夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「その柿色の丸い実よ」

2017-08-20 16:36:47 | 自作の小説
花びらが舞っている
赤紫色 散るには早いが百日紅だろうか あの色は

静かに散る印象があったのだが

花びらが舞うほどに風も吹いてはいないのに
これは どうしたことだろう

どうやらあの樹は庭の百日紅のようだ

おやオレンジ色の花びらもある
あちらは柘榴ではないか

百日紅に柘榴に混じり合う

そして樹には・・・割れた柘榴の実が揺れている
季節が合わない

これは 一体何なのだ
どうしたと言うのだ


ーだって これは夢ですからー

誰の声だ

夢だと宣言する夢などあるものなのか

ー夢は自由ですからー


しかし誰の自由なのだ
見る者には見せられる夢を見るばかり

カサコソ カサコソ

足元で音がする
葉を踏んだかと見れば それは葉ではない
地面には幾百か幾千かの手 手首から先が這って近づいてきている
求めるように指を上げてはおろし進んでくる

散った花びらは地に落ちて手と化す

ーさあ お仲間におなりなさいー

いっそ夢に埋もれてーと勧めるのか

この夢は覚めるものなのか

手達が近付いてくる
逃げることなく その手達を見ている


手達はやがてつま先に届こう 足首へと這い上ってくるだろう
そう思いながら ただ見ている

目の前はひどく暗いのに いつの間にか闇色に変化しているのに 手達は見える
それらの動きははっきり見える

いよいよ迫った手達は一斉に笑ったように見えた

ーああッー

夢の中の声が悲鳴をあげる

柿色の丸いモノが落ちてきた
光輝くそれが手達を焼く



目が覚めると周囲が微妙に明るい
夜が明けかかっているのだ

そうして思いだした
柿色の丸いモノ
あれは鬼灯だ

もしもお盆に還ってきてくれた誰かが使ってくれたらと鬼灯の実をカゴに盛り玄関に置いておいた
鬼灯は何かの魔を払ってくれたのだろうか

亡くなった祖母は住んでいた家の玄関の前庭に鬼灯を植えていた
夏休み 遊びにいくと鬼灯の実をくれた
もんで遊んだものだ
鬼灯を笛にして鳴らすことは 遂にできないままに終わったが

鬼灯とお盆とが 結びついて見せた夢だったのだろうか

片付け難く鬼灯を入れたカゴは まだ玄関に置いてある


だってねえ うっかり者や暢気なご先祖の誰かが遅れてやってきて使うかもしれませんもの
中には方向音痴で迷子になっている誰かがいるかもしれませんし

鬼灯 もう少し置いたままにしておきましょう





深夜の駅

2017-08-20 01:43:02 | 子供のこと身辺雑記




帰宅が遅くなった長男から午前零時前に電話が入った
「姫路駅に午前一時過ぎに着く
どうしよう?タクシーで帰ろうか」

深夜は道路も空いている 姫路駅までは半時間もかからない
迎えに行くことにした

駅の南出口近くに車を停めて見ていると午前1時頃になると駅員さんが大きく開いている通路のガラス扉を施錠していく
一か所だけを残して

様子を眺めていたら通路を歩いてきた幾人かは閉めてある扉が開かないか押して試したあとで
諦めて開けてあるドアに向かう

駅も施錠するんだって こういう遅い時間に駅に来ることは殆どないから珍しく思って眺めてました

駅から出て来る人は迎えの車を連れ立って待つ人
タクシーに乗り込んでいく人
歩いて帰っていく人


そうして長男が出て来るまで暇な私は この中の幾人かに生きてないモノが混じっているかもなどと妄想逞しくしておりました
夏は怪談の季節

そうしたアヤシイ話をこの夏はまだ書いていなかったなーなどとも思いつつ