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学問修行2017年7月13日:ヒアリの日本への侵入問題

2017年07月14日 00時11分44秒 | 学問修行
2017年7月14日-1
学問修行2017年7月13日:ヒアリの日本への侵入問題


 つい最近、日本のあちこちの港で、また内陸部からも、ヒアリ _Solenopsis invicta_の働き蟻が見つかったという知らせが報道されている。

 2017年7月13日には、中国から輸送されたコンテナ内でだが、卵と幼虫とさなぎが見つかり、繁殖していたということになる。巣は一つとのこと。

 「強い毒を持つヒアリが見つかっていた東京・大井ふ頭のコンテナで、ヒアリが巣を作り、繁殖していたことが分かった。
〔略〕
その後、環境省が床のベニヤ板をはがして調べたところ、新たに卵や幼虫、さなぎを含むヒアリ約100匹が見つかったという。ベニヤ板の中で、ヒアリが巣を作り繁殖していたことになる。

 巣は1つで環境省はコンテナが中国から輸送される間に繁殖したとみている。」
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20170713-00000056-nnn-soci


 しかし、繁殖している巣もある可能性はある。
 NHKのローカルニュースで(ホント?)専門家(誰?)が、在来の蟻がヒアリをやっけてくれる、と発言した(出所は、毎日放送の2017年7月7日(金)のニュースの14:17からのものかもしれない。=====より下に示した。)ということが、間網 internet で広まっているらしい。また、それはデマだということも、広まりつつあるかもしれない。

 検索すると、ホウドウキョクという家頁に掲載の下記の記事が出てきた。

 「ヒアリ」の疑問を専門家が答える…覚えておきたい合言葉は“ひありおくやみ”
https://www.houdoukyoku.jp/posts/14941


  「在来アリがヒアリを撃退するかもしれない

〔辻和希 琉球大学農学部教授〕
ヒアリはもうとっくに日本に侵入していると言う人も多いんですけど、アリは社会性昆虫で働き蟻だけが入ってきても繁殖しないので定着して増えることはないんです。今まで見つかってるのはほとんど働き蟻で、女王蟻は1個体だけ見つかっています。女王蟻が働き蟻を伴ってコンテナから引っ越していくということがあれば問題ですね。」
https://www.houdoukyoku.jp/posts/14941[受信:2017年7月13日。]

 「女王蟻が働き蟻を伴ってコンテナから引っ越していくということがあれば問題です」は、その通りだと思う。
 (ヒアリは侵入先で近縁種どうしが交雑したりして、より強い性質を持つようになったりしているそうだ()。しかし、働き蟻が働き蟻を産むというほどにまで、変化または進化することはないだろう。)


  「〔辻和希 琉球大学農学部教授〕
インターネットでは在来種のアリが撃退するんじゃないかという意見が出ているそうですが、その通り ある程度はヒアリの侵入を抑える可能性があります。ヒアリは巣を作るとすごく強いんですが、最初に巣を作る「羽アリ」という羽が生えて飛んできた女王アリは弱いんですよね。その状態では、在来のアリがいると撃退される可能性があります。
注意していただきたいのは、ヒアリだか分かんないけど怖いからアリをとにかく殺せって殺虫剤を撒いたりするのは、おそらく逆効果です。それをやってしまうと、戦ってくれる在来のアリがいなくなって、ヒアリが定着しちゃう可能性があります。」
https://www.houdoukyoku.jp/posts/14941[受信:2017年7月13日。]

 上記の発言は、誤解を招きかねない。記者がそのような文章にしたかもしれない。少なくとも「在来アリがヒアリを撃退するかもしれない」という見出しは、インターネットでの、
   在来種のアリが撃退するんじゃないか
という意見を支持しているように受け取れる。辻和希氏の発言とされる内容は、
   「在来アリがヒアリを撃退するかもしれない」
という見出しになってもおかしくない。

 問題は、

  「最初に巣を作る「羽アリ」という羽が生えて飛んできた女王アリは弱いんですよね。その状態では、在来のアリがいると撃退される可能性があります。」

という主張または推論である。
 親の巣から飛び立った、翅を持った女王蟻も息子雄蟻も、在来種の働き蟻に殺されるかもしれない。鳥や蜘蛛に捕食されるかもしれない。しかし、多数が飛び立てば、逃れて巣を作る女王蟻もいるだろう。たとえば、南米と地続きの北米にしろ、海を越えた中国にしろ、台湾にしろ、ヒアリは侵入し、分布を拡大したのである。
 
 “在来種のアリはヒアリの定着を防ぐ”ネット上にウワサ広がる → アリの研究者は「在来種では勝負にならない」
ヒアリ強すぎ……。
https://www.houdoukyoku.jp/posts/14941[受信:2017年7月13日。]


村上貴弘.2015/9/20.アリのグローバル戦略 —その野望と成功.坂本洋典ら(編著)2015『アリの社会 小さな虫の大きな知恵』: 26-44.

