2017年7月26日
声明
相模原事件から1年
共に生きる地域社会の実現をめざして
NPO法人日本障害者協議会(JD)
代表 藤井 克徳
7月26日、あの日から1年が経ちます。19人のかけがえのないいのちを奪い、さらに多くの人たちの心身を傷つけ続けている相模原の津久井やまゆり園での殺傷事件は、私たちにさまざまな問題・課題を突き付けました。この事件を引き起こした背景にある優生思想、障害の重い人たちの暮らしの場のあり方、事件の際の匿名報道……いずれも容易に答えが出ることではありません。だからこそ、この事件を風化させることなく、問い続けていかなくてはならないのです。
日本障害者協議会(JD)は、日本国憲法施行70年の節目にあたって、7月14日、参議院議員会館で「障害者に生きる価値はないのか!-真に共に生きる地域社会の実現をめざして-」と題する集会を開き、約400名がつどいました。
盲ろうの障害のある福島智さん(東京大学先端科学研究センター教授)は「『生産に役立たない、障害の重い人はいないほうがいい』という優生思想は、全ての人の否定につながる。47億年前に人間が生まれてきたこと自体が奇跡であり、生産能力があるとかないとかで人の価値に違いはない。すべての人間に存在意義があり価値がある」と講演し、障害をもっていても「生きていてよかった」と思える社会をめざすべきだと強調しました。
集会の前日には、埼玉県上尾市で障害者施設の送迎車に19歳の青年が6時間も放置され、熱中症でいのちを落としました。佐賀県で、作業所からの帰り道に不審者であると誤認され、複数の警察官による抑え込みで亡くなった安永健太さん(2016年、最高裁が上告を棄却)、駅のホームから転落して亡くなった視覚障害のある人たち、いずれも障害ゆえにいのちを落としました。障害ゆえに少なくないいのちが失われている現実をどのように変えていくのか。社会全体の大きな課題です。
ところが、相模原事件の再発防止のために「精神保健福祉法を改正し、措置入院患者に対しても支援を継続する仕組みを設けるなど、再発防止策をしっかりと講じる」と安倍総理大臣は第193回国会施政方針で述べ、それに応える形で精神保健福祉法改正が進んでいます。これは、精神障害のある人への差別偏見を助長することになり、看過できません。
日本国憲法第13条は「すべて国民は、個人として尊重される」とし、幸福追求権を明記しています。さらに、障害者権利条約第17条には「全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する」と謳っています。すべての人に生きる権利があり、幸福を求める権利があり、だれもそれを犯すことはできないのです。
今年は日本国憲法施行70年です。私たちは相模原事件が突きつけた問題、課題と向き合い、考えていきます。一人ひとりのいのちが大切にされる共生社会の実現に向けて、多くの仲間とつながりながら、歩み続けます。