にDVDも観ておこうか」なんて観はじめた時、電撃的ショックを受ける。

そんな「蟻地獄」的な仕掛けを、この『INTRODUCING BABYMETAL』は蔵しているように思われる。

だから、『INTRODUCING BABYMETAL』の本領は、②映像盤のDVDにこそあるのだ。

「赤い夜」から
1.メギツネ
2.紅月
「黒い夜」から
3.4の歌
4.ヘドバンギャー!!
「Forum」から
5.BABYMETAL DEATH
6.ド・キ・ド・キ☆モーニング
「Brixton」から
7.ギミチョコ!!
8.イジメ、ダメ、ゼッタイ

これは…、堕ちる。

いまのオッサンの僕はもちろんだが、そうではなく、30年以上前の若かりし日の、例えば男子高校生だった僕でもこの映像は「何だこれ!BABYMETALって、かっこいいやん!なんでBURRN!に載ってないんだろう?」なんて思わせる、とてつもない即効性がある。

武道館とロンドンの映像盤から、各2曲ずつ、計8曲のラインナップである。
時系列、つまり、<赤い夜→黒い夜→FORUM→BRIXTON>を守りつつ、各2曲ずつで、BABYMETALの魅力を”正しく”初心者に伝える
さて、どんな抜粋の仕方がよいのか?
試しに皆さん考えてみてはいかがだろうか?
僕も、いろいろと考えてみた。
そうすると、このラインナップ・順番が、かなり「必然」「絶対」であるように思えるのである。

1曲目は、「BABYMETAL DEATH」か「メギツネ」かであろう。
Zeppなんばでは2日間とも「いいね!」スタートというサプライズ(ナマで体験できた方は、”一生の自慢”ですよ、これ!…いいなあ!)だったが、 『INTRODUCING BABYMETAL』としては、このどちらかでしかありえない。

そして、「赤い夜」の実際のオープニングが「メギツネ」だったこと、そして、「BABYMETAL DEATH」の5での衝撃力(後述)から考えて、ここは「メギツネ」が正解である。
「き~つ~ね~、き~つ~ね~」のSU-METALの声のリフレインに乗って浮かび上がってくる巨大魔法陣セットの、幻想的な世界観。
赤を基調としたライティングの中、「BABYMETAL」フード付マントタオルを羽織って浮かびあがる3姫。
ぐるりを取り囲んだ武道館の観客のペンライト等の揺れも、「登場」にふさわしい幻想的雰囲気を増している。
そして、マントを脱ぎ捨てた3姫の可愛さ・美しさ。踊りのキレのよさ、激しさ。
メタルヘッズ高校生であった僕が見ても、鳥肌を立てて「すげえ!」、というであろう演奏と映像が続く。

そして、2曲目が、「紅月」!。
借りてきて、曲目とか観ないようにして(初めて遭遇する人の気持ちにできるだけ近づこうと思って)、「メギツネ」が終って、さあ、次は何かな…と待っていたときに、”あの”ピアノのイントロが流れてきて、「おう!」とゾクゾクした。
実際の単独ライヴでは、2曲目に「紅月」はありえない。YUI・MOAの休憩タイムでもある、というこの曲の「裏の機能」が発揮できないからだ。
しかし、日本人ならば(とりわけメロ・スピ好きならば)好きにならないわけのないこの曲を、ここで出すのは、(音盤には収録されていないからこそ、いっそう)アリ、だ。
3曲目の「4の歌」とのバランスを考えると、2曲目に「紅月」が来る必然性がいっそう首肯できる。

「4の歌」。
この曲単体の評価ならば、僕は、「赤い夜」バージョンの方を好む。端的に言えば、「黒い夜」のシスター・ボーンが邪魔なのだ(ごめんなさい!)。アイドルの後ろで、プロのダンサーが何人も踊る、というのは、よく目にする絵である。この”調べ”の、とんでもない「可愛さ=凶悪さ」(この曲こそ、世界中で空前絶後・唯一無二、まさに、オンリー・ワンだろう)は、「赤い夜」のYUI・MOAふたりによる初公開映像こそが、本領だと思うからである。

しかし、では、2.「4の歌」(「赤い夜」より)→3.「紅月」(「黒い夜」より)ではどうか?と言えば、これは明らかに順序がおかしい。
「メギツネ」の後に「紅月」のホンモノ感があるからこそ、次の「4の歌」が正しく機能するのであって、「メギツネ」→「4の歌」ではキワモノすぎる。

