年度替りの慌ただしさも幾分落ち着いてきて、ほぼ一年振りの三養荘(前回はこちら)。
以前、知り合いがこの三養荘の近くを通りかかった時に、門から中を少し覗いていたらマネージャーらしき人に声を掛けられて庭を案内してもらったそうです。
それで、その知り合いから「結構良さそうだよ」と勧められていました。
名前は知っていたけど、和風なのにプリンスホテル系だということで、どうなんだろう、とその時はぼんやり思っていました。
で、去年泊まってみたら、どの部屋も平屋の戸建て風でみたいで、普通の「旅館」とは違う広々とした造りになっていて、ずいぶんと落ち着いて過せました。
岩崎家の別邸だったそうですから、新館はともかくはじめから旅館として造られた建物ではないので、建築の費用を掛ける所も旅館とは違うだろうし、そのあたりの趣が違うので、この味がでているのかも。
ここも自分には贅沢な宿だけど、ただプリンスホテル系という事が、いくらか敷居を低くしてくれている感じはした。
今回は「離れ」に案内されたので、ちょっとびっくり。
案内してくれた中居さんは、偶然にも前回と同じ若い女性の方。
いままでに旅行して記憶の残っている中居さんで特に良かった人が二人いるのだけれど、そのうちの一人です。控えめな笑顔と押しつけがましくない気遣いで、必要な時に声を掛けてもらえ、何か尋ねれば適切な答えが返ってくるし、プロの雰囲気を醸し出すことなくプロとしての仕事をきっちりこなしているという風な。
もちろん彼女自身の生活もスタイルもあるはずですが、独身か既婚者かもわからない、個人の生活感を想像させず、三養荘に住んでいるんじゃないかと思わせるほど溶け込んでいて、その滞在をフォローしてくれるという様な感じで、とても安心できます。もう一人は、萬翠楼福住の中居さんでした。
ここは新館でも充分なんだけど、三養荘の庭園のなかにある「離れ」は完全に独立した建物という印象。
とても静かで、聞こえるのは鳥の声と、風が木戸をカタカタと軽く鳴らす音くらい。
庭園の入口から入っていくと中央の池を取り囲むように、本館と離れがゆったりした間をとりながら数棟配置されています。
その一角には滝やら東屋もありました。
そしてここが今回の部屋。
ツツジに目をやりながら玄関へ。
なにやら懐かしさのある玄関の鍵ですが、なんていう名前か調べたら、「中折捻締り錠」(そのまんまですね)と言うそうです。昔はどの家もこんな鍵だった気がする。
部屋も続きの二間、その周囲の広縁の畳を数えたら20枚もありました。
天気は良く独り占めできる庭の景色を堪能。
和風の宿は好きです。最近は「和モダン」と言われるような造りの宿は多いですが、これだけ広くて純粋な和風旅館はあまり見かけない。本格的な和風にするにはコストがかかりすぎて難しいのかもしれないですね。
そして内風呂は大きめで、目隠しの木々の緑が湯船に映えていました。
離れに泊まることになったので、大浴場は遠くなったと思いきや、近道があって専用の入口もありました。
内風呂の周囲が露天風呂になっていて、落ち着いた湯船です。源泉かけ流し。
露天風呂に浸かりながら、気持ちの良い風に乗って聞こえてくる遠近の鳥の声を聞いていると、何故か遠い昔の子供の頃の感覚が心地よく蘇ってきて気持ちがよかった。
しばらくすると年配の二人組が入ってきて、「今年は二回目」だとか「都合7回目だ」とか話していましたが、ここが気に入っていると言うことだとおもいます。お金持ちなんでしょうね。
内風呂には飲泉用の蛇口が付いています。とくに癖のない飲みやすい温泉です。
ただこの洗い場に、なんで鏡がないのと思う人もいるかもしれない。
でも、自分は要らないと思います。
本物の温泉場の湯船には鏡が無いところが多いように、「合わない」と思うんですよ。
そういうことかどうなのか知りませんけど、プリンスホテル系だから案外「髭剃りは洗面所で」と言うことなのかもしれませんね。自分はこれで構いません。
食事については前回はちょっとぼんやりした味で、その直前に山翠楼に行っていたので、比べると少し落ちるかな、と思ったのですが、今回は味も食材もしっかりで、料理人さんが変わった?と尋ねたところ同じとのこと。ん~、自分がおかしいのかな・・。
部屋で庭を眺めていると、ん?
テントウムシ。
サンバ・・は?
途中「江川邸」に寄ってきました。
この玄関、時代物のロケでよく使われるらしいですよ。
鳥のフンが運んだ縁で、三種類の木が絡み合った宿り木。