の「ヒアリ防除作戦」という見出しの文章から引用する。
 ただし見やすくするため、原文での「,」は「、」に、「.」は「。」に変更した。


 「ヒアリ防除作戦

 もっとも効果的な防除はヒアリを入れないことである。
 ヒアリは人間の活動とともに生息域を拡大し、侵入地でさらにさまざまな機能を強化して、厄介な存在へと変化し続けている。〔略〕
ミトコンドリアDNAとマイクロサテライト解析から〔略〕全世界に広がったヒアリの起源はアルゼンチンのラプラタ川上流域であることがほぼ確実になった。そこから、二度アメリカに侵入したのち、国内で移動し、分散を繰り返し、オーストラリア、ニュージーランド、中国、台湾へとさらに広がっていった。つまり、原産地からの浸入はわずか2回しかなかったのに、侵入地からの再浸入は頻繁に起こっているのだ。〔略〕
ヒアリの日本への浸入は時間の問題だといわれている。
〔略〕
特定外来生物となった代表的なもの〔略〕と比較するとヒアリの攻撃性や毒性は高い。セアカゴケグモの特性が確認されているが、最近50年で死亡例は一見も報告されていない。ヒアリの浸入は〔略〕人命に関わる点で他の外来生物とは異なる〔。〕〔原文で「.」が抜け。〕」
(村上貴弘 2015/9、42頁)。

 「台湾では、防除のためにヒアリ探査犬が導入されるなど、ユニークな取り組みもある。」
(村上貴弘 2015/9、42-43頁)。
 2日前のテレビで、ヒアリ探査犬の紹介があった。

 「ヒアリに対して、十分な警戒をしていく必要がある。いや、その前に想像してほしい。赤く艶やかなアリたちが今も密やかに、暗く湿った貨物室で、きたるべきときをまっていることを。」
(村上貴弘 2015/9、43頁)。


  「陸揚げコンテナは年間865万個…殺人毒アリ“拡散”の恐怖
  2017年6月21日
〔略〕
海外から荷揚げされるコンテナの量は膨大で、すべてのコンテナを開けて外来種の混入をチェックするのは物理的に厳しい。今回は家電製品を積んだコンテナに付着していましたが、木材港から入り込む可能性も否定できません」(近畿地方環境事務所野生生物課)」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/207776/2[受信:2017年7月14日。]

  「 国内で陸揚げされた海外発のコンテナ数は15年が約865万個(20フィート換算)。すべてを点検するとなると、途方もないコスト、マンパワーが必要になる。現実的には無理だ。熱帯原産で神経毒を持つ「ハイイロゴケグモ」や、中国南部や東南アジア原産の「ツマアカスズメバチ」が見つかった時にも騒ぎになったが、結局駆除しきれず、いまや生息範囲を広げ」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/207776/3[受信:2017年7月14日。]

 定着を防ぎたい。台湾は周囲が海だが、かなり広がっている。対策費はどれくらいかかっているのだろうか。
 日本は今、最大の努力をするべきだろう。
 しかしまた、中国などからの輸入を停止する措置も必要だろう。
 鎖国がもっとも良いだろう。
 食糧の国内生産が肝要である。

 なお、『ヒアリの生物学』という本が、2008年に出版されている。


◇ 文献 ◇

東正剛・緒方一夫・S.D.ポーター (東典子 訳).2008/4.ヒアリの生物学 行動生態と分子基盤.海游舎.

坂本洋典・東正剛・村上貴弘(編著).2015/9/20.アリの社会 小さな虫の大きな知恵.viii+273pp.東海大学出版会.[本体3200円+税][R20151219]


村上貴弘.2015/9/20.アリのグローバル戦略 —その野望と成功.坂本洋典ら(編著)2015『アリの社会 小さな虫の大きな知恵』: 26-44.




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 2017年7月7日(金) 13:55~17:50
 放送局 毎日放送
 番組概要
 ニュース 14:17~
  「アリは縄張りを守る習性が強いので、日本のアリのテリトリーにヒアリが入ってきた場合、ヒアリは日本のアリに攻撃されて死滅する確率が高いという。橋本さんは「アリのライバルはアリです。人間がアリと消耗戦をやると人間が負けます」と発言した。

兵庫県立「人と自然の博物館」の研究員・橋本佳明さんに中継がつながっている。橋本さんは各地でヒアリが発見されている現状について、「現在中国との貿易によって、主要な港でヒアリが大発生していることは当然のことだと思います。人が刺されたという情報もまだありませんので、皆さんが刺されるほど繁殖はしていないと思います。」と話した。ヒアリがコンテナヤードから生息しやすい場所に移動していくのでは?という質問に対して橋本さんは、「コンテナヤードの中はエサも巣を作る土もないので、緑地などに移動することは起こりうると思います。」と答えた。ヒアリの定着・繁殖する可能性について橋本さんは、「定着・繁殖の能力はありますが、実際は難しいとおもいます。侵入したヒアリが少なければもともと日本にいるアリがヒアリをやっつけてくれると思います。今のところは安心して良いと思います。」と話した。」
https://tvtopic.goo.ne.jp/kansai/program/mbs/112/615001/[受信:2017年7月14日。]


 ヒアリの天敵のデマ。日本在来種アリの嘘が広まった理由や出所は?
 2017年7月11日
http://turezure01.com/post-766393-766393


 沖縄タイムス+プラス ニュース
 ヒアリ、那覇新港では確認されず 環境省が緊急調査
  「 調査は同事務所職員や一般財団法人「自然環境研究センター」(東京都)の研究員ら計約10人が行った。台湾や中国、南沙諸島などからの貨物コンテナが置かれている港内を歩き、ヒアリが生息していないか見て回った。

 調査した同センターの石塚新・上席研究員によると、ヒアリはコンテナと地面の隙間や、雑草が生えた場所に集団で生息していることが多く、重点的に調べていた。石塚さんは「温暖な気候の沖縄はヒアリが繁殖しやすい。赤茶色のアリを見つけたら触らず、すぐに関係機関に通報してほしい」と話した。

 県内では他に、県と沖縄科学技術大学院大学が調査や水際対策に乗り出しているが、これまで生息は確認されていない。」
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/108600[受信:2017年7月13日。]