だから、『INTRODUCING BABYMETAL』の通り、2.紅月(「紅い夜」)→3.4の歌(「黒い夜」)で正解なのである。
なお、ロンドン2公演での「4の歌」は、YUI・MOAの「煽り」(それに必死に応えるおっさんメタルヘッズたちのよん!よん!)がないために、衝撃度は「赤い夜」「黒い夜」にぐっと劣ると思う。

そして、4.ヘドバンギャー!!。
まさか「赤い夜」バージョンを使うわけはないのだが、あの「ヘドバン・ヘドバン」や「バンバン・バ・バーン」や、YUI・MOAのジャンプは映像として是非観てもらわなければならない。
さらに、この「黒い夜」バージョンには、YUI・MOAの「煽り」がある。
Scream とは、単に合いの手だけではなく、このバージョンでの「もっと!」「聞こえないよ~!」「もっと、出せるでしょ~!」の叫びも含めてだろう。

「4の歌」と連続しての、「ヘドバンギャー!!」でのYUI・MOAの煽り!!その濃さを堪能させる2連チャンだ。

ようこそ、みなさん。そうなんです。この濃厚さがBABYMETALのライヴ、なんDEATH!

おまけに、このバージョンの最後には、せりあがってきた「あの銅鑼を鳴らすのはあなた」のパフォーマンスまである。
何と濃いことよ!
大団円、というべき、「演」奏をたっぷり味わい、前半終了である。

ここまで4曲で、23分余り。

そして、凄いのは、何といっても次の5.「BABYMETAL DEATH」だ

1~4の、(後半と比べると)武道館でのライヴの、美しさ・上品さが感じられるパフォーマンスに対し、よりヘヴィメタルの凶悪度が剥き出しに突き刺さる轟音・爆音の楽曲!
しかも、観客のロンドンっ子(だけでもないけど、印象としてはそうだ)の熱狂!

実際のライヴでも、アンコールの幕開けにも何度か使われた”調べ”だから、「BABYMETAL DEATH」がここに来るのは違和感がないどころか、いよいよ、二段目のロケット・エンジンが噴射されたかのような推進力を感じる。

高校生メタルヘッズだった僕ならば、「4の歌」「ヘドバンギャー!!」で頭に浮かんだ(でも、名曲「紅月」への信頼でまだ観つづけている)「???」が、この「BABYMETAL DEATH」」で完全に払拭されるはずだ。

そのうえで、6.ド・キ・ド・キ☆モーニング、7.ギミチョコ!!である。

もしも、音盤を先に聴いていたら、その印象は(いい意味で)刷新されるはずだ。
ラウド系の音色で仕上げられたウェルメイドのアイドル楽曲、にはとてもおさまらない、ライヴのグルーヴ感にあふれた、「生バンド」の演奏のカッコよさ!
ここには、確かに「メタル魂」があるじゃないか。

ギミチョコ → ドキモ → イジメ
ドキモ → ギミチョコ → イジメ

微妙な差だが、下の方が、より納得性が高いと思うのだが、どうだろうか?
7.ギミチョコには「カモ~ン、ロンドン!」「アイ、キャーント、ヒア、ユー」「ラウダー、ラウダー」の英語煽りもあるし。「イジメ」につながるラス前にふさわしい。

最後は、もちろん、8.イジメ、ダメ、ゼッタイである。
Brixtonバージョンが最高だとは思わないが、最後がこの曲でもちろん何の文句もない。
SU-METALの英語での紙芝居も紹介され、次々と観客がサーフされ、掃きだされる熱狂が映る。

ああ、このライヴに行きたい!!!

高校生メタルヘッズだった僕でもそう思うだろう。
そんな熱い映像である。

ここまで、8曲で、計45分。
音盤が6曲で計26分なのに比べて、圧倒的な熱量・濃さの差がある。

そして、興味を惹かれて、さらに映像盤を探って観れば、神バンドの壮絶なパフォーマンスをはじめ、「まだまだこんなものじゃない」ということが痛感されるはずである。

まさに、『INTRODUCING BABYMETAL』にふさわしい、内容だと思う。

新作なので、最長で2泊3日。明日には返さなくてはならない。
ひとりでも多くの音楽ファンが、この映像盤に遭遇し、しあわせになってほしいと思う。あくまでもこれは新規のファンのためのものなのだから。


そして、

くっそー。絶対に横浜アリーナ当ててやるぞ!Dr.Martens履いて、黒ミサⅡのTシャツ着て、参戦するのだ